任務懈怠責任を一部免除する株主総会の議事録。会社法第425条の最低責任限度額の算定方法と第309条第2項第8号の特別決議、監査役全員の同意の要否を解説します。
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株主総会議事録(取締役の責任の一部免除の件)
第1部: 書式本文
株主総会議事録
- 会社の商号: 【株式会社何某】
- 開催日時: 【西暦年】年【月】月【日】日 午前・午後【時】時【分】分
- 開催場所: 【本店所在地または会議室名】
- 出席株主数及び議決権数: 株主総数【 】名、発行済株式に係る議決権総数【 】個のうち、出席株主数【 】名、その議決権数【 】個
- 出席取締役: 【氏名】(代表取締役)、【氏名】、【氏名】
- 出席監査役: 【氏名】、【氏名】(監査役全員)
- 議長: 定款の定めに基づき代表取締役【氏名】が議長に就任した
- 議事録作成者: 【氏名】
上記のとおり出席があったので、法令及び定款に定める定足数を充足していることを確認し、議長は開会を宣言した。
第1号議案 取締役【氏名】の任務懈怠責任の一部免除の件
議長は、取締役【氏名】(以下「対象取締役」という)が【任務懈怠の内容・発生日・会社に生じた損害の内容】に関し、会社に対して会社法第423条第1項に基づく損害賠償責任を負っていること、対象取締役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がなかったこと、及び責任を免除する必要性・相当性があることを説明し、審議に付した。
議長は、あわせて、本議案を株主総会に提出するに先立ち、監査役【全員の氏名】から会社法第425条第3項第1号に基づく同意を【年月日】付で取得していること、当該同意書の写しを本議事録に別紙として添付していることを報告した。
決議事項: 1. 免除対象となる損害賠償責任の額: 金【 】円 2. 会社法第425条第1項に基づき算定した最低責任限度額: 金【 】円(算定根拠は別紙【 】記載のとおり) 3. 株主総会決議により免除する額: 金【 】円(上記1の額から2の額を控除した額の全部または一部) 4. 免除の効力発生日: 【年月日】 5. 免除の理由及び責任の原因となった事実の概要: 【 】
出席株主は、本議案が会社法第309条第2項第8号に定める特別決議事項に該当することを確認のうえ慎重に審議した結果、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成をもって、原案どおり可決承認した。
議長は、以上をもって本日の議事を終了した旨を述べ、閉会を宣言した。
上記の議事の経過の要領及びその結果を明確にするため、本議事録を作成し、議長及び出席取締役がこれに記名押印する。
【作成日】
【株式会社何某】 議長・代表取締役 【氏名】 印 取締役 【氏名】 印 取締役 【氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 特別決議として付議する場合
修正条文例:
議長は、本議案が会社法第309条第2項第8号に定める特別決議事項に該当する旨を説明し、定足数として議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席していること、及び出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要であることを確認した。
一言解説: 特別決議は普通決議より定足数・賛成要件が加重される。招集通知にも特別決議事項である旨と、議案の要領(免除対象の任務懈怠の内容・免除額の算定根拠)を具体的に記載しておく必要がある。
B. 監査役設置会社の場合
修正条文例:
議長は、本議案の株主総会付議に先立ち、監査役【氏名】、【氏名】の全員から、会社法第425条第3項第1号に基づく同意を【年月日】付で取得した旨を報告し、当該同意書(甲号証)を本議事録に添付するものとした。
一言解説: 監査役設置会社では監査役全員の同意が議案提出の前提条件となる。監査等委員会設置会社では監査等委員全員(同項第2号)、指名委員会等設置会社では監査委員全員(同項第3号)の同意に読み替える必要があり、機関設計により条文の宛先が異なる点に注意する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、取締役が会社法第423条第1項の任務懈怠責任を負う場合において、当該取締役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときに、株主総会の特別決議によって、その責任の一部を免除する場面で使用する。取締役の故意または重過失による任務懈怠が明らかな事案には使用すべきではない。
根拠法令は、会社法第425条第1項(株主総会の特別決議による責任の一部免除)、同条第3項(監査役設置会社では監査役全員、監査等委員会設置会社では監査等委員全員、指名委員会等設置会社では監査委員全員の同意が必要)、会社法第309条第2項第8号(特別決議事項)である。なお、あらかじめ定款に取締役会決議による免除の定めを置く会社法第426条の制度は、定款規定を要する点で本書式(株主総会特別決議による個別免除)とは異なる手続であり、両者を混同しないよう留意する。
実務上よくある失敗として、第一に、最低責任限度額の算定を誤るケースがある。会社法第425条第1項は、代表取締役につき報酬等の年額の6年分、業務執行取締役につき4年分、それ以外の取締役につき2年分を基準額とし、これに新株予約権を行使して得た利益の額等を加算して最低責任限度額を算定する仕組みを定めている。この算定式を誤って免除額を過大に設定すると、免除の効力自体が否定される可能性があるため、議事録上に算定根拠を別紙で明示し、算定過程を検証可能な形で残すことが対策となる。
第二に、監査役全員の同意を取得したことの証跡を議事録に添付しないまま総会を招集してしまうケースがある。会社法第425条第3項の同意は株主総会に議案を提出する前提要件であり、招集通知には議案の概要とともに免除に関する事項を記載する必要がある。同意書の原本または写しを議事録に添付し、取得日を明記することで手続の適法性を担保することが望ましい。
第三に、対象となる任務懈怠の内容及び免除額を招集通知に具体的に記載しない開示不備がある。株主総会参考書類には、責任の原因となった事実及び賠償の責任を負う額、免除しうる額の限度等を記載することが求められており、記載が抽象的にとどまると開示不備を理由とする決議取消事由(会社法第831条第1項第1号)を招くおそれがある。
以上のとおり、算定・同意・開示のいずれの場面でも判断を誤ると決議の効力に影響しうるため、個別事案については免除額の算定や決議要件の充足を含めて専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象取締役に職務執行につき善意でかつ重大な過失がないことを確認したか
- [ ] 会社法第425条第1項の算定式に基づき最低責任限度額を正確に計算したか
- [ ] 免除額が最低責任限度額を下回っていないか再確認したか
- [ ] 監査役設置会社の場合、監査役全員の同意書を取得し議事録に添付したか
- [ ] 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の場合は宛先の機関を読み替えたか
- [ ] 招集通知の株主総会参考書類に免除の原因事実・免除額を具体的に記載したか
- [ ] 特別決議(会社法第309条第2項第8号)の定足数・賛成要件を満たしているか
- [ ] 会社法第426条(取締役会決議による免除)の制度と混同していないか
- [ ] 決議の効力発生日、免除の範囲を議事録上明確にしたか
- [ ] 議長及び出席取締役の記名押印を得たか
- [ ] 個別事案の該当性・算定根拠について専門家への確認を予定しているか