労働基準法第20条に基づく解雇予告手当の金額と支払方法を通知する書面です。算定基礎となる平均賃金の計算根拠も併記します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
解雇予告手当支払通知書
第1部: 書式本文
解雇予告手当支払通知書
【労働者氏名】殿
【会社名】(以下「会社」という。)は、貴殿に対し、労働基準法第20条に基づき、次のとおり解雇予告手当を支払うことを通知する。
第1条(解雇の通知) 会社は、貴殿を【解雇日】をもって解雇する。本通知は労働基準法第20条第1項本文に基づく即時解雇に該当し、同日以降の就労は要しない。
第2条(解雇予告手当支払の根拠) 労働基準法第20条第1項は、使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前にその予告をしなければならず、予告をしない場合は30日分以上の平均賃金(以下「解雇予告手当」という。)を支払わなければならない旨定めている。会社は、貴殿に対する予告期間が【〇日】不足するため、不足日数分の解雇予告手当を支払う。
第3条(平均賃金の算定根拠) 解雇予告手当の算定基礎となる平均賃金は、労働基準法第12条の定めに従い、次のとおり算定した。 一 算定事由発生日 【解雇日の前日】 二 算定期間 【算定事由発生日以前3か月間】(【起算日】から【終期】まで) 三 算定期間中の総日数 【〇日】 四 算定期間中の賃金総額 【〇円】(基本給、諸手当を含み、臨時に支払われた賃金及び賞与を除く) 五 平均賃金額(賃金総額÷総日数) 【〇円】
第4条(解雇予告手当の金額) 前条により算定した平均賃金【〇円】に、不足予告日数【〇日】を乗じた【〇円】を解雇予告手当として支払う。
第5条(支払方法及び支払期日) 会社は、前条の解雇予告手当を【解雇日又は解雇日の翌営業日等具体的期日】までに、貴殿指定の銀行口座【金融機関名・支店名・口座番号】に振り込む方法により支払う。振込手数料は会社が負担する。
第6条(源泉徴収等) 解雇予告手当は所得税法上、退職所得として取り扱われる場合があり、法令に基づき所定の源泉徴収を行った上で支払う。
第7条(未払賃金・退職金との関係) 解雇予告手当は、未払賃金、退職金その他貴殿が受給資格を有する金員の支払を妨げるものではない。これらは別途、就業規則及び退職金規程に基づき精算する。
第8条(平均賃金の最低保障) 第3条の算定において、日給制・時給制等賃金総額を労働日数で除して得た額が、労働基準法第12条第1項ただし書の最低保障額を下回る場合は、当該最低保障額を平均賃金として採用する。
第9条(異議申立て) 貴殿が本通知の内容(解雇理由を除く手当額の算定等)に異議がある場合は、【通知受領後〇日以内】に会社【担当部署・連絡先】まで申し出るものとする。
第10条(照会先) 本通知に関する照会は、下記担当部署まで連絡されたい。 【担当部署名・氏名・連絡先】
以上
【会社名】 【代表者役職・氏名】 【通知年月日】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 会社の立場から
A-1 解雇理由の記載を最小限にする条項例 「会社は、貴殿を【解雇日】をもって解雇する。」とし、解雇理由の詳細な記載をあえて省略する場合がある。解雇予告手当支払通知は解雇理由証明書(労働基準法第22条)とは別の書面であり、理由の詳細開示は別途の請求に応じて行う運用とすることで、初期の紛争化リスクを抑えられる。ただし理由を全く示さないと不誠実な対応と受け取られる懸念もあるため、概括的な理由(例:「事業縮小に伴う人員整理のため」)程度は記載する例も多い。
A-2 支払期日を解雇日当日に前倒しする条項例 「解雇日当日までに支払う」と明記することで、労働基準法第23条(金品の返還)上の紛争リスクを予防し、予告手当の支払遅延による付加金請求(同法第114条)のリスクを回避する狙いがある。会社側は資金移動の実務上の余裕を確保しつつも、支払期日を明確に固定することが望ましい。
B節: 対象労働者の立場から
B-1 平均賃金の算定根拠開示を求める記載例 「平均賃金の算定期間、賃金総額の内訳(基本給・手当ごとの金額)、除外した賃金項目を明示すること」を会社に求める一文を追加する。労働者側から見れば、算定根拠のブラックボックス化は過少支払いの温床となり得るため、内訳の開示を明記させることが自衛策となる。
B-2 解雇理由証明書の同時交付を求める記載例 「本通知と併せて労働基準法第22条に基づく解雇理由証明書を交付されたい」との一文を挿入する。労働者側は解雇の効力を争う可能性を留保しつつ、予告手当の受領が解雇の有効性を認めたものではない旨を書面上明確にしておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式の解説
使う場面は、使用者が労働基準法第20条第1項の予告期間(30日)を確保できず、即時に労働契約を終了させる必要がある場合である。典型的には、重大な非違行為が発覚したが労働基準監督署長の解雇予告除外認定(同条第1項ただし書)を得るだけの明確な証拠がまだ整っていない場合や、事業の急激な縮小により即日の雇用終了が避けられない場合が想定される。
使ってはいけない場面としては、解雇そのものの効力に疑義がある場合(客観的合理的理由・社会通念上の相当性を欠く可能性が高い場合、労働契約法第16条)である。解雇予告手当の支払は解雇予告義務の履行方法にすぎず、解雇自体の有効性を担保するものではない。手当を支払えば自由に解雇できるという誤解に基づく運用は避けるべきである。また、懲戒解雇のように就業規則上、解雇予告手当を支払わない取扱いを予定している場合であっても、労働基準監督署長の除外認定を受けていない限り、原則として予告又は予告手当の支払義務が生じる点にも留意が必要である。
根拠法令は、労働基準法第20条(解雇の予告)、同法第12条(平均賃金)、同法第22条(退職時等の証明)、同法第114条(付加金)である。
よくある失敗として、第一に平均賃金の算定期間に賞与や臨時的賃金を含めてしまい過大又は過少な金額を算定するミスが挙げられる。対策として、第3条に算定対象賃金の範囲(基本給・諸手当に限る旨)を明記し、賞与等の除外項目を列挙する。第二に、支払期日を曖昧にしたまま通知してしまい、労働者から遅延を指摘されるケースがある。対策として、第5条のように具体的な期日と振込方法を確定的に記載する。第三に、解雇理由証明書の交付義務を失念し、別途トラブルになる例がある。対策として、第7条・第10条のように関連書面の交付手続を明確にしておく。
また、労働基準法第12条第2項は、賃金締切日がある場合、算定事由発生日の直前の賃金締切日から起算する旨定めている。給与計算期間が月末締めである会社が月の途中で解雇を行う場合、算定期間の起算日を誤ると平均賃金が過大又は過少に算定されるおそれがあるため、給与規程上の締切日を必ず確認したうえで第3条の算定期間を確定させる必要がある。さらに、育児休業期間、業務上の傷病による休業期間、使用者の責めに帰すべき事由による休業期間等は、同法第12条第3項により算定基礎となる期間及び賃金総額から除外される場合があるため、対象労働者の勤務実態に応じて除外期間の有無を個別に確認することが望ましい。パート・アルバイト等、日給・時給制の労働者については、同条第1項ただし書の最低保障額との比較を必ず行う必要がある点にも注意する。
いずれの場合も、平均賃金の算定方法や解雇の有効性判断は事案ごとに異なるため、個別事案は専門家に確認の上で最終的な通知内容を確定させることが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- 解雇日及び予告期間の不足日数を正確に計算したか
- 平均賃金の算定期間(直前3か月)が就業規則・給与規程と整合しているか
- 賃金総額から賞与・臨時的賃金を適切に除外したか
- 最低保障額(労働基準法第12条第1項ただし書)との比較を行ったか
- 支払期日・支払方法(振込先口座等)を具体的に記載したか
- 源泉徴収の要否・税務上の取扱いを確認したか
- 解雇理由証明書の交付予定・時期を検討したか
- 解雇そのものの有効性(労働契約法第16条)について別途検討済みか
- 労働基準監督署への解雇予告除外認定の要否を確認したか
- 通知の送付方法(内容証明郵便等)を検討したか
- 予告期間を一部確保できている場合、不足日数分のみの手当算定となっているか確認したか
- パート・アルバイト等雇用形態ごとの平均賃金算定方法の違いを確認したか
- 賃金締切日と算定期間の関係(賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日から起算)を確認したか
- 通知書の控えを社内で保存し、支払実績(振込明細等)と紐付けて管理する体制を整えたか