退任役員へ退職慰労金を支給する際の議事録。会社法第361条の報酬等に含まれるため株主総会決議を要する点と、具体的金額を取締役会に一任する場合の文例を収録します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
役員退職慰労金支給 株主総会議事録
第1部: 書式本文
― 開催場所: 【本店会議室】 ― 開催日時: 【20〇〇年〇月〇日午前・午後〇時〇〇分】 ― 総株主数及び議決権数: 【〇〇名、〇〇個】 ― 出席株主数及び議決権数(委任状による出席を含む): 【〇〇名、〇〇個】 ― 出席取締役: 【氏名】、【氏名】 ― 出席監査役: 【氏名】
定刻、代表取締役【氏名】が議長となり、法定の定足数を満たす株主の出席があったことを確認したうえで開会を宣した。議長は、本総会の議題の一つが、本年【〇】月【〇】日開催の取締役会において退任が承認された取締役【氏名】に対する退職慰労金の贈呈に関するものであることを説明した。
議長は、退任取締役【氏名】が【〇〇年〇か月】にわたり取締役として在任し、その間の功績が顕著であったことを踏まえ、退職慰労金を贈呈したい旨を述べ、下記議案を上程した。
第【〇】号議案 退任取締役に対する退職慰労金贈呈の件
議長は、次のとおり議案の内容を説明した。
「退任取締役【氏名】に対し、当会社の退職慰労金支給内規に基づき、相当額の範囲内で退職慰労金、功労金及びこれらに代わる金員を贈呈することとし、その具体的な金額、支払時期及び支払方法は取締役会に一任する。なお、当該内規は、本総会終了後も株主の閲覧に供する状態で本店に備え置くものとする。」
議長は、退職慰労金の算定は、当会社の退職慰労金支給内規に定める役位別係数及び在任年数を基準とする計算式によっており、当該内規は本総会に先立ち株主が閲覧できる状態に置かれていた旨を説明した。
議長がこの議案の内容及び内規の閲覧可能性について説明し、質疑に応じたところ、出席株主から格別の異議は述べられなかった。議長がこの議案の可否を諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成を得たので、議長は本議案が原案どおり承認可決された旨を宣言した。
議長は、あわせて、当会社は監査役設置会社であるところ、監査役【氏名】の報酬等については本議案とは別に、既に本総会の別議案において決議済みである旨を確認した。
出席株主の一人から、退職慰労金の支給水準及び会社業績への影響についての質問があり、議長は、支給見込額は内規の算定基準に照らして過大なものではなく、当期の利益処分にも大きな影響を与えない見込みである旨を回答した。また、議長は、退職慰労金の支払時期については、退任取締役の希望も踏まえ、取締役会において分割払いとするか一括払いとするかを含めて決定する予定である旨を補足した。
本総会に付議すべき事項の審議を終えたので、議長は閉会を宣した。
以上の議事の経過の要領及び結果を明確にするため、この議事録を作成し、議長及び出席取締役が次に記名押印する。
【20〇〇年〇月〇日】 【株式会社〇〇】株主総会 議長・代表取締役 【氏名】 印 出席取締役 【氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 取締役会設置会社における一任の枠組みを明確にする場面
修正後の文例:
議長は、当会社が取締役会設置会社であることを確認したうえ、退職慰労金の具体的な金額、支払時期及び支払方法の決定を取締役会に一任すること、及び取締役会がこれをさらに代表取締役に一任することの可否については別途取締役会において判断される旨を説明した。
一言解説: 取締役会設置会社では、株主総会が支給の相当額の枠組み(内規への準拠)を決定したうえで、具体的な金額決定等の細目を取締役会に委ねる構成が一般的であるため、一任の対象がどこまでかを議事録上で明確にしておくと、再一任の可否をめぐる争いを避けやすい。
B. 支給基準を取締役会に一任する場面
修正後の文例:
議長は、退職慰労金の支給基準を定めた内規が存在し、本総会の招集通知発送時から会日に至るまで株主がその内容を閲覧できる状態に置かれていたことを確認し、これにより支給額の決定を取締役会に一任することの合理性が担保されている旨を説明した。
一言解説: 判例上、退職慰労金の具体的な支給額等の決定を取締役会に一任するには、支給基準を定めた内規が存在し、株主がその内容を推知し得る状態にあることが要件とされているため、内規の備置き及び閲覧可能性を議事録に明記しておく。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、取締役会設置会社において、退任する取締役に対する退職慰労金の贈呈を株主総会で決議し、具体的な金額等の決定を取締役会に一任する場面で用いる。退職慰労金の支給基準を定めた内規が存在しない会社や、内規はあるが株主に開示していない会社では、一任の要件を欠くおそれがあるため、本書式をそのまま用いるべきではない。また、取締役会非設置会社においては一任先となる取締役会が存在しないため、支給額そのものを株主総会で確定させる別の構成を検討する必要がある。
根拠法令は、会社法361条1項(取締役の報酬等は定款又は株主総会の決議によって定めるものとされ、退職慰労金も職務執行の対価としての性質を有する限り報酬等に含まれると解されていること)である。具体的な支給額等の決定を取締役会に一任する場合には、支給基準を定めた内規が存在し、株主がその内容を知り得る状態にあることが要件とされるとの考え方が確立している。あわせて、会社法384条(監査役設置会社では監査役の報酬等は取締役の報酬等とは別に株主総会の決議を要し、取締役会に一任することはできないこと)との対比も押さえておく必要がある。
実務でよくある失敗の一つ目は、退職慰労金支給内規を作成していない、又は作成していても株主が閲覧できる状態に置いていないまま、金額の決定を取締役会に一任してしまうことである。内規の不存在や非開示は、一任決議の有効性そのものを争われる原因となるため、対策として、本文に内規の備置き及び閲覧可能性を確認する一文を設けている。
二つ目の失敗は、取締役の退職慰労金と監査役の退職慰労金を区別せず、同一の議案で一括して決議してしまうことである。会社法384条により監査役の報酬等は取締役の報酬等とは別に決定される必要があり、取締役会への一任も認められないため、対策として、本文で監査役報酬が別議案で決議済みであることを確認する一文を設けている。
三つ目の失敗は、内規に定める算定基準を逸脱する特別功労金を、内規の枠外で追加支給しようとする場合に、その追加部分についても株主総会の決議を要することを失念することである。内規の範囲を超える支給は、内規に基づく一任の効力が及ばないため、別途、追加支給に相当する具体的な決議を要すると解される。
四つ目の失敗は、取締役会に一任した後、取締役会が具体的な金額決定をさらに代表取締役個人に再一任してしまい、恣意的な金額決定であるとの疑義を招くことである。株主総会が取締役会に一任した趣旨は、内規という客観的な基準に基づく判断を取締役会という合議体に委ねる点にあり、無限定に代表取締役個人の裁量に委ねることまで許容する趣旨ではないと解される余地がある。対策として、取締役会での決定過程を議事録に残し、内規との整合性を確認できるようにしておくことが考えられる。退職慰労金の相当性や内規の運用実態の評価には個別の事情による違いが大きいため、個別事案は専門家に確認のうえで手続を進めることが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 退任取締役の在任期間及び功績の概要を確認したか
- [ ] 退職慰労金支給内規が存在し、内容が具体的な算定基準を示しているか確認したか
- [ ] 内規を株主が閲覧できる状態(本店備置き等)に置いたか
- [ ] 一任する事項の範囲(金額・支払時期・支払方法)を議事録上で明確にしたか
- [ ] 監査役の退職慰労金を取締役分と区別し、別議案で決議しているか
- [ ] 普通決議(会社法361条1項)としての定足数及び賛成要件を満たしているか
- [ ] 内規の範囲を超える特別功労金がある場合、別途の決議を検討したか
- [ ] 取締役会における具体的な金額決定の予定時期を確認したか
- [ ] 支給額決定後、退任取締役への通知及び支払スケジュールを整理したか
- [ ] 税務上の取扱い(損金算入の可否等)について別途確認する予定があるか