買主が現住居の売却を条件として新居を購入する買換え特約付きの売買契約書。民法第127条の解除条件の構成により、期限内に売却できない場合の白紙解除を定める。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
買換え特約付売買契約書
第1部: 書式本文
第1条(目的物件) 売主は、別紙物件目録記載の不動産(以下「本物件」という。)を買主に売り渡し、買主はこれを買い受ける。
第2条(売買代金) 売買代金は金〇〇円とし、買主は手付金〇〇円を契約締結時に、残代金を引渡日に支払う。
第3条(買換え特約) 本契約は、買主が現に所有する別紙記載の不動産(以下「買主旧居」という。)を〇年〇月〇日までに金〇〇円以上で売却できることを解除条件とする。
第4条(買主旧居の売却活動) 買主は、本契約締結後速やかに買主旧居の売却活動を開始し、その経過を売主に報告する。
第5条(解除条件の成就) 買主が前条の期限までに買主旧居を売却できなかったときは、本契約は当然にその効力を失う。
第6条(白紙解除の効果) 前条により本契約が効力を失った場合、売主は受領済みの手付金を無利息で速やかに買主に返還し、当事者は互いに違約金その他の名目による金銭の請求をしない。
第7条(期限の延長) 買主が売却活動を誠実に行っているにもかかわらず期限までに売却が完了しない場合、当事者間の協議により第3条の期限を延長することができる。
第8条(売主による代替買主への対応) 売主は、第3条の期限が到来するまでの間、本物件について他の買主候補と交渉することを妨げられないが、当該候補と契約を締結する場合は買主に事前に通知する。
第9条(引渡し及び所有権移転登記) 解除条件が不成就に確定しなかった場合、売主は残代金の支払と引換えに本物件を引き渡し、所有権移転登記に必要な書類を買主に交付する。
第10条(契約不適合責任) 引き渡された本物件が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は民法の定めるところにより履行の追完、代金減額、損害賠償又は解除を請求することができる。
第11条(合意管轄) 本契約に関する紛争は、本物件所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 売主向けの修正
A-1. 売主の対抗交渉権の明確化
修正後(第8条の代替):「売主は、第3条の期限までの間、本物件について他の買主候補と並行して交渉し、より有利な条件を提示する候補が現れた場合、買主に対し〇日以内に条件の見直し又は期限の前倒しを求めることができる。」 一言解説: 買換え特約は買主の事情に売主が長期間拘束される構造となるため、売主が機会損失を回避できるよう対抗交渉権を強化する修正である。
A-2. 拘束期間の上限設定
追加条文例:「第3条の期限は、いかなる場合も本契約締結日から〇か月を超えて延長しないものとする。」 一言解説: 協議による無制限の延長を避け、売主の不確実な拘束状態に上限を設ける修正である。
B. 買主向けの修正
B-1. 売却活動の最低限の基準の明確化
追加条文例:「買主は、少なくとも〇社以上の不動産仲介業者に買主旧居の売却を依頼し、その媒介契約書の写しを売主に提出することにより、売却活動の誠実な実施を証明する。」 一言解説: 買主が形式的にしか売却活動をしていないと売主から疑われることを防ぎ、期限延長交渉を円滑にするための修正である。
B-2. 解除条件不成就時の諸費用の取扱い明確化
追加条文例:「本契約が第5条により効力を失った場合、買主が既に支出したローン事前審査費用、測量費用等は各自の負担とし、相互に請求しない。」 一言解説: 白紙解除時の費用精算をめぐる紛争を防止するため、各自負担の原則を明記する修正である。
C. 仲介業者向けの修正
C-1. 重要事項説明における買換え特約のリスク説明の明記
追加条文例:「仲介業者は、買換え特約が民法第127条に基づく解除条件付合意であり、買主旧居の売却の成否によって契約の効力が左右されるリスクがあることを、売主及び買主双方に説明したことを確認する。」 一言解説: 買換え特約は一般の停止条件・解除条件の理解が不十分な当事者にとって誤解を招きやすいため、説明義務の履行を書面上確認しておく趣旨である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、買主が自己の現住居の売却代金を新居の購入資金に充当することを予定しており、現住居の売却が完了することを新居購入契約の存続の条件とする場面で用いる。買主が住宅ローンの実行のみを条件とする場合(いわゆるローン特約)は、条件の対象が異なるため別書式(住宅ローン特約付売買契約書)を用いるべきである。また、売主が早期の資金化を最優先する場合、買換え特約による長期の拘束は売主にとって不利になりやすく、採用の可否を慎重に検討すべきである。
根拠法令 民法第127条第2項は、解除条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を失う旨を定める。買換え特約は、買主旧居の売却という将来の不確実な事実の成否を条件とする解除条件付契約として構成されるのが一般的である。宅地建物取引業法上、買換え特約自体を直接規律する条文はないが、同法第35条の重要事項説明において契約の解除に関する事項の説明が求められており、買換え特約の内容及びリスクは重要な説明事項に含まれると解される。
実務でよくある失敗と対策 第一に、買主旧居の売却期限を明確に定めず、いつまでも契約の効力が確定しない状態が続いてしまう失敗がある。第3条・A-2のように期限及びその上限を明記することが重要である。第二に、買主の売却活動が実質的に行われているかを確認する手段がなく、売主が不安を抱えたまま長期間待たされる失敗がある。B-1のように売却活動の最低限の基準(媒介契約書の提出等)を設けることで防止できる。第三に、白紙解除時の諸費用(測量費、ローン事前審査費用等)の負担者を定めず、解除後に費用精算をめぐる紛争が生じる失敗がある。B-2のように各自負担の原則を明記しておくことが望ましい。
第四に、買換え特約の対象となる買主旧居について、当該旧居自体の売却契約に付されている引渡猶予やローン特約等の条件と、新居購入契約の決済スケジュールとの整合を確認しないまま契約し、決済日が二重に重なって資金繰りが破綻する失敗もある。買主旧居の売却契約が成立した後は、その決済予定日と新居の残代金支払期日との間隔を十分に確保できるよう、第7条の期限延長協議の中で調整することが望ましい。
買換え特約の設計は当事者双方の資金計画や市場環境によって最適な内容が異なるため、契約締結前に専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 買主旧居の売却予定価格及び売却期限を明確に定めたか
- [ ] 解除条件が不成就となった場合の手付金返還条項を明記したか
- [ ] 期限延長の可否及びその上限を定めたか
- [ ] 売主が並行して他の買主候補と交渉できる旨を明記したか
- [ ] 買主の売却活動の実施状況を確認する仕組み(媒介契約書の提出等)を設けたか
- [ ] 白紙解除時の諸費用の負担者を定めたか
- [ ] 買換え特約と住宅ローン特約を併用する場合、両条件の優先関係を整理したか
- [ ] 重要事項説明において買換え特約のリスクを買主に説明したか
- [ ] 買主旧居の売却先が決まった場合の決済時期の調整方法を確認したか
- [ ] 買主旧居の売却契約と新居購入契約の決済日の間隔を確認したか