有期契約社員を雇用する企業向け。契約更新の基準や上限、雇止め手続を定め、労働契約法第17条・第19条の雇止め法理に沿った運用を確保します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
契約社員就業規則
第1部: 書式本文
第1条(規則の趣旨) この規則は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)が期間の定めのある労働契約により雇用する従業員(以下「契約社員」という。)の労働条件を定めるものであり、契約社員以外の雇用区分には適用しない。
第2条(契約社員の範囲) 契約社員とは、会社との間で1年以内の期間を定めた労働契約を締結した従業員であって、パートタイマー就業規則の適用を受けない、フルタイム勤務の従業員をいう。
第3条(契約期間) 1. 契約社員の労働契約の期間は、原則として1年以内とし、個別の労働契約書に定める。 2. 契約期間は、会社及び契約社員の合意により更新することがある。ただし、更新は当然に約束されるものではない。
第4条(労働条件の明示及び更新上限の明示) 1. 会社は、契約社員の採用及び契約更新の際、労働基準法第15条及び同法施行規則第5条に基づき、契約期間、更新の有無、更新の判断基準を明示する。 2. 会社が契約の通算契約期間又は更新回数の上限(以下「更新上限」という。)を設ける場合、2024年4月施行の労働基準法施行規則第5条の改正に基づき、当該上限の内容を労働条件通知書に明記する。 3. 既に更新上限のない契約を締結している契約社員について、新たに更新上限を設け、又はこれを引き下げようとするときは、会社は、あらかじめその理由を当該契約社員に説明する。
第5条(更新の判断基準) 契約の更新は、次の各号に掲げる事項を総合的に考慮して判断する。 (1) 契約期間満了時の業務量 (2) 契約社員の勤務成績及び勤務態度 (3) 契約社員の業務遂行能力 (4) 会社の経営状況
第6条(更新の手続) 1. 会社は、契約期間満了の1か月前までに、更新の有無について契約社員に通知する。 2. 契約を更新する場合、会社は新たな労働条件通知書を交付し、契約社員の署名又は記名押印をもって更新の合意とする。
第7条(契約期間中の解雇の制限) 会社は、労働契約法第17条第1項に基づき、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で契約社員を解雇しない。
第8条(雇止め) 1. 会社は、有期労働契約を更新しないこととする場合(以下「雇止め」という。)には、原則として契約期間満了の30日前までにその予告を行う。 2. 労働契約法第19条により、次の各号のいずれかに該当する場合であって、会社が雇止めをすることが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、従前と同一の労働条件で契約が更新されたものとみなされる場合があると解される。 (1) 有期労働契約が反復更新され、雇止めをすることが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められる場合 (2) 契約社員において、契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合 3. 会社は、前項の趣旨を踏まえ、更新回数、更新時の説明内容、業務の恒常性等について、雇止めの合理性を裏付ける記録を保存する。
第9条(無期転換申込権) 1. 労働契約法第18条に基づき、契約社員の有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、契約社員は、契約期間満了日までに、会社に対し無期労働契約への転換を申し込むことができる。 2. 会社は、前項の申込みがあったときは、これを承諾したものとみなし、当該申込みに係る契約期間の満了日の翌日から、無期労働契約が成立する。無期転換後の労働条件は無期転換社員就業規則の定めるところによる。 3. 会社は、通算契約期間が5年を超える契約更新の際に、無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングであることを労働条件通知書に明示する。
第10条(労働時間) 契約社員の所定労働時間、始業及び終業の時刻は、個別の労働契約書に定めるところによる。
第11条(休日及び休暇) 契約社員の休日及び年次有給休暇は、正社員就業規則の定めを準用する。ただし、年次有給休暇の付与日数は、労働基準法第39条の定めるところによる。
第12条(賃金) 契約社員の賃金は、個別の労働契約書及び賃金規程契約社員編に定めるところによる。
第13条(服務規律) 契約社員は、正社員就業規則に定める服務規律を準用する。
第14条(退職) 契約社員が契約期間の途中で自己都合により退職しようとするときは、退職を希望する日の30日前までに会社に申し出るものとする。
第15条(改廃) 本規則の改廃は、正社員就業規則の変更手続に準じて行う。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 更新上限設定型向け(通算契約期間又は更新回数に上限を設ける企業)
A-1 第3条第2項の修正例 「契約期間は、通算契約期間が3年を超えない範囲、かつ更新回数3回を上限として更新することができる。上限に達した契約社員との契約は、当該契約期間の満了をもって終了する。」 一言解説: 更新上限を数値で明記すると、無期転換申込権が発生する前に契約関係を終了させる運用となるため、雇止め法理(労契法19条)の該当性がより厳しく審査される可能性がある点に留意する必要がある。
A-2 第4条第2項の修正例 「更新上限は通算3年・更新回数3回とし、初回の契約締結時及び以後の契約更新時に、労働条件通知書の「更新上限の有無」欄にその内容を明記する。」 一言解説: 2024年4月の労基則改正により、更新上限の新設・変更時には理由説明が求められるため、初回契約時から上限を明示しておくことがトラブル防止につながる。
B節: 更新回数無制限型向け(業務の恒常性に応じて更新を継続する企業)
B-1 第3条第2項の修正例 「契約期間は、更新回数及び通算契約期間に上限を設けず、第5条の更新基準に基づき、会社が更新の可否を判断する。」 一言解説: 上限を設けない場合、契約社員の更新への合理的期待が積み重なりやすく、雇止めの適法性がより慎重に判断される傾向にあるため、更新基準の運用実態を記録しておくことが重要になる。
B-2 第9条に無期転換前提の運用を追加する修正例 「会社は、通算契約期間が5年に達する見込みの契約社員に対し、契約更新の都度、無期転換申込権の発生時期をあらかじめ通知する。」 一言解説: 上限を設けない運用では無期転換申込権が発生する契約社員が継続的に生じるため、転換後の処遇設計(無期転換社員就業規則との連携)を並行して整備しておく必要がある。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本規則を使う場面は、フルタイムで有期労働契約を締結する契約社員を継続的に雇用しており、正社員就業規則をそのまま適用することが労働条件の実態にそぎわない企業である。逆に、パートタイム勤務が中心の有期雇用者や、数か月程度の短期プロジェクトのみに従事する臨時雇用者については、パートタイマー就業規則や個別契約書での対応がより実態に即する場合があり、本規則を機械的に適用すべきではない。
根拠法令として、労働契約法第17条第1項は、有期労働契約の期間途中の解雇について、やむを得ない事由がある場合に限って認めており、期間の定めのない労働契約の解雇よりも厳格な要件が課される。同法第19条は、いわゆる雇止め法理を定め、反復更新の実態や更新への合理的期待が認められる場合、正当な理由のない雇止めを無効とし従前と同一条件での契約更新をみなす。同法第18条の無期転換ルールは、通算契約期間が5年を超えたときに労働者に無期転換申込権を発生させるものであり、更新上限の設定はこの申込権発生前に契約関係を終了させる目的で用いられることがあるため、両者は密接に関連する。
実務でよくある失敗の一つ目は、当初の契約書に更新上限の記載がないまま反復更新を続け、5年経過が近づいた段階で突如上限を設けて雇止めを行い、労働契約法第19条に基づく雇止め無効の主張を受けることである。第4条第3項のように、上限を新設・変更する際の説明義務を規則上も明記し、実際に説明を行った記録を残すことが対策となる。
二つ目の失敗は、更新の判断基準を定めずに毎回更新していたため、契約社員に更新への強い期待が生じ、業績悪化等を理由とする雇止めが認められにくくなることである。第5条のように更新基準を具体的に定め、更新の都度基準への該当性を確認し記録する運用が求められる。
三つ目の失敗は、無期転換申込権が発生しているにもかかわらず、その旨を契約社員に説明せず、後日申込機会を失わせたとして紛争化することである。第9条第3項のように、2024年4月改正の労働基準法施行規則第5条が求める無期転換申込機会の明示を確実に行う必要がある。更新上限の適法性や雇止めの相当性の判断は事案ごとの事情に左右されるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 契約社員の範囲(パートタイマーとの区別)を明確に定義したか
- [ ] 更新上限を設ける場合、労働条件通知書にその内容を明示しているか
- [ ] 更新上限を新設・変更する場合の理由説明手続を定めたか
- [ ] 更新の判断基準を具体的に定め、更新時に記録しているか
- [ ] 契約期間途中の解雇について労働契約法第17条の要件を反映したか
- [ ] 雇止め予告の時期(契約期間満了30日前)を定めたか
- [ ] 雇止め法理(労働契約法第19条)を踏まえた雇止め判断の記録方法を定めたか
- [ ] 無期転換申込権の発生時期を契約社員に通知する運用としたか
- [ ] 無期転換後の労働条件を定める規程(無期転換社員就業規則等)との整合を確認したか
- [ ] 反復更新の実態と契約社員の期待の程度を定期的に確認しているか