家庭教師センターが講師を家庭に派遣する際の契約書。特定商取引法の特定継続的役務提供に当たる家庭教師契約の書面交付義務とクーリングオフを反映。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
家庭教師派遣契約書
第1部: 書式本文
家庭教師派遣事業者【事業者名】(以下「甲」という。)と、依頼者【保護者氏名】(以下「乙」という。)は、甲が乙の子女【生徒氏名】(以下「丙」という。)の自宅その他乙の指定する場所に登録講師を派遣し、個別指導を行うことに関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 甲は、甲に登録する講師(以下「講師」という。)を乙の指定する場所に派遣し、丙に対する個別指導(以下「本役務」という。)を提供する。
第2条(講師の選定及び紹介) 甲は、乙の希望する科目、レベル及び条件を踏まえ、講師を選定し、体験指導を経て乙丙の同意を得た上で継続的な派遣を開始する。講師の変更を希望する場合、乙は甲に申し出るものとする。
第3条(派遣の実施方法) 講師の派遣日時、指導場所及び1回当たりの指導時間は、甲乙間で別途合意する指導予定表のとおりとする。講師は甲の指示に基づき乙の指定場所において指導を行う。
第4条(受講期間及び対価) 本役務の提供期間は【〇〇】か月間とし、乙は甲に対し、入会金【〇〇】円及び指導料【〇〇】円(1回当たり)を、甲所定の請求方法に従い支払う。
第5条(概要書面及び契約書面の交付) 本役務が特定商取引法の特定継続的役務提供に該当する場合、甲は同法第42条に定める概要書面及び契約書面を、それぞれ所定の時期に乙に交付する。
第6条(クーリング・オフ) 乙は、契約書面を受領した日から起算して8日を経過するまでの間、書面又は電磁的記録により本契約を解除することができる。この場合、甲は指導未実施分の対価その他の金銭を請求しない。
第7条(中途解約及び精算) 乙は、本役務の提供開始後も将来に向かって本契約を解除できる。この場合、甲は、既に実施した指導に対応する対価及び関連法令上の上限内の解約手数料を除き、既払金を返還する。
第8条(講師の欠勤・代替及び振替) 講師の急病その他やむを得ない事由により指導が実施できない場合、甲は代替講師の派遣又は振替日程の調整に努める。甲の都合により指導が実施されなかった回については、対価を請求しない。
第9条(直接契約の制限) 乙及び丙は、本契約期間中及び終了後【1】年間、甲を介さずに講師と直接に指導契約を締結し、又は指導料を直接授受してはならない。これに違反した場合、乙は甲に対し、あらかじめ定める紹介手数料相当額を支払う。
第10条(講師の地位) 講師は甲との業務委託契約に基づき本役務を提供する者であり、甲の被用者ではない。ただし、甲は講師の選定及び指導内容の適切性について、乙に対し一定の管理責任を負う。
第11条(家庭内での事故等の責任) 指導実施中に丙又は乙の自宅設備等に生じた損害については、講師又は甲の故意若しくは過失に基づくものを除き、甲は責任を負わない。甲は、指導中の事故に備え、必要に応じて損害保険への加入その他の措置を講ずるよう努める。
第12条(個人情報の取扱い) 甲は、丙の学習状況、成績等の個人情報を、指導及び保護者への報告の目的の範囲内で取り扱い、講師に対しても目的外利用をさせない。
第13条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己又は関係者が暴力団等反社会的勢力に該当しないことを表明し、これに該当した場合、相手方は催告なく本契約を解除できる。
第14条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、甲の本店所在地を管轄する裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 家庭教師派遣事業者(甲)向けの修正
A-1. 講師の交通費・遠隔地派遣費用の別建て請求
修正後:「乙が甲の標準エリア外の場所を指導場所として指定した場合、甲は、指導料とは別に、講師の交通費及び移動時間に応じた加算料金を乙に請求することができる。」 一言解説: 講師の自宅を起点に派遣する業態では移動コストが個別に変動するため、対価構成をあらかじめ切り分けておく修正である。
A-2. 講師への直接連絡の原則禁止と緊急連絡窓口の一本化
修正後:「乙は、指導日程の変更その他の連絡事項について、原則として甲の事務局を通じて行うものとし、講師の個人連絡先を用いた直接連絡は緊急時に限る。」 一言解説: 派遣事業者が講師と保護者の間に立つ管理体制を維持し、第9条の直接契約制限の実効性を確保するための修正である。
B. 依頼者(乙)向けの修正
B-1. 講師変更希望に対する迅速な代替提案の確保
修正後:「乙が丙との相性その他の理由により講師の変更を申し出た場合、甲は申出を受けた日から【2】週間以内に代替講師の候補を提示するよう努める。」 一言解説: 個別指導では講師と生徒の相性が指導効果を左右するため、変更希望への対応期限を明記し、保護者側の交渉力を確保する修正である。
B-2. 交通費等の加算料金に関する事前見積りの明示
修正後:「甲は、第3条の指導予定表を確定する前に、交通費等の加算料金が発生する場合はその見込額を乙に書面又は電磁的方法により示すものとする。」 一言解説: 遠隔地派遣に伴う追加費用が事後的に判明してトラブルとなることを避けるため、事前開示を義務づける保護者側の修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面
本書式は、事業者が登録講師を家庭その他の指定場所に派遣し、対面での個別指導を行う業態において使用する。教室に生徒が通う学習塾や、オンラインで完結する講座には、指導実施の場所及び当事者関係が異なるため適さない。
根拠法令
家庭教師の役務は、特定商取引法第41条の特定継続的役務提供の指定役務に含まれ得るため、期間及び対価総額が政令の定める要件を満たす場合、同法第42条の概要書面・契約書面の交付義務、第48条のクーリング・オフ、第49条の中途解約時の損害賠償等の額の制限がそれぞれ適用され得る。加えて、講師と派遣事業者との関係が業務委託か雇用かにより、労働関係法令の適用の有無が異なり得る点にも留意が必要である。
実務でよくある失敗と対策
第一に、講師個人の連絡先を保護者に開示したまま直接契約制限条項のみを設け、実効性が乏しくなる例がある。連絡経路の一本化を運用面でも徹底することが望ましい。第二に、交通費等の加算料金を契約書に明記せず、事後に高額請求となって紛争化する例がある。加算の発生条件と概算額を事前に示す運用が有用である。第三に、講師の業務委託契約上の地位を曖昧にしたまま、指導中の事故について派遣事業者が一切責任を負わない旨のみを定め、消費者契約法上の不当条項規制との関係で問題視されるおそれがある例もある。第四に、体験指導と本契約とを明確に区別せず、体験指導のみで発生した費用の精算方法が不明確なまま本契約の中途解約条項を準用してしまい、返金の要否をめぐって保護者との認識がずれる例もある。体験指導の位置付け(有償か無償か、本契約への移行手続)は別途明記しておくべきである。個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本役務が特定商取引法上の特定継続的役務提供の要件(期間・金額)を満たすか確認したか
- [ ] 概要書面と契約書面の交付時期を区別して運用しているか
- [ ] クーリング・オフの起算日及び対象範囲を正確に記載したか
- [ ] 中途解約時の精算方法及び上限が法令の趣旨に沿っているか
- [ ] 講師の欠勤・代替・振替に関する取扱いを明記したか
- [ ] 直接契約制限条項の実効性を確保する運用(連絡窓口の一本化等)を整えたか
- [ ] 講師の法的地位(業務委託か雇用か)を整理したか
- [ ] 指導中の事故等に関する責任分担及び保険加入の要否を検討したか
- [ ] 交通費等の加算料金の発生条件と開示方法を定めたか
- [ ] 個人情報の取扱い及び講師への周知方法を定めたか
- [ ] 体験指導の位置付け(有償・無償、本契約への移行手続)を本契約と区別して定めたか