会社分割や事業譲渡で契約当事者が交代する際に相手方の承諾を得る書式。民法第539条の2の契約上の地位の移転を根拠に、承継範囲と既発生の債権債務の扱いを定めます。

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契約上の地位譲渡に関する承諾書

第1部: 書式本文

【原契約の当事者名(承諾を求める側)】(以下「甲」という)は、【承諾を与える相手方名】(以下「乙」という)に対し、【原契約名・締結日】(以下「原契約」という)における甲の契約上の地位を【承継人名】(以下「丙」という)に移転することについて、次のとおり承諾を求め、乙はこれを承諾する。

第1条(目的) 本書は、甲の契約上の地位の丙への移転(以下「本移転」という)について、原契約の相手方である乙の承諾を得ることを目的とする。

第2条(移転の原因) 本移転は、【移転原因(会社分割・事業譲渡・合併等)】に伴い行われるものである。

第3条(移転の対象) 本移転の対象は、原契約に基づき甲が有する一切の権利及び義務とする。

第4条(承継の効力発生日) 本移転の効力は【効力発生日】に生じるものとし、当該日以降、原契約上の甲の地位は丙が承継する。

第5条(既発生の債権債務の取扱い) 効力発生日より前に生じた甲の乙に対する債権債務については、【取扱い(丙が承継する・甲に留保する等)】とする。

第6条(契約条件の維持) 本移転により、原契約に定める価格、数量その他の取引条件は変更されないものとする。

第7条(丙の表明) 丙は、原契約の内容を確認し、これを遵守することを表明する。

第8条(乙による承諾の条件) 乙は、丙が【承諾の条件(信用状態・許認可の保有等)】を満たすことを条件として、本書による承諾を行う。

第9条(通知) 甲及び丙は、本移転の効力発生後、遅滞なくその旨を書面で乙に通知する。

第10条(承諾拒否の場合の取扱い) 乙が本移転を承諾しない場合、甲は原契約を丙に承継させることができず、原契約に基づく甲乙間の関係は従前どおり存続する。

以上、上記の内容を確認し、承諾する。

【承諾日】 甲: 【氏名・名称】 印 乙: 【氏名・名称】 印 丙: 【氏名・名称】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 法務担当の立場から

法務担当としては、会社分割による契約承継の場合、会社分割は原則として個別の承諾を要しないという法的整理を踏まえつつ、実務上の混乱を避けるため通知型の確認書に変更することも検討する。

修正例:「本移転は会社分割に伴う権利義務の包括承継によるものであり、法律上乙の承諾を要しないが、甲及び丙は取引の安定のため乙に対し事前に通知し、本書により相互の認識を確認する。」

一言解説:会社分割の場合、原契約上の地位は原則として法律上当然に承継されるため承諾の法的性質が異なるが、実務上は取引先との関係維持のために事前説明と確認書の取得を行うことが多い。

B. 経営企画担当の立場から

経営企画担当としては、事業譲渡による契約承継の場合、譲渡対象契約の一覧を別紙で明示し、承継範囲を明確にすることが望ましい。

修正例:「本移転の対象契約は、別紙契約一覧に記載する原契約に限るものとし、甲が丙に譲渡しない事業に関する契約は本移転の対象に含まれない。」

一言解説:事業譲渡では対象事業の切り分けが不明確だと、どの契約が承継対象か争いになりやすいため、対象契約を個別に列挙することが実務上重要である。

C. 取引先窓口担当の立場から

取引先(乙)の窓口担当としては、承継人である丙の与信状況や継続的な取引能力について確認する期間を設ける規定を追加することが望ましい。

修正例:「乙は、本書の提示を受けた日から【 】日以内に丙の信用状況等を確認し、承諾又は不承諾の回答を甲に対し行う。」

一言解説:承諾の可否を検討する期間を設けないまま即時の承諾を求められると、取引先が十分な確認をできないまま承諾せざるを得なくなるため、確認期間を明記しておくことが取引先保護の観点から望ましい。

取引先窓口担当としてはさらに、承諾を拒否する場合の理由開示や、承諾を拒否したことによる原契約の帰趨(甲との取引継続の可否)についても確認しておくことが望ましい。

修正例:「乙が本移転を承諾しない場合、甲及び乙は、原契約の継続又は解約について別途協議する。」

一言解説:承諾を拒否した後の関係をあらかじめ整理しておかないと、契約の帰趨が宙に浮いた状態となり、双方に不安定な状況が生じるおそれがある。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、事業譲渡等により契約当事者が交代する場合に、原契約の相手方から契約上の地位の移転について承諾を得る場面で使用する。会社分割や合併のように法律上当然に権利義務が包括承継される場面では、法的には相手方の個別の承諾を要しないことが多く、その場合は承諾書ではなく通知書としての性質を持たせる整理も検討する必要がある。

根拠法令としては、民法第539条の2が、契約上の地位の譲渡は、契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、譲受人に移転すると定めており、契約上の地位の移転には原則として相手方の承諾が必要とされる。ただし、会社法上の会社分割(会社法第2条第27号・第28号)による権利義務の承継は、分割契約又は分割計画に定めるところに従い包括承継されるため、個別契約の相手方の承諾を要しないと解されている。事業譲渡(会社法第467条)の場合は、譲渡対象となる契約ごとに個別の承継手続(本書式のような承諾)が必要となる点で会社分割とは異なる。

実務でよくある失敗として、第一に、事業譲渡による契約承継であるにもかかわらず、会社分割の場合と同様に承諾は不要と誤解し、取引先の承諾を得ないまま丙が契約を履行しようとしてトラブルになるケースがある。移転の原因(会社分割か事業譲渡か)によって必要な手続が異なることを正しく整理する必要がある。第二に、既発生の債権債務の帰属先を明記しないまま契約上の地位を移転し、効力発生日前の未払代金の請求先を巡って甲乙丙間で争いになるケースがあり、既発生債権債務の取扱いを条項上明確にすることが対策となる。第三に、乙が承諾しないまま丙が契約の履行を開始してしまい、法的に地位の移転が完了していない状態で取引が進行するケースがあり、乙の承諾取得を効力発生の前提条件とすることが望ましい。

第四に、乙が承諾を拒否した場合の原契約の取扱いについて何ら定めがなく、承諾拒否後も甲丙間の取引が事実上進行してしまい、原契約上の地位が誰に帰属しているのか不明確な状態が続くケースがあり、承諾拒否時の協議事項をあらかじめ定めておくことが対策となる。

契約上の地位の移転に伴う法的効果や必要な手続は、移転原因や契約類型により異なるため、実際の運用にあたっては弁護士等の専門家に個別に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 移転の原因(会社分割・事業譲渡・合併等)を明記したか
  • [ ] 会社分割か事業譲渡かにより必要な手続を正しく整理したか
  • [ ] 移転の対象となる契約を具体的に特定したか
  • [ ] 承継の効力発生日を明記したか
  • [ ] 既発生の債権債務の取扱いを明記したか
  • [ ] 契約条件が変更されない旨を明記したか
  • [ ] 承継人(丙)による原契約遵守の表明を得たか
  • [ ] 乙による承諾の条件(与信確認等)を明記したか
  • [ ] 承諾確認のための期間を設けたか
  • [ ] 承諾拒否時の取扱いを明記したか
  • [ ] 承諾拒否後の原契約の帰趨に関する協議事項を定めたか
  • [ ] 通知の方法及び通知先を明記したか