譲渡代金を複数回に分けて決済する株式譲渡契約書です。残代金支払までの株式質入れや期限の利益喪失事由を定め売主の回収を担保します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
株式譲渡契約書(分割決済型)
第1部: 書式本文
譲渡人【氏名又は商号】(以下「甲」という。)及び譲受人【氏名又は商号】(以下「乙」という。)は、【対象会社商号】(以下「対象会社」という。)の発行済株式の譲渡に関し、次のとおり株式譲渡契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(株式の譲渡) 甲は、乙に対し、甲が保有する対象会社の普通株式【株式数】株(以下「本件株式」という。)を譲渡し、乙はこれを譲り受ける。
第2条(譲渡代金及び支払方法) 本件株式の譲渡代金は総額金【譲渡代金】円とし、乙は甲に対し、次のとおり分割して支払う。第1回金【第1回金額】円をクロージング日に、第2回以降各金【分割金額】円を【支払期日(例:毎年〇月末日)】に、それぞれ甲の指定する銀行口座へ振り込む方法により支払う。
第3条(名義書換えの時期) 甲は、クロージング日において、本件株式に係る株主名簿の名義書換えに必要な書類を乙に交付し、対象会社は乙を株主として株主名簿に記載する。ただし、次条に定める質権の設定については別途手続を行う。
第4条(株式への質権設定) 乙は、甲に対する残代金債務を担保するため、乙が取得する本件株式のうち【株式数】株について、甲を質権者とする質権を設定し、会社法第146条及び民法第364条に従い対象会社に対する対抗要件を具備する手続に協力する。当該質権は、残代金債務の完済により消滅する。
第5条(議決権の帰属) 前条の質権設定にかかわらず、本件株式の議決権は乙が行使するものとし、甲は当該議決権の行使に介入しない。ただし、後記第7条の期限の利益喪失事由が生じた場合はこの限りでない。
第6条(遅延損害金) 乙が分割金の支払を期日までに行わなかった場合、乙は甲に対し、未払額に対し年【割合】パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
第7条(期限の利益喪失) 乙は、次の各号のいずれかに該当した場合、甲からの通知催告を要せず当然に期限の利益を喪失し、残債務全額を直ちに一括して支払わなければならない。一 分割金の支払を【回数】回以上怠ったとき。二 手形又は小切手の不渡りその他の支払停止の状態に至ったとき。三 破産、民事再生その他の倒産手続開始の申立てを受け、又は自ら申し立てたとき。四 対象会社の株式を担保に供し、又は第三者に譲渡したとき(本契約に基づくものを除く。)。
第8条(質権実行) 乙が前条により期限の利益を喪失した場合、甲は民法の担保権実行に関する規定に従い質権を実行し、本件株式の換価又は自己への帰属により残債務の弁済に充当することができる。
第9条(表明保証) 甲は乙に対し、本件株式について適法かつ完全な権利を有し、質権その他の担保権(本契約に基づくものを除く。)が設定されていないことを表明し保証する。
第10条(繰上弁済) 乙は、いつでも甲の承諾を得て残代金の全部又は一部を繰り上げて弁済することができる。
第11条(準拠法及び管轄) 本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争については【裁判所名】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
【契約日】
甲(譲渡人): 【住所・氏名】 印 乙(譲受人): 【住所・氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 譲渡人(売主)向けの修正
A-1. 連帯保証人の追加
追加条文例:「【保証人氏名】(以下「丙」という。)は、乙の甲に対する本契約に基づく残代金債務について、乙と連帯して保証する。」 一言解説: 質権の設定だけでは株式の評価額が下落した場合に回収不足が生じるおそれがあるため、売主側は個人保証を併用して回収可能性を高める修正を行う。
A-2. 対象会社の財務悪化時の期限の利益喪失事由の追加
修正後:「乙は、対象会社の直近の純資産額がクロージング日時点の純資産額から【割合】パーセント以上減少したときも、前条と同様に期限の利益を喪失する。」 一言解説: 分割決済中に担保株式の価値そのものが下落すると質権の実効性が失われるため、売主側は対象会社の財務悪化を独立した期限の利益喪失事由として追加する。
B. 譲受人(買主)向けの修正
B-1. 分割金支払と経営関与の連動
追加条文例:「乙は、残代金の支払が完了するまでの間、対象会社の重要な財産の処分について、甲の事前の書面による同意を得るものとする。」 一言解説: 買主が経営権を握りながら代金を分割で支払う構造では、支払完了前に対象会社の資産が流出すると売主の担保価値が損なわれるため、買主側もこれを受け入れることで取引の実現性を高める修正である。
B-2. 遅延損害金の上限設定
修正後:「前条の遅延損害金の利率は、利息制限法その他の関係法令に定める上限を超えないものとする。」 一言解説: 遅延損害金の利率を高く定めすぎると強行法規に抵触するおそれがあるため、買主側は法定上限の範囲内であることを明記する修正を行う。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、譲受人が譲渡代金の全額を一括で用意できない場合や、譲渡人が対象会社の経営継続状況を見ながら段階的に代金を回収したい場合に用いる。譲受人の資金調達に大きな不安がある場合や、対象会社の資産価値が急速に変動する事業を営んでいる場合は、質権による担保だけでは回収を確保できないため、追加の保証や別の担保手段の検討が必要であり、単純な分割決済の枠組みのみで足りるとは限らない。
根拠法令 株式に質権を設定することについては会社法第146条以下に規定があり、譲渡制限株式に質権を設定する場合の対抗要件の具備方法や、株主名簿における質権者の記載についての規律が置かれている。質権の効力及び実行方法については民法第362条から第368条までの規定が適用される。期限の利益喪失条項及びこれに基づく一括請求は、民法第137条の期限の利益喪失事由に関する規定を契約上具体化したものである。遅延損害金の利率については、利息制限法により金銭消費貸借に準じる金銭債務の遅延損害金の上限が定められている点に留意が必要である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、質権を設定したものの対抗要件の具備を怠り、いざ実行しようとした際に第三者に対抗できない失敗がある。第4条のように会社法及び民法の規定に従った対抗要件具備手続を明記することが対策となる。第二に、期限の利益喪失事由を分割金の不払のみに限定した結果、対象会社の経営が悪化して株式価値が毀損しても売主が早期に対応できない失敗がある。第7条及びA-2のように財務悪化等の事由も含めて広く定めることが対策となる。第三に、遅延損害金の利率を高く設定しすぎて利息制限法その他の強行法規に抵触し、条項自体が無効と判断される失敗がある。B-2のように法令上の上限内であることを確認することが対策となる。担保の実効性や保証人の資力については個別に事情が異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 分割回数・各回の金額及び支払期日を具体的に定めたか
- [ ] 名義書換えの時期と質権設定手続を分けて整理したか
- [ ] 質権の対抗要件具備の方法(株主名簿記載等)を確認したか
- [ ] 議決権の帰属と質権設定の関係を明確にしたか
- [ ] 期限の利益喪失事由を網羅的に列挙したか
- [ ] 遅延損害金の利率が利息制限法等の上限を超えていないか確認したか
- [ ] 連帯保証人の要否を検討したか
- [ ] 対象会社の財務状況をモニタリングする手段を定めたか
- [ ] 質権実行時の手続(換価・帰属)を確認したか
- [ ] 繰上弁済の可否及び条件を定めたか