海外市場で顧客紹介や契約媒介を行う代理店へ手数料を支払う取引の書式。代理権の範囲と贈収賄防止義務を定め、外国の代理店保護法制と国際裁判管轄の扱いを明示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
海外販売代理店契約書(和文)
第1部: 書式本文
前文 【本人商号】(以下「甲」という。)と【海外代理店商号】(以下「乙」という。)は、甲の【製品/サービス名】に関し、乙が【対象地域】において顧客の紹介及び契約締結の媒介を行う代理店取引について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(代理権の範囲) 乙は、甲のために【対象地域】において本製品の潜在顧客を発掘し、これを甲に紹介し、契約締結に向けた媒介活動を行う。乙は、甲の事前の書面による授権なく、甲を代理して契約を締結する権限を有しない。
第2条(非独占又は独占の別) 本契約に基づく代理権は【独占的/非独占的】とする。独占とする場合、甲は対象地域において乙以外の代理店を起用しない。
第3条(手数料) 甲は乙に対し、乙の媒介により成立した契約の対価として、当該契約金額(税抜)の【8】%を代理店手数料として支払う。手数料は、甲が顧客から代金を受領した日から【30】日以内に乙の指定口座へ送金する。
第4条(手数料の対象取引) 手数料の対象は、契約期間中に成立した契約に加え、契約終了後【12】か月以内に成立した契約であって、乙の媒介活動が主たる原因となったものを含む。
第5条(活動報告) 乙は、四半期ごとに営業活動の状況及び見込み案件の一覧を甲に報告する。
第6条(贈収賄防止義務) 乙は、代理店活動に関連し、公務員その他の者に対し、契約の獲得・維持を目的とした不正な金銭その他の利益を供与し、又はその申込み・約束をしてはならない。乙がこれに違反した場合、甲は催告なく本契約を解除し、既発生の手数料請求権を制限することができる。
第7条(競業避止) 乙は、本契約の有効期間中、甲の書面による承諾なく、本製品と競合する製品又はサービスに関する代理店活動を対象地域において行ってはならない。
第8条(契約期間及び解除) 本契約の有効期間は【2】年間とする。甲又は乙は、相手方に本契約上の重大な違反があり、書面による是正勧告後【30】日以内に是正されない場合、本契約を解除できる。
第9条(契約終了時の補償) 本契約が甲の都合により終了した場合であって、乙が甲のために新規顧客を獲得し、甲が当該顧客との取引から継続的な利益を得ると見込まれるときは、甲乙は補償金の要否及び金額について協議する。
第10条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約に関連して知り得た相手方の営業上・技術上の秘密情報を、本契約の目的以外に使用し、又は第三者に開示してはならない。
第11条(準拠法及び国際裁判管轄) 本契約の準拠法は【日本法】とする。本契約に関する紛争については、【日本国東京地方裁判所】を第一次的な管轄裁判所とする。ただし、対象地域の強行法規に基づき現地の裁判所又は行政機関が管轄権を有すると判断される場合はこの限りでない。
第12条(通知) 本契約に関する通知は書面により行い、頭書記載の住所又は各当事者が別途指定する宛先に送付する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 本人(委託者)向けの修正例
委託者の立場では、代理店の越権行為による責任負担を防ぐため、第1条に「乙は、甲の書面による個別の授権がない限り、いかなる名義においても甲を代理して契約を締結し、又は甲のために債務を負担する権限を有しない」との文言を追加し、代理権の範囲を明確に限定することが有効である。また第9条の終了時補償について、「乙の重大な契約違反を理由とする解除の場合、乙は補償金を請求できない」との除外規定を加える修正も委託者側の防御として機能する。
B. 海外代理店向けの修正例
代理店の立場では、手数料の確実な回収のため、第3条の支払期限を「顧客からの入金の有無にかかわらず、契約成立日から60日以内に支払う」との文言に修正し、甲の代金回収遅延リスクを代理店が負担しない設計に変更することが考えられる。また第9条の終了時補償について、対象地域の代理店保護法制上、法定の最低補償額が定められている場合には、「補償金の額は、対象地域の強行法規に定める最低額を下回らない」との一文を追加し、現地法上の権利を契約書上も明確化することが有効である。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、海外市場において顧客紹介や契約締結の媒介を専門業者に委ねる、いわゆるコミッション型の代理店取引に用いる。乙が自己の名義・計算で商品を仕入れて再販売する取引形態(ディストリビューター型)には適合せず、その場合は独占販売店契約書等、別の書式を用いるべきである。
法的性質としては、日本法上は委任又は準委任(民法第643条、第656条)に近い性質を有し、国内における同種の取引形態として商法第27条以下の代理商に関する規定(通知義務、競業避止義務等)が参考になる。もっとも、対象地域が外国である場合、当該地域の代理店保護法制(契約終了時の補償請求権を代理店に認める強行法規)の適用の有無を検討する必要があり、法の適用に関する通則法第7条・第8条に基づく準拠法選択のみで現地の強行法規の適用を排除できるとは限らない。国際裁判管轄については、民事訴訟法第3条の2以下の規定及び本契約における合意管轄条項の効力を併せて検討する必要がある。
贈収賄防止義務(第6条)は、不正競争防止法第18条の外国公務員贈賄罪のほか、対象国によっては米国の海外腐敗行為防止法(FCPA)や英国贈収賄防止法(UK Bribery Act)等、域外適用のある法令の対象となり得る点に留意する。
実務でよくある失敗として、第一に代理権の範囲を明確にしないまま代理店に契約締結行為を行わせ、甲が意図しない契約条件で顧客と契約が成立したとみなされる例がある。第1条のように授権の範囲を書面で限定することが対策となる。第二に、契約終了時の補償について何も定めず、対象地域の強行法規により想定外の高額な補償金の支払いを命じられる失敗がある。第9条のような協議条項に加え、事前に現地法の調査を行うことが必要である。第三に、贈収賄防止条項を置かずに現地慣行に委ねた結果、代理店の不正行為について本人にも法令上の責任が及ぶ例がある。個別の対象地域における強行法規の内容や責任の及ぶ範囲については、必ず現地弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 代理店の権限が契約締結権限を含むか否かを明確にしているか
- [ ] 独占・非独占の別を明記しているか
- [ ] 手数料の料率・計算対象・支払期限を具体的に定めているか
- [ ] 契約終了後の手数料対象取引(残存効果)の範囲を定めているか
- [ ] 贈収賄防止義務及び違反時の解除・請求制限を定めているか
- [ ] 競業避止義務の範囲が対象地域の競争法に抵触しないか確認したか
- [ ] 契約終了時の補償の要否について対象地域の強行法規を調査したか
- [ ] 秘密保持義務の範囲及び存続期間を定めているか
- [ ] 準拠法及び国際裁判管轄(又は仲裁)の条項を明記しているか
- [ ] 現地の代理店保護法制上の登録・届出義務の有無を確認したか