契約のうち特定の業務や品目のみを解除する通知書です。解除の対象、残存部分の効力、既履行分の精算方法を明示します。関連書式とあわせて使うことで手続の漏れを防げます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
契約の一部解除通知書
第1部: 書式本文
【解除する当事者商号・氏名】(以下「甲」という。)は、【相手方商号・氏名】(以下「乙」という。)との間で締結した【契約名称、締結日:令和【 】年【 】月【 】日】(以下「原契約」という。)のうち、下記の業務・品目部分について、次のとおり解除する。
第1条(一部解除の対象) 本通知による解除の対象は、原契約に定める業務又は品目のうち次の部分(以下「解除対象部分」という。)に限る。 対象:【具体的な業務内容・品目名・数量等】/該当条項:原契約第【 】条
第2条(解除の理由) 甲は、乙が解除対象部分について【債務不履行の内容:納期遅延、品質不適合等】の事実があり、令和【 】年【 】月【 】日付【催告書等】により相当の期間を定めて催告したにもかかわらず、なお履行がないため、民法第541条に基づき解除対象部分に限り解除する。
第3条(解除の効力発生日) 解除対象部分に関する契約関係は、本通知が乙に到達した日をもって終了する。
第4条(残存部分の効力) 原契約のうち解除対象部分以外の業務・品目(以下「残存部分」という。)については、本通知による影響を受けず、従前どおり効力を有する。
第5条(既履行分の取扱い) 解除対象部分のうち既に履行が完了した部分がある場合、甲乙は当該部分の対価を次のとおり精算する。 既履行分の内容:【 】/精算金額:金【 】円/支払期日:【 】
第6条(未履行分の取扱い) 解除対象部分のうち未履行の部分については、甲は乙に対しその履行を求めない。乙は、当該未履行部分に関して既に要した費用(材料費等)がある場合、その実費相当額を甲に請求できるものとし、金額は別途協議する。
第7条(損害賠償) 本条による解除は、甲が乙に対して有する解除対象部分に関する債務不履行に基づく損害賠償請求権(民法第415条)を妨げない。
第8条(残存部分の履行条件の見直し) 解除対象部分の解除に伴い、残存部分の履行条件(納期、対価等)の見直しが必要な場合、甲乙は別途協議のうえ覚書により定める。
第9条(通知方法) 本通知は、原契約に定める方法によるほか、内容証明郵便により行うことができるものとする。
以上
令和【 】年【 】月【 】日
甲(解除する当事者) 住所:【 】 商号・氏名:【 】 印 乙(相手方) 住所:【 】 商号・氏名:【 】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 解除する当事者(甲)向け
A-1 第6条の修正例 「乙が主張する未履行部分に関する実費は、甲が事前に承認した費用に限り甲がこれを負担するものとし、乙は当該費用に関する証憑を提出しなければならない。」 一言解説: 解除を行う側としては、相手方から一方的に高額な実費請求を受けるリスクを避けるため、事前承認と証憑提出を条件とすることで、精算対象を客観的に確認できる範囲に限定できる。
A-2 第8条の修正例 「残存部分の履行条件の見直しについて、本通知の日から14日以内に協議が調わないときは、甲は原契約の定める納期及び対価を維持したまま残存部分の履行を求めることができる。」 一言解説: 解除する側にとっては、協議が長期化して残存部分の履行自体が遅延することを避けるため、協議不調時のデフォルトルール(原契約条件の維持)をあらかじめ定めておくことが有効である。
B節: 相手方(乙)向け
B-1 第7条の修正例 「甲が請求する損害賠償の範囲は、解除対象部分に直接起因し、かつ甲が現実に支出した損害に限るものとし、逸失利益その他の間接損害は含まないものとする。」 一言解説: 相手方としては、一部解除に伴う損害賠償の範囲が無制限に拡大することを防ぐため、直接損害への限定や間接損害の除外を明記し、責任範囲を予測可能なものにしておくことが望ましい。
B-2 第5条の修正例 「既履行分の対価精算については、乙が提出する出来高報告書及び関連資料に基づき甲乙協議のうえ確定し、確定額の支払期日は精算金額確定後30日以内とする。」 一言解説: 相手方にとっては、既履行分の対価が一方的に低く査定されることを防ぐため、自ら根拠資料を提出できる手続と、確定後の合理的な支払期日を確保しておくことが重要である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、単一の契約の中に複数の業務や品目が含まれる場合において、その一部についてのみ債務不履行等を理由に契約関係を終了させ、残りの部分は存続させたい場面で使用する。継続的な取引基本契約や複数品目の売買契約、複数フェーズからなる業務委託契約などで特に有用である。他方、契約全体を終了させる意図がある場合や、対象業務が不可分一体であり一部のみの解除が原契約の目的達成を害する場合には、本書式ではなく契約全体の解除通知書を用いるべきである。
民法には契約の一部のみを解除する明文規定は置かれていないが、契約は当事者の合意によって内容を自由に定めることができる(契約自由の原則、民法第521条)ため、可分な複数の給付を含む契約について、当事者間の合意又は一方当事者の解除権の行使を可分な範囲に限定することは可能と解されている。解除の要件自体は民法第541条(催告解除)及び第542条(無催告解除の要件)によることになり、解除対象部分について債務不履行の事実と催告の履践(無催告解除の場合はその要件該当性)を明確にする必要がある。解除の効果としての原状回復義務は民法第545条に定められており、既履行分の取扱いについてはこの規律を参考にしつつ、可分な部分ごとに整理することになる。
よくある失敗の第一は、解除対象部分の特定が曖昧で、後日「どの業務が解除されたのか」について当事者間で認識が食い違うことである。第1条のように、対象を原契約の該当条項と紐づけて具体的に特定することが対策となる。第二に、残存部分への影響を明記しないまま一部解除を通知し、相手方が「実質的に契約全体が終了した」と誤解して残存部分の履行を停止してしまう例がある。第4条のように残存部分の存続を明記することが重要である。第三に、対象業務が実質的に不可分であるにもかかわらず一部解除を強行し、後日、解除の効力自体が争われる例がある。契約の目的や給付の性質から可分性を慎重に検討し、疑義がある場合には契約全体の解除又は合意解約への切替えも選択肢とすべきである。
また、一部解除の通知を行う際には、残存部分の履行条件が実質的に変更を要する場合があることにも留意する必要がある。例えば、複数品目の一括発注により数量に応じた割引単価が適用されていた場合、一部品目の解除により残存部分の単価計算の前提が崩れることがある。このような場合、第8条のように、解除後の残存部分の履行条件について別途協議のうえ覚書を取り交わす手続を組み込んでおくことで、単価や納期の見直しに関する紛争を未然に防ぐことができる。可分性の判断や解除要件の充足、残存部分の条件見直しの要否については、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 解除対象部分を原契約の該当条項と対応させて具体的に特定した
- [ ] 対象業務が客観的に可分であり、一部解除によっても原契約の目的が害されないか検討した
- [ ] 催告解除の場合、相当期間を定めた催告とその到達を証拠とともに確認した
- [ ] 無催告解除による場合、民法第542条所定の要件への該当性を確認した
- [ ] 残存部分が本通知の影響を受けず存続する旨を明記した
- [ ] 既履行分の対価精算方法と支払期日を定めた
- [ ] 未履行分に関する実費請求の可否と条件を明記した
- [ ] 損害賠償請求権を留保する旨を明記した
- [ ] 残存部分の履行条件見直しが必要な場合の協議手続を定めた
- [ ] 通知方法が原契約の定めと整合しているか確認した