海外の販売店へ一定地域における独占的な再販売権を付与する和文書式。最低購入数量や競合品の取扱制限を定め、現地の代理店保護法制と通則法上の準拠法選択に配慮します。

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海外独占販売店契約書(和文)

第1部: 書式本文

前文 【メーカー商号】(以下「甲」という。)と【海外販売店商号】(以下「乙」という。)は、甲の製造する【製品名】(以下「本製品」という。)の【対象地域名】における販売に関し、次のとおり独占販売店契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(独占的販売権の付与) 甲は乙に対し、本製品を【対象地域】において再販売する独占的権利を付与する。甲は、本契約の有効期間中、乙以外の第三者に対し対象地域向けに本製品を直接又は間接に販売しない。

第2条(適用除外) 前条の独占権は、対象地域内のエンドユーザーから甲に直接注文があった既存取引先【取引先名】については適用しない。

第3条(最低購入数量) 乙は、契約年度ごとに本製品を【10,000】個以上購入するものとする(以下「最低購入数量」という。)。乙が2契約年度連続して最低購入数量を達成しない場合、甲は第1条の独占権を非独占権に変更し、又は本契約を解除することができる。

第4条(注文及び引渡し) 個別の注文は乙が発注書を発行し、甲がこれを承諾した時点で成立する。引渡条件は【FOB/CIF等インコタームズ2020に基づく条件】による。

第5条(競合品取扱いの制限) 乙は、本契約の有効期間中、甲の書面による事前の承諾なく、本製品と競合する製品を対象地域において取り扱ってはならない。

第6条(価格及び支払条件) 本製品の価格は別紙価格表による。甲は市況の変動等合理的な理由がある場合、【60】日前の書面通知により価格を改定できる。

第7条(商標の使用) 甲は乙に対し、本製品の販売促進に必要な範囲で甲の商標を対象地域内で使用することを許諾する。乙は当該使用について甲の事前の品質基準・使用基準を遵守する。

第8条(在庫及び販売促進義務) 乙は、対象地域における需要に応じた適正在庫を維持し、自己の費用負担で合理的な販売促進活動を行う。

第9条(契約期間及び更新) 本契約の有効期間は締結日から【3】年間とし、期間満了の【6】か月前までにいずれの当事者からも書面による更新拒絶の通知がない限り、さらに【1】年間自動更新する。

第10条(解除) 甲又は乙は、相手方に重大な契約違反があり、是正勧告後【30】日以内に是正されない場合、書面通知により本契約を解除できる。

第11条(契約終了後の措置) 契約終了時、乙は甲の商標を用いた販売活動を直ちに停止し、在庫は甲が合理的な条件で買い取るか、乙が自己の費用で処分する。

第12条(準拠法及び裁判管轄) 本契約の準拠法は【日本法】とする。ただし、対象地域の強行法規により代理店・販売店保護に関する規定が本契約に優先して適用される場合があることを甲乙は確認する。紛争は【シンガポール国際仲裁センター(SIAC)】における仲裁により終局的に解決する。

第13条(通知) 本契約に関する通知は、書面により、頭書記載の住所又は各当事者が別途通知する宛先に対して行う。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. メーカー(供給者)向けの修正例

供給者の立場では、独占権の付与が乙の販売不振によって空洞化しないよう、第3条の最低購入数量未達時の効果を強化することが重要である。「2契約年度連続」を「1契約年度でも」に短縮し、未達成の場合は自動的に独占権が非独占権へ転換する旨を定める書き換えが有効である。また第9条の自動更新条項を削除し、更新の都度、甲の書面による承諾を要件とする修正も供給者側の交渉材料となる。

B. 海外販売店向けの修正例

販売店の立場では、投資回収の予見可能性を確保するため、第9条の契約期間を「5年」に延長し、更新拒絶事由を「重大な契約違反」に限定する書き換えが望ましい。また第6条の一方的価格改定条項について、「甲乙協議のうえ合意した場合に限り改定できる」との文言に修正し、一方的な値上げによる採算悪化リスクを回避することが考えられる。対象地域の代理店保護法制上、契約終了時に販売店へ補償金の支払いが義務付けられる法域も存在するため、第11条に終了時補償の取扱いを明記する修正も有効である。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本書式は、海外の特定地域において一手販売権を付与し、当該販売店を通じて市場を開拓する場面で用いる。単なる仕入・卸売の取引で独占性を伴わない場合や、複数の販売店を並行して起用する方針の場合には、本書式の独占条項は不適合であり、非独占的販売店契約書を用いるべきである。

準拠法条項の実効性については、法の適用に関する通則法第7条(当事者による準拠法選択の原則)及び第8条(準拠法選択がない場合の最密接関係地法)が基本となる。もっとも、多くの法域では販売店・代理店保護法制(たとえば一定の地域における独占的販売店の一方的解約や契約終了時の補償を義務付ける強行法規)が国際私法上の準拠法選択にかかわらず適用される場合があり、これを回避する目的のみで準拠法を選択しても実効性を欠くおそれがある点に注意が必要である。

実務でよくある失敗として、第一に対象地域の代理店保護法制を調査せずに一方的な解除条項のみを定め、現地での解除が無効又は違法と判断され補償金の支払いを命じられる例がある。事前に現地弁護士への確認を経て、第10条・第11条の解除・終了時措置を現地法に整合させることが対策となる。第二に、最低購入数量の未達成時の効果を曖昧にし、独占権の見直しが実質的に機能しない失敗がある。第3条のように未達成時の具体的効果(非独占化・解除権発生)を明記することが必要である。第三に、競合品取扱制限(第5条)の範囲を広く定めすぎ、対象地域の競争法(独占禁止法に相当する現地法令)に抵触するおそれがある点も見落とされがちである。個別の取引条件や対象地域の強行法規の適用範囲については、必ず現地の専門家に確認のうえ最終化することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 対象地域及び対象製品の範囲が明確に特定されているか
  • [ ] 独占権の例外(既存取引先等)を明記しているか
  • [ ] 最低購入数量とその未達成時の効果を具体的に定めているか
  • [ ] 競合品取扱制限の範囲が広範すぎて現地競争法に抵触しないか確認したか
  • [ ] 商標使用許諾の範囲と品質基準を定めているか
  • [ ] 価格改定の手続(通知期間・協議要否)を明記しているか
  • [ ] 契約期間・更新条件・更新拒絶の通知期限を定めているか
  • [ ] 対象地域の代理店・販売店保護法制の有無を調査したか
  • [ ] 契約終了後の在庫処理及び補償の要否を定めているか
  • [ ] 準拠法及び紛争解決機関(裁判所又は仲裁)を明記しているか