海外企業へ特許・ノウハウ・商標の使用を許諾しロイヤルティを受領する和文書式。外為法の技術導入契約に係る届出、源泉徴収と租税条約に基づく軽減手続を整理します。

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海外ライセンス契約書(和文)

第1部: 書式本文

前文 【ライセンサー商号】(以下「甲」という。)と【ライセンシー商号】(以下「乙」という。)は、甲の保有する特許権、ノウハウ及び商標(以下併せて「本許諾技術等」という。)の実施許諾に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(定義) 「本特許権」とは別紙記載の特許及び特許出願をいう。「本ノウハウ」とは本製品の製造に必要な技術情報のうち別紙記載のものをいう。「本商標」とは別紙記載の商標登録をいう。

第2条(実施許諾) 甲は乙に対し、【対象地域】において、本許諾技術等を用いて【対象製品】を製造・販売する【独占的/非独占的】かつ譲渡不能な実施権を許諾する。

第3条(実施料) 乙は甲に対し、本契約に基づく実施の対価として、対象製品の純販売高の【5】%に相当するランニングロイヤルティを、四半期ごとに算定し、当該四半期終了後【45】日以内に支払う。

第4条(最低実施料) 乙は、契約年度ごとに前条のランニングロイヤルティが【500万円】に満たない場合であっても、【500万円】を最低実施料として甲に支払う。

第5条(実施状況の報告及び帳簿閲覧) 乙は、四半期ごとに対象製品の製造・販売数量及び純販売高を記載した報告書を甲に提出する。甲は、乙の事業年度終了後【1】年以内に限り、乙の帳簿を監査人を通じて閲覧できる。

第6条(改良発明の取扱い) 乙が本許諾技術等を利用して改良発明をした場合、乙は速やかに甲に通知する。当該改良発明に係る権利の帰属及び甲への実施許諾の要否は、別途甲乙協議のうえ定める。

第7条(商標の使用基準) 乙は、本商標を対象製品に付するにあたり、甲が定める品質基準及び表示基準を遵守し、甲は当該基準の遵守状況を確認するため必要な範囲で乙の製造設備を検査できる。

第8条(不争義務) 乙は、本契約の有効期間中、本特許権の有効性について異議申立て、無効審判請求その他これに準ずる手続を行ってはならない。

第9条(存続期間及び更新) 本契約の有効期間は締結日から【5】年間とする。期間満了の【6】か月前までに書面による更新拒絶の通知がない限り、さらに【3】年間更新する。

第10条(解除) 甲又は乙は、相手方に重大な契約違反があり、是正勧告後【30】日以内に是正されない場合、本契約を解除できる。乙が第4条の最低実施料の支払を【2】回連続して怠った場合、甲は催告なく解除できる。

第11条(外国為替及び外国貿易法上の届出) 乙が日本の非居住者であり、本契約が技術導入契約に該当する場合、乙又は甲は、外国為替及び外国貿易法及び対内直接投資等に関する政令に基づき、対象技術の内容によっては日本銀行を経由した財務大臣等への事前届出又は事後報告が必要となる場合があることを確認する。

第12条(源泉徴収及び租税条約の適用) 乙が実施料を甲に支払うにあたり、対象地域の税法上源泉徴収が必要な場合、乙は法定の税率により源泉徴収を行い、甲に対し納税証明書を交付する。甲が日本の居住者であって租税条約に基づく軽減税率の適用を受けようとする場合、甲は必要な届出書類を乙に提供し、乙はこれに基づき軽減後の税率で源泉徴収する。

第13条(準拠法及び裁判管轄) 本契約の準拠法は【日本法】とする。本契約に関する紛争は【日本国東京地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. ライセンサー向けの修正例

ライセンサーの立場では、実施料の徴収漏れと技術流出の防止が重要である。第5条の帳簿閲覧権について、「甲は年1回に限らず、乙の重大な報告義務違反が疑われる場合は随時、乙の帳簿を閲覧できる」との文言に修正し、監査権限を強化することが考えられる。また第6条の改良発明について、「乙が本許諾技術等を利用して行った改良発明に係る権利は甲に帰属し、乙は当該発明について甲に無償で協力する」との条文に置き換え、技術的優位性の維持を図る修正が有効である。

B. ライセンシー向けの修正例

ライセンシーの立場では、投資回収の予見可能性とロイヤルティ負担の軽減が重要である。第4条の最低実施料について、「事業開始後2年間は最低実施料の適用を免除する」との経過措置を追加し、立ち上げ期の負担を軽減する修正が考えられる。また第8条の不争義務については、対象地域の競争法・特許法上、包括的な不争義務が無効又は制限される場合があるため、「本特許権が無効であることが確定判決により明らかになった場合、乙は既払いの実施料の返還を求めることができる」との一文を追加し、一方的な不利益を回避する修正が有効である。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本書式は、日本企業が保有する特許・ノウハウ・商標を海外企業に実施許諾し、継続的にロイヤルティを受領する取引に用いる。単発の技術譲渡(権利そのものの譲渡)を行う場合や、共同開発の成果物の帰属を定める場面には本書式は適合せず、技術譲渡契約書又は共同開発契約書を検討すべきである。

実施許諾の法的根拠は特許法第77条(専用実施権)及び第78条(通常実施権)、商標法第30条(専用使用権)及び第31条(通常使用権)に基づく。ロイヤルティの算定・報告・監査条項(第3条から第5条)は、当事者間の情報の非対称性を踏まえ、実施料の過少申告リスクに備える趣旨で設けている。海外への技術供与に関しては、外国為替及び外国貿易法上の対内直接投資等の枠組みにおいて、技術導入契約に該当する取引について事前届出又は事後報告が求められる場合があり、対象技術の分野や取引金額により手続が異なるため、契約締結前に個別の該当性を確認する必要がある。実施料の支払いに伴う源泉徴収については、日本の国内法上は所得税法第161条に定める国内源泉所得の考え方が関係し、対象地域との間に租税条約が締結されている場合、当該条約に基づく軽減税率の適用を受けるための届出手続(租税条約に関する届出書の提出等)を検討する必要がある。

実務でよくある失敗として、第一に最低実施料を定めずにランニングロイヤルティのみとし、乙の販売不振により甲の投下資本回収が計画どおり進まない失敗がある。第4条のような最低実施料条項を設けることが対策となる。第二に、源泉徴収と租税条約の適用関係を確認しないまま契約を締結し、想定より低い手取額しか受領できない失敗がある。第12条のように源泉徴収の手続と軽減税率適用のための届出書類の提供義務を明記することが必要である。第三に、包括的な不争義務(第8条)を無限定に定めた結果、対象地域の競争法上当該条項が無効と判断され、他の条項の効力にも疑義が生じる例がある。個別の対象地域における不争義務の有効性や技術導入契約の届出要否については、必ず現地弁護士・税理士等の専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 許諾対象となる特許権・ノウハウ・商標の範囲を別紙等で具体的に特定しているか
  • [ ] 独占的/非独占的の別及び対象地域・対象製品の範囲を明記しているか
  • [ ] ランニングロイヤルティの料率と算定基礎(純販売高の定義)を明確にしているか
  • [ ] 最低実施料の金額と未達成時の効果を定めているか
  • [ ] 実施状況の報告義務及び帳簿閲覧・監査権を定めているか
  • [ ] 改良発明の帰属及び甲への実施許諾の要否を定めているか
  • [ ] 外国為替及び外国貿易法上の技術導入契約の届出要否を確認したか
  • [ ] 源泉徴収の要否と租税条約に基づく軽減税率適用の手続を確認したか
  • [ ] 不争義務が対象地域の競争法・特許法上有効な範囲にとどまっているか
  • [ ] 準拠法及び紛争解決機関(裁判所又は仲裁)を明記しているか