契約解除により引き渡した物や設備を元に戻す条件を定める合意書です。実施期限、費用負担、未実施の場合の代替措置を規定します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
解除に伴う原状回復合意書
第1部: 書式本文
【原状回復義務者商号・氏名】(以下「甲」という。)と【相手方商号・氏名】(以下「乙」という。)は、両者間の【契約名称、締結日:令和【 】年【 】月【 】日】(以下「原契約」という。)が令和【 】年【 】月【 】日をもって解除されたことに伴う原状回復について、次のとおり合意する(以下「本合意」という。)。
第1条(解除の確認) 甲及び乙は、原契約が民法第545条に基づき解除され、これにより甲が原状回復義務を負うことを相互に確認する。
第2条(原状回復の対象) 原状回復の対象となる物・設備は、次のとおりとする。 対象物:【設備名、数量、設置場所等】/現況:【 】
第3条(原状回復の方法) 甲は、次の方法により対象物を原契約締結前の状態に回復する。 【撤去、修復、代替物の設置等の具体的方法】
第4条(実施期限) 甲は、令和【 】年【 】月【 】日限り(以下「実施期限」という。)、前条の原状回復を完了する。
第5条(費用負担) 原状回復に要する費用は、【甲/乙/甲乙で次のとおり按分】の負担とする。按分の場合の割合及び算定根拠:【 】
第6条(未実施の場合の代替措置) 甲が実施期限までに原状回復を完了しないときは、乙は甲に代わって第三者に原状回復を行わせることができ、これに要した費用を甲に請求できる。
第7条(既払金との相殺) 乙は、前条の費用及び原契約に基づき甲に返還すべき金銭がある場合、甲に対する未払金と対当額で相殺できる。
第8条(検査及び完了確認) 原状回復完了後、乙は【 】日以内に対象物の状態を検査し、原契約締結前の状態に回復されたことを確認する。乙が異議を述べないときは、原状回復は完了したものとみなす。
第9条(原状回復により生じた損害) 原状回復作業に伴い、対象物以外の部分に損害が生じた場合、甲はその損害を賠償する。
第10条(清算条項) 甲及び乙は、本合意に定めるもののほか、原契約の解除及び原状回復に関し相互に債権債務が存在しないことを確認する。
以上を証するため、本合意書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
令和【 】年【 】月【 】日
甲(原状回復義務者) 住所:【 】 商号・氏名:【 】 印 乙(相手方) 住所:【 】 商号・氏名:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 原状回復義務者(甲)向け
A-1 第5条の修正例 「原状回復の費用は、対象物の経年劣化による損耗分を除き甲が負担するものとし、通常損耗分については乙が負担するものとする。」 一言解説: 原状回復義務者としては、契約締結からの経過期間中の通常の使用による劣化(通常損耗)まで全て自らの負担とされると過大な負担となるため、通常損耗分を区別して負担範囲から除外する修正が有効である。
A-2 第9条の修正例 「原状回復作業に伴い対象物以外の部分に生じた損害の賠償は、甲の故意又は過失による場合に限るものとし、通常の作業に伴い不可避的に生じる軽微な損傷は含まないものとする。」 一言解説: 原状回復義務者にとっては、作業に伴う不可避的な軽微な影響についてまで無過失責任を負わされることを避けるため、賠償責任の発生要件を故意又は過失に限定する修正が望ましい。
B節: 相手方(乙)向け
B-1 第4条の修正例 「実施期限までに甲が原状回復を完了しない場合、乙は甲に対し催告することなく直ちに第6条の代替措置を講じることができる。」 一言解説: 相手方としては、実施期限を徒過した後さらに催告を要するとされると原状回復の実現がいたずらに遅延するため、期限徒過と同時に代替措置に移行できるようにしておくことで、実効性を確保できる。
B-2 第8条の修正例 「乙が検査の結果、原状回復が不十分であると判断した場合、その具体的な指摘事項を書面で甲に通知し、甲は通知後7日以内に追加の是正措置を講じなければならない。」 一言解説: 相手方にとっては、「異議を述べないときは完了とみなす」という規定のみでは検査を怠った場合に不十分な原状回復が確定してしまうリスクがあるため、具体的な是正手続を設けておくことが重要である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、契約が解除されたことに伴い、契約当事者の一方が相手方から引渡しを受けていた物や設置した設備等を、契約締結前の状態に回復する義務を負う場面で使用する。賃貸借契約における明渡し、業務委託契約に基づき設置した機器の撤去、フランチャイズ契約終了時の店舗設備の撤去など、様々な契約類型で共通して問題となる。他方、対象となる物や設備が存在せず、金銭の精算のみが問題となる場合には、本書式ではなく精算合意書を用いる方が適切である。
法的根拠としては、民法第545条第1項が、契約の解除があったときは、各当事者はその相手方を原状に復させる義務を負う旨を定めており、本書式はこの原状回復義務の内容を具体化するものである。同条項は、原状回復義務の内容として金銭の返還についても言及しており(同条第2項)、物の返還にとどまらず、既払金の返還を伴う場合は本書式と精算条項を組み合わせて設計する必要がある。原状回復の範囲については、賃貸借契約に関する裁判例の蓄積から、通常損耗(経年劣化や通常の使用による損耗)については賃借人の原状回復義務の範囲に含まれないとする考え方が定着しており、国土交通省が公表する「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も実務上参考になる。この考え方は賃貸借以外の契約における原状回復義務の範囲を検討する際にも類推の参考となり得る。
よくある失敗の第一は、原状回復の対象範囲や方法を具体的に定めずに「原状に回復する」とだけ記載し、後日、回復の程度(完全な原状か、通常損耗を除いた回復か)について争いが生じることである。第2条・第3条のように対象物と方法を具体的に特定することが対策となる。第二に、実施期限を経過した場合の対応(代替措置)を定めずに放置し、原状回復がいつまでも実現しない例がある。第6条のように代替措置と費用請求権を明記すべきである。第三に、原状回復の完了確認の手続を定めず、義務者側が一方的に「完了した」と主張し、相手方が実際には不十分な状態のまま合意が履行されたとみなされてしまう例がある。第8条のように検査及び是正の手続を設けることが重要である。通常損耗の範囲や原状回復費用の算定については、対象物の性質や業界慣行によって異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 解除の効力発生日及び法的根拠(民法第545条等)を確認した
- [ ] 原状回復の対象物・設備を具体的に特定した
- [ ] 原状回復の方法(撤去・修復・代替設置等)を明記した
- [ ] 実施期限を対象物の性質に応じて合理的に設定した
- [ ] 費用負担の割合及び通常損耗の取扱いを明記した
- [ ] 実施期限徒過時の代替措置(第三者による実施と費用請求)を定めた
- [ ] 既払金との相殺の可否及び手続を明記した
- [ ] 原状回復完了の検査方法及び是正手続を定めた
- [ ] 作業に伴う付随的損害の賠償責任の範囲(故意・過失の要否)を明記した
- [ ] 清算条項により原状回復に関する債権債務の不存在を確認した