環境マネジメントシステムの最上位文書となる環境方針の文例です。汚染の予防、法的要求事項の遵守、継続的改善の約束を示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
環境方針(ISO14001対応)
第1部: 書式本文
環境方針
【会社名】は、事業活動が環境に与える影響を認識し、持続可能な社会の実現に貢献するため、以下のとおり環境方針を定める。
第1項(基本理念) 1. 当社は、事業活動全般において環境負荷の低減に努め、環境保全と事業活動の両立を図る。
第2項(法令等の遵守) 2. 当社は、事業活動に適用される環境関連法令、条例、業界の自主基準その他当社が同意するその他の要求事項を遵守する。
第3項(汚染の予防) 3. 当社は、大気、水質、土壌等への汚染を未然に防止するための措置を講じる。
第4項(継続的改善) 4. 当社は、環境マネジメントシステムの有効性を継続的に改善し、環境目標及び目的を設定してその達成状況を定期的にレビューする。
第5項(重点取組事項) 5. 当社は、次の事項を重点的に取り組む。 (1) 温室効果ガス排出量の削減 (2) 廃棄物の削減及びリサイクルの推進 (3) 資源・エネルギーの効率的な使用 (4) 化学物質の適正管理 (5) 生物多様性への配慮
第6項(取引先との協働) 6. 当社は、サプライヤーその他の取引先に対し、本方針の趣旨を理解した取組を求める。
第7項(教育・啓発) 7. 当社は、全従業員に対し本方針を周知するとともに、環境保全に関する教育を実施する。
第8項(情報の開示) 8. 当社は、本方針及び環境保全活動の状況を、利害関係者からの求めに応じて開示する。
第9項(体制) 9. 当社は、環境管理責任者を任命し、本方針の実行、環境マネジメントシステムの構築・運用・維持に関する責任と権限を付与する。
第10項(見直し) 10. 本方針は、事業内容、法令の改廃その他の状況の変化に応じて、少なくとも年1回見直しを行い、見直しの経緯及び改定履歴を記録として保存する。
第11項(緊急事態への対応) 11. 当社は、環境事故その他の緊急事態が発生した場合に備え、あらかじめ対応手順を整備し、定期的な訓練を実施する。
制定日:【20〇〇年〇月〇日】 【会社名】 代表者:【役職・氏名】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 経営者が対外公表用として策定する場合
第8項を拡充し、「本方針は当社ウェブサイトにおいて常時公開し、統合報告書等においても言及する」との公表方法を具体化する。ISO14001審査や取引先の調達基準対応のために対外説明力を高める修正です。
B節: 従業員向けに行動指針として周知する場合
第7項に「本方針の内容を、入社時研修及び年1回の全社研修において周知徹底し、理解度確認テストを実施する」との具体的な教育プロセスを追加する。理念にとどまらず現場の行動につなげるための書き換えです。
C節: サプライヤーへの展開を意識する場合
第6項を「サプライヤー行動規範の制定及び定期的な調査(サプライヤー環境調査票等)の実施を通じて、取引先の取組状況を確認する」との具体的な運用条項に修正する。
D節: 中小企業がISO14001認証取得を目指す場合
第9項に「環境管理責任者に加え、内部監査員を選任し、内部監査及びマネジメントレビューの実施サイクル(年1回以上)を定める」との体制強化条項を追加する。認証審査で求められる体制整備を反映した修正です。
E節: 特定の事業拠点・工場のみに適用する場合
前文に「本方針は【工場名・事業所名】における事業活動に適用する」との適用範囲限定を追加し、全社方針とは別に拠点別方針として運用する場合の位置づけを明確にする。
F節: M&A後にグループ方針へ統合する場合
第10項に「本方針は統合後【1】年以内にグループ環境方針との整合性を確認し、必要な改定を行う」との移行条項を追加する。買収先企業が独自の環境方針を有していた場合の統合プロセスを明確にするための書き換えです。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、企業がISO14001(環境マネジメントシステム)の認証取得又は運用にあたり、その最上位文書として環境方針を策定する場面で使用します。ISO14001規格では、トップマネジメントが環境方針を確立し、組織内に周知し、利害関係者が入手可能な状態にすることが要求事項として定められています。逆に、実態を伴わない抽象的な宣言のみを掲げ、実際の環境マネジメントシステムの運用(内部監査、是正処置等)が伴わない場合、認証審査で不適合の指摘を受けるだけでなく、対外的な信頼性を損なうリスクがあります。
本方針自体は法令上の作成義務があるものではなく、ISO14001という民間の国際規格に基づく任意の枠組みですが、方針の内容として「法令等の遵守」を掲げる以上、環境基本法の基本理念や、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、廃棄物処理法、省エネ法、温対法など事業活動に適用される個別法令との整合性を保つ必要があります。方針に掲げた内容と実際の運用に乖離がある場合、規約上の問題にとどまらず、取引先や投資家に対する誤解を招く表示として問題視される可能性もあるため注意が必要です。
よくある失敗として、第一に、環境方針を制定したものの見直しが行われず、事業内容の変化や法令改正に対応できていないケースがあります。第10項のように定期的な見直しを条項化することが対策です。第二に、重点取組事項が抽象的すぎて、実際の環境目標・目的との紐付けができないケースです。第5項のように重点取組事項を具体的な項目として列挙し、別途定める年度環境目標と連動させることが有効です。第三に、方針の周知が経営層・一部部署にとどまり、全従業員への浸透が図られていないケースです。第7項のように教育・啓発の実施方法を明記することが望まれます。方針に基づく取組が実際に法令遵守として十分かどうかは、業種や事業内容によって個別に判断されるため、個別事案は専門家に確認することをお勧めします。使ってはいけない場面としては、実際には環境負荷低減の取組がほとんど実施されていないにもかかわらず、対外的な評価向上のみを目的として方針文書だけを整備する、いわゆる体裁のみの整備が挙げられます。方針と実態の乖離は、グリーンウォッシュと評価されるリスクや、景品表示法上の優良誤認表示に該当するリスクにもつながりかねないため、方針の各項目には対応する具体的な取組や目標値を紐づけて管理することが望まれます。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 経営トップの承認・署名を得ているか
- [ ] 適用範囲(全社・特定拠点)を明確にしたか
- [ ] 法令遵守の対象となる主要な環境関連法令を洗い出したか
- [ ] 重点取組事項が具体的で測定可能な内容になっているか
- [ ] 環境管理責任者及び体制(内部監査員等)を任命したか
- [ ] 従業員への周知・教育方法を定めたか
- [ ] 取引先への展開方法(調達基準・行動規範との連携)を検討したか
- [ ] 対外開示の方法(ウェブサイト・報告書等)を定めたか
- [ ] 年1回以上の見直しサイクルを定めたか
- [ ] 環境目標・目的との連動を確認したか
- [ ] 内部監査・マネジメントレビューとの整合性を確認したか(ISO14001認証取得・維持の場合)
- [ ] 方針の各項目に対応する具体的な取組・目標値が存在するか確認したか
- [ ] グループ会社・買収先企業がある場合、方針の統合方針を検討したか