身に覚えのない利用料の請求に対し、契約不成立により民法上の支払義務が存在しないことを明示し、以後の督促の停止を求める通知書です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
架空請求に対する不払通知書
第1部: 書式本文
本書は、身に覚えのない利用料等の請求を受けた者が、請求元に対して支払義務が存在しない旨を明示し、以後の督促行為の停止を求める通知書である。内容証明郵便および配達証明を付して送付することを想定する。以下の項目を過不足なく記載する。
- 表題:「通知書」または「不払通知書」と明記する。
- 発信日: 通知書を作成・発送する年月日。
- 差出人情報: 【差出人氏名】、【差出人住所】。個人の場合は氏名のみで足り、押印は任意だが実務上は記名押印を付す例が多い。
- 宛先情報: 【請求者の名称または氏名】、【請求者の住所】。所在地が不明確な業者からの請求である場合はその旨も記録しておく。
- 件名: 「貴社【請求書番号/管理番号】に基づく請求についての通知(不払の意思表示)」のように、対象となる請求を特定できる形で記載する。
- 請求の特定: 【受領日】に【書面・メール・SMS・電話】により、【請求金額】円の支払いを求める通知を受けた旨を具体的に記載する。請求書や督促状の番号、差出人名も可能な限り引用する。
- 事実関係の否認: 差出人は請求者との間で当該サービス・商品に関する契約を締結した事実がなく、申込みの意思表示および承諾の意思表示のいずれも行っていない旨を明記する。民法上、契約は申込みと承諾の意思表示の合致によって成立するものであり(民法第522条)、意思表示自体が存在しない以上、契約は不成立であって支払義務も発生しないという結論を明示する。
- 心当たりの不存在: 差出人が請求内容に係るウェブサイトの利用登録、資料請求、電話勧誘への応答等を行った記憶がないことを具体的に述べる。
- 支払義務の不存在の結論: 上記事実関係から、差出人には請求者に対する金銭支払義務が存在しないことを明記する。
- 今後の対応要求: 電話・訪問・書面等による督促行為を直ちに中止すること、差出人の個人情報を第三者に開示・提供しないことを求める。
- 法的措置の留保: 督促が継続する場合には、消費生活センターへの相談、警察への相談、その他法的手段の検討を行う可能性がある旨を予告として記載する(断定的な表現は避ける)。
- 添付資料欄: 受領した請求書・メール・SMSのコピー、着信履歴のスクリーンショットなど、請求を受けた事実を裏付ける資料を添付する旨を記載する欄を設ける。
- 差出方法の注記: 内容証明郵便(配達証明付)により送付した旨、または送付予定である旨を記載し、控えを保管する。
- 署名欄: 差出人の記名・押印欄を末尾に設ける。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 請求を受けた側の場合
架空請求を受けた個人・事業者が本通知書を送付する場合、まず「契約締結の事実がない」という一点を明確に、かつ簡潔に記載することが重要である。文例として「私は、貴社が主張する【サービス名】について、申込み・登録・利用のいずれの事実もなく、貴社との間で契約は成立しておりません。」と記載し、感情的な表現や謝罪の言葉は避ける。謝罪や「誤解を招いたなら」といった曖昧な表現は、こちらに何らかの落ち度があったとの誤解を与えかねないため使用しない。また、請求書に記載されたURLへのアクセスや、指定口座への一部支払い(いわゆる「様子見の少額支払い」)は、契約の存在を認めたと解釈されるおそれがあるため絶対に行わないよう、本文中では触れずとも実務上の注意点として理解しておく必要がある。連絡先については、電話番号を記載せず、書面でのみ回答を求める一文を加えることで、執拗な電話勧誘を避けられる。
B節: 請求してきた相手方の場合
請求を行った事業者側が、本人から契約不成立を理由とする不払通知を受けた場合、まず自社の記録(申込みフォームの入力ログ、IPアドレス、本人確認情報等)を精査し、契約成立の客観的証拠があるかを確認する必要がある。文例としては「貴殿からのご通知を受領し、社内記録を確認いたしましたところ、【年月日】に【入力情報】による申込みの記録が存在することを確認いたしました。つきましては、当該記録の写しを送付いたしますので、ご確認のうえ改めてご回答をお願いいたします。」のように、一方的に督促を継続するのではなく、証拠を示した上での再照会にとどめる対応が望ましい。証拠が存在しない、または本人特定ができない場合には、請求を撤回し、以後の督促を停止する旨を速やかに回答することが、特定商取引法や消費者契約法上のトラブル拡大を防ぐ観点からも重要である。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、契約締結の記憶がない相手方から金銭請求を受けた場合に、支払義務がないことを明確に意思表示し、督促の停止を求める場面で使用する。逆に、実際に商品を購入・サービスを利用した記憶があるが単に支払いを免れたいという場合や、クーリング・オフ期間内の解約を主張したい場合には、本書式ではなく契約の効力や解約に関する別の書式(クーリング・オフ通知書等)を用いるべきであり、本書式を安易に流用してはならない。
法的根拠としては、契約が申込みと承諾の意思表示の合致により成立するとする民法第522条が中心となる。意思表示を行った事実がない以上、契約は不成立であり、民法上の債務も発生しない。また、電子消費者契約に関する特例を定める電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律(いわゆる電子契約法)や、事業者による不当な勧誘・誤認惹起的な表示を規律する消費者契約法、通信販売等の取引を規律する特定商取引法も、請求の適法性を検討する際に参照されることがある。
実務でよくある失敗として、第一に、身に覚えのない請求に驚いて指定口座へ少額を支払ってしまい、結果として「支払意思のある相手」とみなされ、その後さらに執拗な督促を招くケースが挙げられる。対策として、通知書の中で「一切の支払いを行っていない」事実を明記し、今後も支払う意思がないことを明確にする。第二に、請求元のウェブサイトに記載された「解約はこちら」等のリンクや電話番号にアクセス・連絡してしまい、個人情報や在籍確認情報を相手に渡してしまうケースがある。通知書は書面(郵便)でのみ完結させ、相手方の誘導するウェブサイトや電話には応じない方針を徹底する。第三に、感情的な抗議文になってしまい、かえって相手方に付け入る隙を与えてしまう例も多い。事実の否認と要求のみを簡潔に記載し、脅迫的・侮辱的な表現を避けることが望ましい。
なお、架空請求の態様によっては刑法上の詐欺罪・恐喝罪に該当し得る場合もあるが、本書式はあくまで民事上の支払義務の不存在を通知するものであり、刑事告訴等を検討する場合は別途、警察や弁護士への相談が必要である。個別の事案における契約の成否や対応方針については、必ず弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 請求元から実際に受領した書面・メール・SMS等の現物または写しを保管しているか
- [ ] 請求書番号・管理番号など、請求を特定できる情報を通知書に記載したか
- [ ] 契約締結や申込みを行った記憶が本当にないかを改めて確認したか
- [ ] これまでに指定口座への支払いを一切行っていないことを確認したか
- [ ] 請求元のウェブサイトのリンクや記載された電話番号に連絡していないことを確認したか
- [ ] 通知書の宛先(名称・住所)が請求書等の記載と一致しているか
- [ ] 内容証明郵便・配達証明での送付を予定し、控えを保管する準備をしているか
- [ ] 感情的・侮辱的な表現が含まれていないか本文を見直したか
- [ ] 今後の督促停止と個人情報の第三者提供禁止を明確に要求しているか
- [ ] 差出人の氏名・住所・押印(または記名)に誤りがないか
- [ ] 督促が継続した場合の相談先(消費生活センター等)を把握しているか