中古住宅の売買で売主の契約不適合責任を免除・期間限定する特約条項。民法第562条から第566条と第572条の免責制限、宅地建物取引業法第40条の規制に対応。

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契約不適合責任免責特約

第1部: 書式本文

第1条(前提) 本特約は、売主甲及び買主乙が締結する別紙物件目録記載の中古住宅に関する売買契約(以下「原契約」という。)における売主の契約不適合責任の範囲について定めるものである。

第2条(契約不適合責任の原則) 引き渡された本物件が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、乙は甲に対し、民法第562条から第564条までの定めるところにより履行の追完、代金減額、損害賠償又は契約の解除を請求することができる。

第3条(免責の対象) 前条にかかわらず、甲は、次の各号に掲げる事項については契約不適合責任を負わない。(1)引渡し時に別紙「物件状況等報告書」に記載された事項 (2)経年劣化又は自然損耗によるもの (3)本契約締結前に乙が現地確認において認識し、又は容易に認識し得た事項

第4条(責任期間の限定) 甲が負う契約不適合責任は、雨漏り、シロアリの害、建物構造上主要な部分の腐食又は給排水管の故障に限定し、引渡日から3か月間存続する。ただし、乙が当該期間内に契約不適合の事実を発見し、甲に通知したときに限る。

第5条(免責の適用除外) 前2条の免責は、甲が契約不適合の事実を知りながらこれを乙に告げなかった場合には適用しない(民法第572条)。

第6条(宅地建物取引業者が売主である場合の特則) 甲が宅地建物取引業者である場合、本特約中、乙に不利な特約であって宅地建物取引業法第40条第1項の基準よりも買主に不利なものは、その部分について無効とする。

第7条(既存住宅状況調査(インスペクション)の実施) 甲及び乙は、本物件について既存住宅状況調査を実施したか否か、及びその結果を別紙報告書のとおり確認する。

第8条(付帯設備の取扱い) 給湯器、エアコン等の付帯設備については、別紙「付帯設備表」に記載のとおり、その有無及び故障の状況を確認し、記載された故障については契約不適合責任の対象としない。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 売主向けの修正

A-1. 免責範囲の拡張(個人間売買の場合)

修正後(第4条の代替、宅建業者が売主でない個人間売買の場合):「甲は、本物件について一切の契約不適合責任を負わないものとする。」 一言解説: 売主が宅地建物取引業者でない個人間売買の場合、宅地建物取引業法第40条の規制が及ばないため、全部免責の特約も原則として有効となる。ただし、甲が知りながら告げなかった事実については民法第572条により免責の効力が生じない点に留意が必要である。

B. 買主向けの修正

B-1. 責任期間の伸長及び対象範囲の拡大

修正後(第4条の代替):「甲が負う契約不適合責任は、雨漏り、シロアリの害、建物構造上主要な部分の腐食、給排水管の故障及び給排水設備の機能不全とし、引渡日から1年間存続する。」 一言解説: 買主にとって重要な設備(給排水設備)まで責任対象を拡大し、期間も長期化する修正である。宅地建物取引業者が売主である場合、民法の原則(引渡しから1年以内の通知)を下回らない期間設定とする必要がある(宅地建物取引業法第40条)。

C. 宅建業者向けの修正

C-1. 重要事項説明における免責内容の説明確認条項の追加

追加条文例:「仲介業者は、本特約による契約不適合責任の免責範囲及び責任期間について、宅地建物取引士をして重要事項説明書及び37条書面において買主に説明させたことを確認する。」 一言解説: 免責特約は買主の権利に直接影響するため、説明義務の履行を記録として残しておくことが望ましい。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、中古住宅の売買において、経年劣化のある建物の性質を踏まえ、売主の契約不適合責任の範囲や期間をあらかじめ限定する場面で用いる。新築住宅の売買については、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第95条により、構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分の契約不適合責任について、引渡しから10年間は免責又は軽減する特約をしても無効とされているため、本書式をそのまま新築住宅に適用すべきではない。

根拠法令 民法第562条から第564条までは、契約不適合責任として履行の追完請求権、代金減額請求権、損害賠償請求権及び解除権を定める。同法第572条は、売主が契約不適合の事実を知りながら買主に告げなかった場合、あらかじめ責任を負わない旨の特約をしても、その責任を免れることができない旨を定める(担保責任を負わない旨の特約の効力制限)。宅地建物取引業法第40条第1項は、宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、契約不適合責任に関し、民法第566条に規定する期間について、目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、これより買主に不利となる特約をしてはならない旨を定め、同条第2項はこれに反する特約は無効とする。個人間の売買では宅建業法の規制が及ばないため、当事者の合意により広範な免責も可能であるが、民法第572条の適用は個人間売買でも及ぶ。

実務でよくある失敗と対策 第一に、宅地建物取引業者が売主である取引で、責任期間を引渡しから2年未満に設定してしまい、宅地建物取引業法第40条第1項違反として当該特約が無効となる失敗がある。第6条のように業法の基準を下回らない旨を確認的に定めることが重要である。第二に、売主が物件の欠陥(雨漏りの履歴等)を認識していたにもかかわらずこれを告げず、免責特約の効力を主張しようとして民法第572条により免責が認められない失敗がある。第3条・第5条のように、既知の事実は物件状況等報告書に記載したうえで免責対象とし、未告知の既知の欠陷には免責が及ばないことを明確にしておくことが重要である。第三に、付帯設備の故障の有無を確認せずに免責特約を適用しようとし、買主から「契約時に説明がなかった」として紛争になる失敗がある。第8条のように付帯設備表を別途作成し、故障状況を個別に確認しておくことが望ましい。

第四に、既存住宅売買瑕疵保険に加入する予定であるにもかかわらず、免責特約の内容が保険の付保条件(検査基準への適合等)と整合しておらず、保険加入自体ができなくなる失敗もある。瑕疵保険の利用を予定する場合は、保険法人の定める検査基準と免責特約の内容に矛盾がないかを事前に確認することが望ましい。第五に、契約不適合責任の免責と、境界や越境物など不動産の権利関係に関する説明義務とを混同し、後者についてまで免責が及ぶかのように誤解してしまう失敗もある。本特約はあくまで目的物の種類・品質に関する契約不適合責任の範囲を定めるものであり、権利関係に関する説明義務(重要事項説明義務)とは別個のものであることを明確にしておく必要がある。

契約不適合責任の免責範囲の設計は、売主の属性(業者か個人か)や物件の状況によって適法性の判断が異なるため、契約締結前に専門家に確認することが望ましい。個別事案において特約の有効性を保証するものではない。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 売主が宅地建物取引業者か個人かを確認したか
  • [ ] 宅建業者が売主の場合、責任期間が引渡しから2年以上となっているか確認したか
  • [ ] 売主が認識している欠陥を物件状況等報告書に記載したか
  • [ ] 免責の対象となる部位・事象を具体的に特定したか
  • [ ] 既存住宅状況調査(インスペクション)の実施の有無及び結果を確認したか
  • [ ] 付帯設備表を作成し、故障状況を個別に確認したか
  • [ ] 新築住宅でないこと(品確法の強行規定の対象外であること)を確認したか
  • [ ] 重要事項説明書における免責内容の説明を確認したか
  • [ ] 既存住宅売買瑕疵保険の付保を予定する場合、検査基準と免責特約の整合を確認したか
  • [ ] 権利関係に関する説明義務と契約不適合責任の免責範囲を混同していないか確認したか