介護に直面する中高年社員が多い企業向け。研修や個別周知、相談体制を定め、育児介護休業法第21条の雇用環境整備と意向確認の義務に対応します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
介護離職防止支援規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)の従業員が家族の介護に直面した場合であっても離職することなく就業を継続できるよう、育児介護休業法に定める雇用環境の整備及び個別の周知・意向確認の措置について定め、介護と仕事の両立を支援することを目的とする。
第2条(定義) 本規程において「介護」とは、育児介護休業法第2条第4号に定める要介護状態にある対象家族を介護することをいう。「対象家族」の範囲は同法施行規則の定めるところによる。
第3条(雇用環境の整備) 会社は、育児介護休業法第22条第1項に基づき、介護休業及び介護両立支援制度に関する研修の実施、相談体制の整備、自社における介護両立支援制度の利用事例の収集・提供、介護両立支援制度の利用促進に関する方針の周知のうち、少なくとも【2】以上の措置を講じる。
第4条(相談窓口) 会社は、【人事部】に介護に関する相談窓口を設置し、従業員からの介護に関する相談に随時対応する。
第5条(個別の周知) 1. 会社は、従業員から要介護状態にある対象家族を介護している旨の申出があったときは、育児介護休業法第21条第1項に基づき、介護休業に関する制度、介護休暇制度、所定労働時間の短縮等の措置その他の両立支援制度について、書面又は電子メールにより個別に周知する。 2. 前項の周知は、申出があった日から【2】週間以内に行うものとする。
第6条(意向確認) 会社は、前条の周知と併せて、対象となる従業員に対し、介護休業その他の両立支援制度の利用意向を個別に確認する。意向確認の結果は、本人の同意を得て記録し、人事上不利益な取扱いの判断材料としない。
第7条(介護休業・介護休暇制度の案内) 1. 会社は、対象家族1人につき通算93日を上限として3回まで分割取得できる介護休業(育児介護休業法第11条、第15条)について、就業規則第【 】条の定めに従い取得を認める。 2. 会社は、対象家族1人当たり年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)を限度とする介護休暇(同法第16条の5)について、時間単位での取得を認める。
第8条(所定労働時間短縮等の措置) 会社は、要介護状態にある対象家族を介護する従業員に対し、育児介護休業法第23条第3項に基づき、介護休業とは別に利用開始から3年の間で2回以上利用できる所定労働時間の短縮その他の措置を講じる。
第9条(所定外労働・時間外労働・深夜業の制限) 会社は、要介護状態にある対象家族を介護する従業員から請求があったときは、育児介護休業法第16条の9、第18条及び第20条に基づき、所定外労働の免除、時間外労働の制限又は深夜業の制限を行う。
第10条(不利益取扱いの禁止) 会社は、介護休業等の申出又は取得を理由として、当該従業員に対し解雇その他不利益な取扱いを行わない。
第11条(外部資源の活用) 会社は、従業員の介護に関する相談について、必要に応じて地域包括支援センター、介護支援専門員その他の外部の専門機関を紹介する。
第12条(代替要員の確保) 会社は、介護休業を取得する従業員の業務について、業務の引継ぎ及び代替要員の確保に努める。
第13条(復職後のフォローアップ) 会社は、介護休業からの復職者に対し、復職後【1】か月以内に上司又は人事部門との面談を実施し、就業継続上の課題を把握する。
第14条(改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じて行う。
第15条(附則) 本規程は【西暦年】年【 】月【 】日から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 中高年層の多い企業向け(45歳以上の従業員比率が高い企業)
A-1 第3条の修正例 「会社は、40歳到達時及び45歳到達時の従業員に対し、介護保険制度及び自社の介護両立支援制度に関する情報を一斉に配布し、早期の準備を促す。」 一言解説: 中高年層が多い企業では、実際に介護に直面してから制度を周知するのでは対応が遅れがちなため、年齢到達時の一斉情報提供により早期の心構えを促す設計が有効である。
A-2 第13条の修正例 「復職後のフォローアップ面談は、復職後1か月・3か月・6か月の3回実施し、介護状態の変化に応じて所定労働時間短縮措置の延長要否を確認する。」 一言解説: 介護は育児と異なり終期が見通しにくく状態が変動しやすいため、中高年層が多い企業では複数回のフォローアップを組み込み、状態変化に応じた制度の見直しを行いやすくする。
B節: 大企業向け(複数事業所・多数の従業員を有する企業)
B-1 第4条の修正例 「相談窓口は本社人事部に一元化しつつ、各事業所に介護両立支援担当者を配置し、担当者は相談内容を本社人事部に集約・報告する。」 一言解説: 事業所が多い大企業では、相談窓口を一元化するだけでは現場の従業員が利用しにくいため、事業所ごとの担当者配置と本社への集約報告を組み合わせる設計が実務的である。
B-2 第11条の修正例 「会社は、両立支援制度の利用促進のため、厚生労働省が実施する両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)の活用を検討し、必要に応じて社会保険労務士等の専門家の助言を受ける。」 一言解説: 大企業では助成金の活用により代替要員確保等のコストを軽減できる場合があるため、外部専門家との連携を規程上も明記しておくと制度導入の後押しになる。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本規程を導入すべき場面は、就業規則に介護休業・介護休暇の定めはあるものの、従業員が実際に介護に直面した際にどの制度をいつ利用できるかが本人に伝わっておらず、相談せずに離職してしまうケースが懸念される企業である。逆に、従業員数が少なく個別の声かけや面談で十分に周知・意向確認が行えている企業では、詳細な規程を新設せずとも運用マニュアルレベルでの対応で足りる場合がある。
根拠法令の中心は、育児介護休業法第21条であり、事業主は労働者又はその配偶者の妊娠・出産等の申出と同様、家族介護の状況を把握した際に介護休業に関する制度等を個別に周知し、制度利用の意向を確認する措置を講じなければならない。同法第22条は、これに加えて雇用環境の整備として研修の実施や相談体制の整備等の措置を事業主に義務付けている。介護休業そのものについては同法第11条及び第15条が対象家族1人につき通算93日、3回までの分割取得を認め、介護休暇については同法第16条の5が年5日(対象家族2人以上は年10日)の取得を認めている。さらに同法第23条第3項は介護休業とは別枠での所定労働時間短縮等の措置を、第16条の9・第18条・第20条は所定外労働・時間外労働・深夜業の制限を、それぞれ事業主に義務付けている。
実務でよくある失敗の一つ目は、従業員から介護に関する相談があったにもかかわらず、法定の個別周知・意向確認を行わないまま放置し、従業員が制度の存在を知らずに離職してしまうことである。第5条・第6条のように周知・意向確認の期限と方法を明記することで、この失敗を防止できる。
二つ目の失敗は、介護休業と所定労働時間短縮等の措置を同一の制度と誤解し、介護休業を取得した従業員に対し短縮措置を重ねて適用しないという誤った運用を行うことである。第7条・第8条のように両制度が別枠であることを明記することで、誤解を防げる。
三つ目の失敗は、介護休業の取得や意向確認への回答を理由に人事評価や昇進で不利益に扱われたと従業員が受け止め、紛争化することである。第10条のように不利益取扱いの禁止を明記し、第6条のように意向確認の結果を人事評価の資料としない旨を明記することが対策となる。
介護両立支援制度の具体的な設計や助成金の活用については、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 雇用環境整備の措置(研修・相談体制・事例収集・方針周知)のうちいずれを講じるか定めたか
- [ ] 個別周知を行う期限とタイミングを定めたか
- [ ] 意向確認の方法と結果の取扱いを定めたか
- [ ] 介護休業の日数上限・分割回数(通算93日、3回)を正確に記載したか
- [ ] 介護休暇の日数(年5日・対象家族2人以上で年10日)を正確に記載したか
- [ ] 所定労働時間短縮等の措置が介護休業とは別枠であることを明記したか
- [ ] 所定外労働・時間外労働・深夜業の制限の請求手続を定めたか
- [ ] 不利益取扱いの禁止を明記したか
- [ ] 外部専門機関の紹介・連携方法を定めたか
- [ ] 復職後のフォローアップ面談の実施時期を定めたか