契約終了時に未払報酬や立替金、預託金を精算する合意書です。精算額の内訳、支払期日、以後の請求権不存在を確認します。関連書式とあわせて使うことで手続の漏れを防げます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
契約終了に伴う精算合意書
第1部: 書式本文
【支払側商号・氏名】(以下「甲」という。)と【受領側商号・氏名】(以下「乙」という。)は、両者間の【契約名称、締結日:令和【 】年【 】月【 】日】(以下「原契約」という。)の終了に伴う金銭の精算について、次のとおり合意する(以下「本合意」という。)。
第1条(前提事実) 原契約は令和【 】年【 】月【 】日をもって終了した。甲乙は、原契約の終了に伴い生じる未払報酬、立替金及び預託金について、本合意により最終的に精算する。
第2条(未払報酬) 甲が乙に対して負担する未払報酬の額は、金【 】円(消費税別/込)とする。内訳:【業務内容ごとの金額】
第3条(立替金) 乙が原契約の履行に際して立て替えた費用の額は、金【 】円とする。乙は、当該費用の証憑(領収書等)を甲に提出する。
第4条(預託金の取扱い) 甲が乙から預かっている預託金(保証金、敷金その他名目を問わない。)の額は、金【 】円とする。甲は、当該預託金を第5条の精算額に充当する。
第5条(精算額の確定) 甲乙は、第2条から第4条までを踏まえ、最終的な精算額を次のとおり確定する。 甲が乙に支払う額 / 乙が甲に支払う額:金【 】円
第6条(支払方法及び期日) 前条の精算額は、令和【 】年【 】月【 】日限り、【振込先口座等】に振り込む方法により支払う。振込手数料は【支払う側/受け取る側】の負担とする。
第7条(遅延損害金) 支払義務者が前条の支払期日までに支払を怠ったときは、支払期日の翌日から支払済みまで年【 】パーセント(年365日日割計算)の割合による遅延損害金を付加して支払う。
第8条(相殺の確認) 本合意における精算額は、甲乙間の債権債務を相殺した後の金額であることを相互に確認する。
第9条(清算条項) 甲及び乙は、本合意に定めるもののほか、原契約に関し相互に債権債務が存在しないことを確認する。以後、原契約に関する追加の請求は行わない。
以上を証するため、本合意書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
令和【 】年【 】月【 】日
甲(支払側) 住所:【 】 商号・氏名:【 】 印 乙(受領側) 住所:【 】 商号・氏名:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 支払側(甲)向け
A-1 第3条の修正例 「乙が請求する立替金は、甲が事前に書面で承認した支出に限るものとし、承認のない支出については、甲は負担義務を負わない。」 一言解説: 支払側としては、事前承認のない立替金の請求を無制限に受け入れると精算額が予測不能になるため、事前承認を要件とすることで支払義務の範囲を明確にできる。
A-2 第7条の修正例 「遅延損害金の利率は年3パーセントとし、天災その他甲の責めに帰することのできない事由による支払遅延については、遅延損害金は発生しないものとする。」 一言解説: 支払側にとっては、法定利率を上回る高利率の遅延損害金や、不可抗力による遅延にまで責任を負わされることを避けるため、利率の上限と免責事由を明記しておくことが望ましい。
B節: 受領側(乙)向け
B-1 第6条の修正例 「精算額の支払期日は本合意締結日から14日以内とし、振込手数料は甲(支払側)の負担とする。」 一言解説: 受領側としては、精算合意が成立したにもかかわらず支払が長期間先送りされることを避けるため、短期の支払期日を設定し、振込手数料についても受領額が目減りしないよう支払側負担とすることが有利である。
B-2 第4条の修正例 「預託金は、第5条の精算額に充当してなお残額があるときは、本合意締結日から7日以内に乙に返還するものとし、甲が正当な理由なく返還を遅延した場合は、遅延損害金を付して返還する。」 一言解説: 受領側にとっては、預託金の返還が精算手続の中で曖昧にされ、返還時期が示されないまま留保され続けることを防ぐため、返還期限と遅延時の効果を明記しておくことが重要である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、契約終了に伴って生じる未払報酬、立替金、預託金などの複数の金銭債権債務を一度に精算し、最終的な支払額を確定させる場面で使用する。単に契約終了の事実を確認する契約終了確認書とは異なり、金額の算定根拠と支払方法まで具体的に定める点に特徴がある。他方、金銭の精算を要しない契約(単純な役務提供が既に完了し対価も支払済みの場合等)では、本書式を用いる必要はなく、契約終了確認書のみで足りることが多い。
法的根拠としては、複数の債権債務がある場合の相殺については民法第505条(相殺の要件)が基本となり、対当額での相殺適状にある債権債務を精算の過程で処理する際の考え方の基礎となる。預託金の性質が賃貸借契約における敷金である場合は、民法第622条の2が、賃貸人は賃貸借終了後、賃借人に対して未払債務を控除した残額を返還しなければならない旨を定めており、預託金の充当・返還条項を設計する際の参考になる。委任契約に基づく報酬の精算については、民法第648条第3項が、委任が履行の中途で終了したときは、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求できる旨を定めており、未払報酬の算定根拠として援用できる場合がある。
よくある失敗の第一は、未払報酬、立替金、預託金をそれぞれ別々の書面や口頭でのやり取りに委ね、最終的な精算額が一つの書面に集約されないまま合意が成立したと誤解することである。第2条から第5条のように、各項目を個別に明示した上で最終的な精算額を一本化して確定させることが対策となる。第二に、立替金の証憑確認を怠ったまま精算額に組み入れ、後日、証憑のない支出について正当性が争われる例がある。第3条のように証憑の提出を条件とすることが重要である。第三に、精算額の支払期日を定めずに合意書のみ締結し、実際の支払が長期間放置される例がある。第6条・第7条のように支払期日と遅延損害金を明記し、履行の実効性を確保すべきである。
このほか、精算額がマイナス(受領側が支払側に対して返還すべき状態)になる場合の取扱いについても、あらかじめ想定しておくことが望ましい。契約の性質によっては、当初は報酬の支払側であった当事者が、預託金の返還を受ける立場に転じることもあり得るため、第5条のように「甲が乙に支払う額」と「乙が甲に支払う額」の双方の書式を残し、実際の金額確定時にいずれかを選択できる構成にしておくと、書面の修正を最小限にとどめられる。相殺の要件充足や消費税の取扱いなど税務上の論点については、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 未払報酬、立替金、預託金のそれぞれの金額を根拠資料に基づき確定した
- [ ] 立替金について証憑(領収書等)の提出を受け、承認手続を経たか確認した
- [ ] 預託金の充当順序及び残額の返還時期を明記した
- [ ] 最終的な精算額(支払方向及び金額)を一本化して明示した
- [ ] 支払方法及び支払期日を具体的に定めた
- [ ] 振込手数料の負担者を明記した
- [ ] 遅延損害金の利率及び免責事由を定めた
- [ ] 消費税の取扱い(内税・外税、課税・非課税)を確認した
- [ ] 清算条項により以後の追加請求を行わない旨を明記した
- [ ] 記名押印者が契約締結権限を有することを確認した