扶養家族への手当を支給する企業向け。対象家族の範囲と届出手続を定め、パートタイム・有期雇用労働法第8条の不合理な待遇差の禁止に配慮した設計です。

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家族手当規程

第1部: 書式本文

第1条(目的) 本規程は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)の就業規則第【 】条に基づき、労働者が扶養する家族に対して支給する家族手当の支給対象、支給額及び届出手続を定めることを目的とする。

第2条(適用範囲) 本規程は、会社に雇用される正社員のうち、次条に定める対象家族を有する者に適用する。契約社員、パートタイム有期雇用労働者への適用範囲は、第2部の書き換えパターンを踏まえ、会社が別途定めるところによる。

第3条(対象家族の範囲) 家族手当の支給対象となる家族(以下「対象家族」という。)は、労働者が主として生計を維持する者であって、次の各号のいずれかに該当する者とする。 (1) 配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。) (2) 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子(以下「子」という。) (3) 前号の年齢を超えるが、心身の障害等により労働により生計を立てることが困難であると会社が認めた子 (4) 労働者と同居し、主として労働者の収入により生計を維持している父母及び祖父母のうち、60歳以上の者

第4条(生計維持要件) 対象家族として認定するためには、当該家族の年間収入が【130万】円未満であり、かつ、労働者の収入によって生計の主要部分を維持されていることを要する。

第5条(支給額) 家族手当は、対象家族1人につき、次の区分による月額を支給する。 (1) 配偶者:月額【15,000】円 (2) 子(第1子及び第2子):1人につき月額【10,000】円 (3) 子(第3子以降):1人につき月額【5,000】円 (4) 父母・祖父母:1人につき月額【5,000】円

第6条(支給対象となる雇用形態) 1 家族手当は、雇用形態の名称にかかわらず、対象家族を有し、かつ生計維持要件を満たす労働者に支給する。 2 会社は、家族手当の支給対象を正社員に限定し、又はフルタイム勤務者に限定する等、雇用形態によって支給の有無若しくは支給額に差異を設ける場合、パートタイム・有期雇用労働法第8条及び第9条に照らし、当該待遇差が不合理なものとならないよう、支給の趣旨・目的に照らした検討を行う。

第7条(届出手続) 1 労働者は、対象家族を有するに至ったとき、又は対象家族に異動(出生、婚姻、収入の変動、同居・別居の変更等)が生じたときは、事由発生日から【2週間】以内に「家族手当認定・異動届」を人事部門に提出しなければならない。 2 会社は、必要に応じて対象家族の収入を証明する書類(源泉徴収票、非課税証明書等)の提出を求めることができる。 3 労働者が正当な理由なく前2項の届出を怠り、又は虚偽の届出を行った場合、会社は当該労働者に支給した家族手当の全部又は一部の返還を求めることができる。

第8条(支給開始及び終了の時期) 1 家族手当は、対象家族となった日の属する賃金計算期間の翌計算期間から支給を開始する。ただし、出生等やむを得ない事由による届出遅延について会社が相当と認める場合は、事由発生日の属する賃金計算期間から支給することができる。 2 対象家族に該当しなくなった場合、当該事由が生じた日の属する賃金計算期間の翌計算期間から支給を終了する。

第9条(重複支給の禁止) 夫婦がいずれも会社の労働者である場合、同一の対象家族について家族手当の支給を受けられるのは、いずれか一方の労働者に限る。いずれの労働者が受給するかは、労働者間の協議に基づき会社に届け出るものとする。

第10条(定期確認) 会社は、毎年【1回】、対象家族の現況について労働者に確認を求め、生計維持要件を満たしているかを確認する。

第11条(不正受給への対応) 虚偽の届出その他不正な方法により家族手当の支給を受けた労働者に対しては、就業規則の懲戒規定に基づき処分を行うことがある。

第12条(改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じ、労働者の過半数を代表する者の意見を聴いたうえで行う。

附則 本規程は【20〇〇年〇月〇日】から施行する。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 正社員限定支給向け

家族手当の支給対象を正社員に限定する制度設計を維持する場合、単に「正社員に限る」と定めるだけでは待遇差の不合理性を問われるリスクが残るため、限定の趣旨を条文上に説明する書き換えが有効である。

修正条文例(第6条の書き換え): 「1 家族手当は、無期雇用かつフルタイム勤務であり、転居を伴う配転及び長期的な雇用継続を前提とする正社員に対して支給する。 2 家族手当は、長期継続雇用を前提とする人材の生活費を補助し、転勤等の負担を受け入れる正社員の定着を図る目的で設計されたものであり、有期雇用労働者及び短時間労働者には適用しない。ただし、有期雇用労働者又は短時間労働者であっても、無期転換後にフルタイム勤務かつ正社員と同様の配転が予定される者については、正社員への転換時点から本手当の対象とする。」

一言解説: 支給目的(生活費補助・長期雇用への動機付け・転勤負担への対応)を条文上に明記することで、パートタイム・有期雇用労働法第8条が求める「待遇の性質・目的に照らした不合理性の判断」に対応しやすくなる。目的を示さず単に雇用区分名だけで区別する規定は、不合理性を争われた際に説明が困難になりやすい。

B節: 全雇用形態支給向け

契約社員やパートタイム労働者にも家族手当を支給する制度設計に切り替える企業向けの書き換えである。

修正条文例(第6条の書き換え): 「1 家族手当は、雇用形態にかかわらず、所定労働時間が週【20】時間以上であり、対象家族を有し、かつ生計維持要件を満たす全ての労働者に支給する。 2 短時間労働者に対する支給額は、第5条に定める額に、当該労働者の所定労働時間を正社員の所定労働時間で除して得た比率を乗じて算定する。」

一言解説: 生活費補助という手当の性質は雇用形態によって左右されにくいという考え方に立ち、支給対象を拡大する例である。所定労働時間に応じた按分支給とすることで、フルタイム正社員との均衡を図りつつ、パートタイム・有期雇用労働法第8条が求める均衡待遇に配慮した設計としている。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説(解説)

家族手当規程の導入が適する場面は、既に家族手当を支給しているが対象家族の範囲や届出手続が明文化されていない企業、あるいは雇用形態間の待遇差を見直すために手当制度全体を点検している企業である。反対に、家族構成にかかわらず一律の生活手当や住宅手当に統合する方針をとる企業では、家族手当という個別の手当類型を維持すること自体が制度の複雑化を招く場合があり、他の手当への統合を含めた検討が必要になる。

本規程で最も重視すべき法的論点は、パートタイム・有期雇用労働法第8条が定める不合理な待遇差の禁止である。同条は、短時間労働者及び有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して、通常の労働者との間に不合理な相違を設けてはならないと定めている。家族手当は、扶養家族を有する労働者の生活費を補助する趣旨で支給されることが一般的であり、この生活費補助という性質は、労働者が正社員か有期雇用労働者かによって当然に異なるものではないと評価されやすい。したがって、家族手当の支給対象を正社員に限定する場合には、単なる雇用区分の相違を理由とするのではなく、当該手当の目的(長期継続雇用への動機付け、転勤等の負担への対応等)に照らして限定に合理的な理由があることを説明できる設計としておく必要がある。同法第9条は、通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者(職務内容及び配置の変更範囲が通常の労働者と同一である者)について、待遇について差別的取扱いをすることを禁止しており、正社員と同様の職務・配置転換を予定する契約社員等が存在する場合は、第9条の適用対象となり得る点にも留意が必要である。

実務上よくある失敗としては、第一に、家族手当を「正社員のみ」と定めるだけで支給目的を条文上説明せず、待遇差の不合理性を争われた際に説明ができない例である。第2部A節のように、支給の趣旨・目的を条文に明記し、無期雇用への転換時の取扱いまで整理しておくことが対策となる。第二に、対象家族の範囲(第3条)や生計維持要件の収入基準(第4条)を定めず、扶養控除等申告書の記載を援用するだけの運用にとどめ、税法上の扶養と支給要件が混同されて紛争化する例である。第4条のように、独立した収入基準を明記しておくことが望ましい。第三に、届出を怠った労働者への家族手当を長期間漫然と支給し続け、後日過去分の返還を求めてトラブルとなる例である。第7条第3項の返還請求規定と、定期確認の仕組み(第10条)を組み合わせることで、支給の適正化と紛争予防を図ることができる。

家族手当の支給対象を雇用形態によって区別することの適法性は、職務内容、配置転換の実態、手当導入の経緯等を踏まえた個別判断を要するため、制度設計にあたっては弁護士等の専門家に個別事案として確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト(チェックリスト)

  • [ ] 対象家族の範囲(配偶者・子・父母等)と年齢・同居要件を明確に定めたか
  • [ ] 生計維持要件の収入基準を、税法上の扶養控除基準と区別して独自に定めたか
  • [ ] 家族手当の支給目的(生活費補助、長期雇用への動機付け等)を条文上に明記したか
  • [ ] 正社員限定支給とする場合、パートタイム・有期雇用労働法第8条を踏まえた合理性の説明を用意したか
  • [ ] 通常の労働者と同視すべき有期雇用労働者が存在する場合、同法第9条との関係を確認したか
  • [ ] 全雇用形態に支給を拡大する場合、所定労働時間に応じた按分方法を定めたか
  • [ ] 届出義務(認定・異動届)の提出期限と必要書類を明記したか
  • [ ] 虚偽届出・届出遅延時の返還請求及び懲戒処分の根拠を規定したか
  • [ ] 夫婦が共に労働者である場合の重複受給禁止のルールを定めたか
  • [ ] 支給開始・終了の基準日(賃金計算期間との関係)を明確にしたか
  • [ ] 対象家族の現況を定期的に確認する仕組みを設けたか