36協定や各種労使協定の締結相手を適正に選ぶ場面で使う立候補・投票・信任の様式。労働基準法施行規則第6条の2が求める民主的手続の証跡を確実に残せる。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
過半数代表者の選出手続書式一式
第1部: 書式本文
本書式は、労働基準法施行規則第6条の2に基づき、事業場の労働者の過半数を代表する者(以下「過半数代表者」という。)を選出するために必要な一連の様式をまとめたものである。36協定その他の労使協定の締結、就業規則作成時の意見聴取など、過半数代表者の関与を要する手続の前提として使用する。
【様式1: 選出目的の告知文】 記載項目 ・選出の目的(例: 時間外労働・休日労働に関する協定の締結、就業規則変更に係る意見聴取 等、具体的に特定して記載する。) ・選出の方法(投票、挙手、信任確認等のいずれによるかを明記する。) ・立候補又は推薦の受付期間及び提出先 ・投票日又は信任確認日 ・選挙権を有する者の範囲(管理監督者を除く事業場の全労働者であることを明記する。) ・使用者は候補者の指名その他選出過程に関与しない旨
【様式2: 立候補届/推薦届】 記載項目 ・立候補者又は被推薦者の氏名・所属 ・推薦の場合は推薦者の氏名(複数可) ・管理監督者(労働基準法第41条第2号)に該当しない旨の自己申告欄 ・提出日
【様式3: 投票用紙】 記載項目 ・投票日・事業場名 ・候補者氏名の一覧(記号式又は自書式) ・無効票の取扱いに関する注記
【様式4: 開票結果報告書】 記載項目 ・投票総数、有効票数、無効票数 ・候補者ごとの得票数 ・開票立会人の氏名及び署名 ・当選者の氏名及び決定日
【様式5: 信任確認書(挙手・回覧による場合)】 記載項目 ・候補者(推薦を受けた者)の氏名 ・信任確認の方法(回覧、挙手、電磁的方法等)及び実施日 ・信任した労働者の範囲及び人数、不信任者数 ・過半数の信任を得た旨の確認
【様式6: 選出結果の通知・公示】 記載項目 ・過半数代表者の氏名及び所属 ・選出方法及び選出日 ・任期(定めがある場合) ・全労働者への周知方法(掲示、書面配付、電子掲示板等)
【様式7: 就任承諾書】 記載項目 ・過半数代表者に就任することへの承諾の意思表示 ・管理監督者に該当しないことの表明 ・使用者の意向による選出でないことの確認欄
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 投票による選出
A-1 様式3投票用紙の修正例 「本投票は、無記名投票とし、投票用紙は開票後直ちに封印のうえ、本手続の記録として【 】年間保管する。」 一言解説: 投票の秘密性を確保しつつ、後日の監督署の調査等に備えて記録を保存できるようにする。
A-2 様式4開票結果報告書の修正例 「投票総数が事業場の労働者数(選挙権を有する者)の過半数に満たない場合、開票立会人は再投票の要否について所属長を通じて労働者代表候補予定者及び労働者に周知し、再度手続を行う。」 一言解説: 投票率が著しく低い場合に民主的手続としての実質を欠くおそれがあるため、再手続の基準をあらかじめ定めておく。
B節: 挙手・回覧による信任
B-1 様式5信任確認書の修正例 「回覧による信任確認を行う場合、会社は、信任の可否を記載する欄を候補者名の記載と分離した用紙とし、記載者が第三者に閲覧されないよう封筒に入れて回収する。」 一言解説: 挙手や回覧は投票に比べ意思表示の匿名性が確保されにくいため、記載内容が周囲に知られない工夫を条文レベルで担保する。
B-2 様式1告知文の修正例 「挙手による信任確認を実施する場合であっても、信任しない意思を有する労働者が不利益な取扱いを受けないことを、告知文において明記する。」 一言解説: 挙手方式は不信任の意思表示をしにくい面があるため、不利益取扱いの禁止をあらかじめ周知し、実質的な自由意思による選出を担保する。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式一式は、時間外労働・休日労働に関する協定(いわゆる36協定)、変形労働時間制に関する協定、賃金控除協定、育児介護休業の適用除外協定など、労働基準法及び関連法令が過半数代表者との書面協定又は意見聴取を要件とする場面すべての前提手続として使用する。逆に、労働組合が労働者の過半数で組織されている事業場では、当該労働組合が協定当事者となるため、本書式による過半数代表者の選出手続は不要である。
根拠法令は労働基準法施行規則第6条の2であり、同条第1項は、過半数代表者について、(1)労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと、(2)協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと、を要件として定める。同条第4項は、使用者が過半数代表者に対し、選出されたことを理由として不利益な取扱いをしないよう配慮しなければならないとする。
実務でよくある失敗の一つ目は、使用者が特定の従業員を指名し、形式的な信任確認のみで過半数代表者としてしまうことである。これは施行規則第6条の2第1項第2号が明確に禁止する「使用者の意向に基づく選出」に該当し、当該者が締結した協定は無効と評価される可能性が高い。
二つ目の失敗は、部長・課長などの管理職を過半数代表者としてしまうことである。労働基準法第41条第2号の管理監督者に該当する者は過半数代表者となることができず、これに反して選出された者が締結した協定は無効となり得る。管理監督者該当性は役職名ではなく職務内容・権限・待遇の実態で判断される点にも注意を要する。
三つ目の失敗は、選出手続の対象からパートタイム労働者や有期雇用労働者を除外し、正社員のみで投票・信任確認を行ってしまうことである。過半数代表者の選出における「労働者」には、パートタイム・有期雇用労働者を含む事業場の全労働者(管理監督者を除く。)が含まれ、一部を除外した手続は民主的手続の要件を欠く。
四つ目の失敗として、選出手続を毎年更新せず、数年前に選出された過半数代表者の地位が当然に継続するものとして扱ってしまう例も見られる。異動・退職により候補者の状況が変わっているにもかかわらず選出手続を省略すると、締結する協定自体の前提を欠くことになるため、協定を締結・更新する都度、選出手続の実施日と有効性を確認する運用が望ましい。
管理監督者該当性の判断や選出手続の有効性の評価は個別事情によって異なるため、実施前に社会保険労務士又は弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 選出の目的(締結する協定の種類等)を告知文に具体的に明記したか
- [ ] 選挙権を有する者の範囲にパートタイム・有期雇用労働者を含めたか
- [ ] 管理監督者を選挙権者・被選出者のいずれからも適切に区別したか
- [ ] 使用者が候補者の指名や選出過程への関与を行っていないか確認したか
- [ ] 投票、挙手、信任確認等の方法及び実施日を明記したか
- [ ] 開票又は信任確認の結果を記録し、一定期間保管する体制を整えたか
- [ ] 過半数の労働者の信任又は投票参加があったことを確認したか
- [ ] 選出結果を全労働者に周知する方法を定めたか
- [ ] 過半数代表者への就任承諾及び管理監督者非該当の自己申告を得たか
- [ ] 不利益取扱いを行わない旨を告知文等に明記したか
- [ ] 協定を締結・更新する都度、選出手続の実施日と有効性を再確認する運用としたか