支給材の切削・塗装・組立など加工工程だけを委託する契約書。民法第632条の請負と下請法の製造委託規制を前提に、加工賃・歩留り・不良の負担を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
加工委託契約書
第1部: 書式本文
加工委託契約書
【委託者商号】(以下「甲」という。)と【受託者商号】(以下「乙」という。)は、甲が乙に対し支給する材料の切削・塗装・組立その他の加工工程を委託する取引について、以下のとおり加工委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的)
本契約は、甲が乙に対し、甲が支給する材料又は部品(以下「支給材」という。)を用いた加工業務を委託し、乙がこれを受託することに関する権利義務を定めることを目的とする。
第2条(定義)
(1)「支給材」とは、甲が乙に無償又は有償で貸与若しくは支給する原材料、部品、半製品をいう。 (2)「加工品」とは、支給材に乙が加工を施すことにより完成する製品をいう。 (3)「歩留り」とは、投入した支給材の数量に対する良品として完成した加工品の数量の割合をいう。
第3条(支給材の引渡し)
甲は、乙に対し個別契約で定める数量の支給材を、乙が指定する場所に引き渡す。支給材の所有権は甲に留保され、乙に移転しない。
第4条(支給材の管理責任)
- 乙は、支給材を善良な管理者の注意をもって保管し、本契約に基づく加工業務以外の目的に使用してはならない。
- 乙は、支給材の受入れ時に数量及び外観を確認し、不足又は損傷があるときは直ちに甲に通知する。
第5条(加工業務の内容)
乙は、個別契約及び甲が提供する加工仕様書に従い、支給材に対し切削・塗装・組立その他の加工を行い、加工品を完成させる。
第6条(加工賃の算定及び歩留り)
- 加工賃は、個別契約に定める加工品の良品数量に単価を乗じて算定する。
- 甲乙は、当該加工工程における標準的な歩留り率を別紙のとおり協議のうえ定める。
- 実際の歩留りが前項の標準歩留り率を下回った場合であっても、その原因が支給材自体の欠陥又は甲の指示内容にある場合、乙は当該原因に起因する不足分について責任を負わない。
第7条(納期及び検収)
- 乙は、個別契約に定める納期までに加工品を甲に納入する。
- 甲は、納入後【 】日以内に検査を行い、加工仕様書に適合しない加工品(以下「不良品」という。)があるときは、乙に通知する。
第8条(不良品の取扱い)
- 不良品の発生が乙の加工作業の瑕疵に起因する場合、乙は自己の負担で修補又は代品の製作を行う。
- 不良品の発生が支給材自体の欠陥に起因する場合、乙は甲に対しその旨を報告し、甲乙協議のうえ責任の分担を定める。
- 甲は、乙の責めに帰すべき事由によらない不良品について、乙に対し加工賃の減額又は返品を求めてはならない。
第9条(支給材の滅失又は毀損)
- 乙の保管中に支給材が滅失又は毀損した場合であって、乙の責めに帰すべき事由によるときは、乙は甲に対し当該支給材の市場価格相当額を賠償する。
- 天災その他乙の責めに帰すことができない事由による滅失又は毀損については、甲乙協議のうえ負担を定める。
第10条(端材及び副産物の帰属)
加工工程で生じる端材、切粉その他の副産物の所有権及び処分方法は別紙のとおりとする。
第11条(下請代金の支払期日)
甲は、下請代金支払遅延等防止法第2条の2の規定に従い、加工品の給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に定めた支払期日までに加工賃を支払う。
第12条(秘密保持)
甲及び乙は、本契約の履行を通じて知り得た相手方の営業上・技術上の秘密情報を、本契約の目的以外に使用し、又は第三者に開示してはならない。
第13条(契約期間及び解除)
本契約の有効期間は締結日から【 】年間とし、当事者は相手方に重大な契約違反があり催告後是正されない場合、本契約を解除できる。
第14条(反社会的勢力の排除)
甲及び乙は、自己が反社会的勢力に該当せず、反社会的勢力と関係を有しないことを表明し、保証する。
第15条(合意管轄)
本契約に関する紛争については、【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 加工を委託する側向け修正パターン
A-1. 第6条(加工賃の算定及び歩留り)の標準歩留り率を厳格化
「標準歩留り率を下回った場合、その原因の如何を問わず、乙は不足分の支給材相当額を甲に賠償する。」との修正を加え、歩留りに関する結果責任を乙に負わせる方向に修正する。ただし、支給材自体の欠陥に起因する歩留り低下についてまで一律に乙に負担させると、乙にとって受け入れがたい条件となるほか、下請代金の減額規制との関係でも問題を生じ得るため、原因調査の手続を併せて定めることが望ましい。
A-2. 第9条(支給材の滅失又は毀損)の乙の帰責推定を追加
「乙の保管中に生じた支給材の滅失又は毀損は、乙の責めに帰すべき事由によるものと推定する。」との推定規定を加え、甲の立証負担を軽減する。乙にとっては反証責任を負う不利な修正となる。
B. 加工を受託する側向け修正パターン
B-1. 第6条(加工賃の算定及び歩留り)に歩留り率の定期見直し条項を追加
「標準歩留り率は、支給材の材質・ロットの変動を踏まえ、四半期ごとに甲乙協議のうえ見直す。」との条項を追加し、支給材側の要因による歩留り変動を継続的に反映できるようにする。
B-2. 第8条(不良品の取扱い)に原因調査の分担手続を追加
「不良品の発生原因が乙の加工作業か支給材の欠陥かが明らかでない場合、甲乙は共同で原因調査を行い、調査費用は原因に応じて負担する。原因が判明しない場合は、甲乙が均等に負担する。」との手続を追加し、原因不明を理由に責任が一方的に乙へ帰属することを防ぐ。
B-3. 第10条(端材及び副産物の帰属)を乙帰属に修正
「加工工程で生じる端材、切粉その他の副産物の所有権は乙に帰属し、乙はこれを自由に処分できる。ただし、有価物として売却できる場合、その売却代金の一部を加工賃から控除する。」との修正を加え、副産物の処分実務に即した規定とする。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、甲が支給する材料や部品を前提として、切削・塗装・組立といった加工工程のみを乙に委託する取引で使用する。原材料の調達から製品の設計、完成品の製造まで一貫して受託者に委ねる取引の場合は、支給材を前提とする本書式ではなく、製造委託契約書や製造委託基本契約書の使用が適している。
法的性質としては、支給材に対する加工を通じて仕事の完成を約する点で、民法第632条以下の請負に関する規定が適用される。加えて、支給材を用いた加工が下請代金支払遅延等防止法第2条第1項の製造委託に該当する場合、同法上の各種規制(書面交付義務、支払期日の規制、下請代金の減額禁止等)が適用される。特に、歩留り不足を理由とする加工賃の一方的な減額は、実際の原因が支給材の欠陥にあるにもかかわらず行われた場合、下請法第4条第1項第4号が禁止する下請代金の減額に該当するおそれがある。また、乙の責めに帰すべき事由がない不良品について返品や修補費用の一方的な負担を求める行為は、同項第3号の返品制限や、通常支払われる対価に満たない代金を定める買いたたき(同項第5号)の問題にもつながり得る。
実務でよくある失敗として、第一に、標準歩留り率の算定根拠を明記しないまま、実際の歩留りが下回った場合に一律で加工賃を減額してしまうケースがある。第6条のように原因が支給材側にある場合の免責を明記することが対策となる。第二に、不良品の発生原因が乙の加工作業によるものか支給材の欠陥によるものかを切り分ける手続を定めていないため、原因不明のまま乙が一方的に負担を強いられるケースがあり、第8条のような原因調査の手続を設けることが有効である。第三に、支給材の滅失・毀損時の負担割合を定めずに保管させ、事故発生時に責任の所在を巡って紛争になるケースがあり、第9条のように帰責事由の有無に応じた負担ルールをあらかじめ明記することが望ましい。
なお、歩留りや不良品負担の実務慣行は業種・工程により大きく異なるため、個別事案については弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 支給材の範囲(原材料・部品・半製品)を具体的に特定したか
- [ ] 支給材の所有権が甲に留保されることを明記したか
- [ ] 標準歩留り率の算定根拠及び見直し手続を定めたか
- [ ] 歩留り不足の原因が支給材の欠陥による場合の免責を明記したか
- [ ] 不良品の発生原因を切り分ける調査手続を定めたか
- [ ] 乙の責めに帰すべき事由がない不良品について返品・減額を禁止する条項を置いたか
- [ ] 支給材の滅失・毀損時の負担割合を帰責事由の有無に応じて定めたか
- [ ] 端材・副産物の所有権及び処分方法を明記したか
- [ ] 加工賃の支払期日が給付受領後60日以内に収まっているか確認したか
- [ ] 支給材の受入れ時の数量・外観確認の手続を定めたか
- [ ] 加工仕様書の変更手続及び対価調整のルールを定めたか