建築物の解体工事を請け負う際に発注者と締結する工事請負契約書。建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律の事前届出と、石綿の事前調査の実施を条項に反映する。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
解体工事請負契約書
第1部: 書式本文
解体工事請負契約書
【発注者名】(以下「甲」という。)と【解体工事業者名】(以下「乙」という。)は、下記建築物の解体工事(以下「本工事」という。)について、次のとおり請負契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(工事内容) 乙は、【解体対象建築物の所在地・構造・延べ床面積】記載の建築物を解体し、甲はその報酬を支払う。工事範囲、仮設、付帯工事の内容は別紙「工事仕様書」記載のとおりとする。
第2条(工期) 着工日を【年月日】、完了日を【年月日】とする。
第3条(請負代金) 請負代金は金【 】円(消費税別)とし、甲は乙に対し、契約時に【 】%、着工時に【 】%、完了引渡時に残額を支払う。
第4条(建設リサイクル法に基づく事前届出) 本工事の対象床面積が建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)の定める規模以上である場合、甲は工事着手の7日前までに都道府県知事等に対し分別解体等の計画その他の事項を届け出る。乙は当該届出に必要な工事内容・工程に関する情報を甲に提供し、届出に協力する。
第5条(石綿含有建材の事前調査) 乙は、本工事の着手前に石綿障害予防規則及び大気汚染防止法に基づき、石綿含有建材の使用の有無に関する事前調査を実施し、その結果を甲に報告する。調査の結果、法令の定める規模等に該当する場合、乙は所定の行政機関への報告を行う。石綿含有建材が確認された場合の除去等の措置及び費用負担については甲乙別途協議する。
第6条(分別解体の実施) 乙は、建設リサイクル法の定めるところにより、木材、コンクリート、金属等の特定建設資材を種類ごとに分別しながら解体作業を行う。
第7条(産業廃棄物の処理) 本工事に伴い生じる産業廃棄物の処理は、乙が排出事業者として自ら処理し、又は適法な許可を有する処理業者に委託する。処理委託を行う場合の契約は乙の責任と負担において別途締結する。
第8条(近隣対応・安全対策) 乙は、粉じん・騒音・振動等について近隣への影響を軽減する措置を講じるとともに、仮囲い等の安全対策を実施する。
第9条(地中埋設物等の取扱い) 解体工事中に地中埋設物、浄化槽、井戸その他契約締結時に予見できなかった障害物が発見された場合、乙は速やかに甲に報告し、撤去方法及び追加費用の負担について協議する。
第10条(追加工事) 甲の指示又は前条の障害物対応等により工事内容に変更が生じる場合、甲乙は追加代金及び工期の変更について書面で合意する。
第11条(引渡し及び契約不適合責任) 乙は本工事完了後、甲の立会いのもと完了確認を行い、更地を引き渡す。引渡し後に契約内容に適合しない状態(産業廃棄物の残置、地盤の不備等)が発見された場合、甲は乙に対し是正を求めることができる。
第12条(危険負担) 本工事完了前に天災その他両当事者の責めに帰さない事由により本工事の続行が不可能となった場合の処理は甲乙協議のうえ定める。
第13条(解除) 甲又は乙が本契約に違反し、相当期間を定めた催告後も是正されない場合、相手方は本契約を解除できる。
以上を証するため本契約書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
【締結日】 甲(発注者)【住所・氏名・印】 乙(解体工事業者)【住所・氏名・印】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 解体工事業者側が有利になる修正例
A-1. 石綿調査結果による追加費用の明確化 「事前調査の結果、石綿含有建材の除去等の措置が必要と判明した場合、乙はその作業内容及び追加費用の見積りを甲に提示し、甲の承諾を得て追加工事として実施する。」 一言解説: 事前調査後に判明する石綿対応費用を追加工事扱いとし、当初請負代金に含まれないことを明確にする。
A-2. 地中障害物発見時の工期延長権 「地中埋設物等の対応に要した日数は、乙の責めに帰さない限り工期に算入しない。」 一言解説: 予見不能な障害物対応による遅延について乙の責任を限定する。
A-3. 残置物撤去義務の甲負担化 「甲は、着工前までに解体対象建築物内の残置物(家財道具等)を撤去するものとし、乙は残置物の撤去義務を負わない。残置物が残存する場合の撤去費用は甲の負担とする。」 一言解説: 残置物処理をめぐる追加費用トラブルを未然に防ぐ。
B. 発注者側が有利になる修正例
B-1. 石綿事前調査結果の事前開示 「乙は、本工事着手前に石綿事前調査の結果を書面で甲に開示し、甲の確認を得たうえで着工する。」 一言解説: 調査結果を着工条件とすることで、調査の実施漏れを防止する。
B-2. 追加費用の上限設定 「地中埋設物等への対応による追加費用は、当初請負代金の【 】%を上限とし、これを超える費用については乙が甲に十分な説明を行ったうえで甲の書面同意を得るものとする。」 一言解説: 青天井の追加請求を防ぎ、予算管理を可能にする。
B-3. 分別解体状況の写真報告義務 「乙は、分別解体及び産業廃棄物の搬出状況について工程ごとに写真を撮影し、完了時に甲へ報告書を提出する。」 一言解説: 不法投棄等のリスクを可視化し、発注者の説明責任(排出事業者責任)を補完する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面 戸建て住宅、店舗、工場等の建築物全部又は一部を取り壊す解体工事について、発注者と解体工事業者との間で締結する場面で用いる。増改築を伴わない純粋な解体のみの工事を主に想定しており、解体後に新築工事を予定している場合は別途新築工事請負契約との整合を確認する必要がある。
使ってはいけない場面 石綿含有建材の使用が疑われる古い建築物について、事前調査を省略したまま着工することを前提とした契約運用は避けるべきである。調査を経ずに解体を進めることは労働安全衛生上及び大気汚染防止の観点から重大なリスクを伴う。
根拠法令 建設業法上、解体工事業を営むためには解体工事業に係る建設業許可(又は都道府県知事の解体工事業登録)が必要とされている。建設リサイクル法は、床面積等が一定規模以上の解体工事について、工事着手前の発注者による届出、及び施工者による分別解体等の実施を義務付けている。石綿障害予防規則及び大気汚染防止法は、解体工事の着手前に石綿含有建材の使用の有無に関する事前調査の実施を義務付けており、一定規模以上の工事については調査結果を行政の報告システムへ登録することが求められている。
実務でよくある失敗と対策 第一に、石綿事前調査を簡易な目視確認のみで済ませてしまい、後日石綿含有建材の存在が判明して工事が中断するケースがある。第5条及びB-1のように、調査結果の書面開示と着工条件化が対策になる。第二に、建設リサイクル法の届出を発注者・解体業者のいずれが行うかが曖昧なまま着工し、届出漏れが発覚するケースがある。第4条のように届出義務者(発注者)と協力義務(解体業者)を明記することが望ましい。第三に、地中埋設物の発見時に追加費用の見積りが後出しで提示され、金額をめぐる紛争になるケースがある。第9条・第10条及びB-2のような上限設定・協議手続の明文化が有効である。石綿含有建材の該非判断や届出の要否は建築物の構造・規模・所在自治体により異なるため、個別事案については専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 解体工事業者が建設業許可(解体工事業)又は解体工事業登録を有しているか確認したか
- [ ] 建設リサイクル法上の届出対象規模に該当するか確認したか
- [ ] 該当する場合、発注者による事前届出(着工7日前まで)の手続を確認したか
- [ ] 石綿含有建材の事前調査を着工前に実施することを条項化しているか
- [ ] 事前調査結果の報告方法及び対応(除去等)の費用負担を明記しているか
- [ ] 分別解体の実施方法及び産業廃棄物の処理方法を定めているか
- [ ] 地中埋設物等の予見不能な障害物発見時の追加費用・工期変更の手続を定めているか
- [ ] 残置物(家財道具等)の撤去責任の所在を明確にしているか
- [ ] 近隣対応・安全対策(仮囲い、粉じん対策等)を条項化しているか
- [ ] 引渡し後の契約不適合責任の内容・期間を定めているか