契約書の記載誤りを当事者の合意で訂正する書面です。訂正箇所の特定、訂正後の文言、遡及効の有無を明確にします。後日の紛争を防ぐための確認欄をあらかじめ設けています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
契約書の誤記訂正に関する合意書
第1部: 書式本文
契約書の誤記訂正に関する合意書
【当事者A】(以下「甲」という。)と【当事者B】(以下「乙」という。)は、甲乙間で【年】年【月】月【日】日付で締結した【原契約名称】(以下「原契約」という。)に存在する記載誤りを訂正することについて、以下のとおり合意する。
第1条(訂正箇所の特定) 甲及び乙は、原契約に下記の記載誤り(以下「本誤記」という。)が存在することを相互に確認する。 条項:原契約第【 】条 誤った記載:【誤記の内容】 正しい記載:【本来意図されていた内容】
第2条(訂正の内容) 原契約第【 】条中「【誤記の文言】」とあるのは、「【訂正後の文言】」に訂正する。
第3条(訂正の性質) 本訂正は、原契約締結時における当事者双方の真意を確認的に明らかにするものであり、原契約の内容を実質的に変更するものではないことを甲乙確認する。
第4条(遡及効) 本訂正は、原契約の締結日に遡って効力を有するものとし、原契約締結時から訂正後の内容であったものとして取り扱う。
第5条(訂正が真意と異なる場合の取扱い) 本誤記が単なる記載ミスではなく、当事者の認識に実質的な相違があったことが判明した場合、甲乙は別途協議のうえ、契約内容の変更として取り扱うか否かを決定する。
第6条(既履行部分への影響) 本誤記に基づき既に履行された事項がある場合、その取扱いについては下記のとおりとする。 【既履行部分の処理方法、例:訂正後の内容に従い差額を精算する】
第7条(第三者への影響) 本誤記に関連して第三者との間で契約書の写し等が既に提出されている場合、甲及び乙はそれぞれ自己の責任において必要な訂正の連絡を行う。
第8条(訂正の方法) 本訂正は、原契約の該当箇所に二重線を引き訂正印を押す方法、又は本合意書を原契約に添付する方法のいずれかにより行う。
第9条(保存) 甲及び乙は、本合意書を原契約の付属書類として、原契約の保存期間と同一の期間保存する。
第10条(協議) 本合意書に定めのない事項及び疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。
以上の合意を証するため、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各自1通を保有する。
【年】年【月】月【日】日
甲 住所: 氏名又は名称: 印 乙 住所: 氏名又は名称: 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節:誤記により不利益を受けていた当事者の視点
誤記により不利益を受けていた当事者としては、遡及効を明確にし、既払金の精算を求めます。
第6条(修正例) 本誤記により甲が過大に支払った代金【 】円については、乙は本合意書締結後【 】日以内に甲に返還する。
一言解説:誤記の訂正にとどまらず、それに伴う金銭の精算まで具体的に定めることで実効性を確保します。
B節:誤記の訂正により有利になっていた当事者の視点
訂正により自己に不利な内容に変更される当事者としては、訂正が真に双方の誤記であったことの確認を重視します。
第1条(修正例) 甲及び乙は、本誤記が原契約締結時の交渉経緯(別紙添付の見積書及び議事録)に照らし、双方の入力誤りによるものであることを確認する。
一言解説:訂正の正当性を裏付ける客観的資料への言及を加えることで、後日の「変更ではないか」との主張を防ぎます。
C節:金額の誤記を訂正する場合
金額の誤記は特に紛争になりやすいため、訂正内容を数字で明確にします。
第2条(修正例) 原契約第【 】条中「金【誤った金額】円」とあるのは、「金【正しい金額】円」に訂正する。なお、見積書番号【 】に基づく金額が正しい金額である。
一言解説:根拠資料の番号まで引用することで、訂正の客観的根拠を明示します。
D節:当事者名や日付の誤記を訂正する場合
形式的な誤記の場合、簡潔な訂正条項とします。
第2条(修正例) 原契約表題部中「【誤った当事者名又は日付】」とあるのは、「【正しい当事者名又は日付】」に訂正する。
一言解説:形式的誤記は実質的内容に影響しないことが多いため、簡潔な記載で足りる場合があります。
E節:訂正が複数箇所にわたる場合
複数の誤記をまとめて訂正する場合、一覧表形式で整理します。
第2条(修正例) 原契約の下記各箇所を、別紙訂正一覧表のとおり訂正する。 (1) 第【 】条 (2) 第【 】条 (3) 別紙【 】
一言解説:訂正箇所が多い場合は一覧表を用いることで見落としを防ぎ、後日の確認も容易になります。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面
契約書の作成過程における単純な誤字脱字、金額や日付の入力誤り、当事者名の誤記などが後日判明した場合に、当事者双方の合意により訂正する場合に使用します。誤記が明白であり、双方に争いがない場合に適した簡便な方法です。
使ってはいけない場面
誤記の訂正という体裁を取りながら、実質的には契約締結後の事情変更に基づく内容変更を行おうとする場合には、本書式をそのまま用いるべきではありません。この場合、訂正の遡及効を認めると、契約締結時点では存在しなかった合意内容が遡って存在したことになり、第三者との関係や税務上の処理に影響を及ぼすおそれがあります。実質的な内容変更については、通常の契約変更合意書を用いるべきです。
根拠法令
契約書の訂正は、当事者間の合意に基づく確認的な行為として民法第521条以下の契約自由の原則のもとで行われます。誤記の訂正が当事者の真意の確認にとどまる場合、錯誤に関する民法第95条の考え方(表示と効果意思の不一致)も背景として理解しておくと有用です。訂正により契約金額が変動する場合、印紙税法上の取扱い(変更契約書としての課税文書該当性)にも留意が必要です。
よくある失敗と条項上の対策
- 誤記なのか実質的な内容変更なのかを区別せずに訂正合意を行い、後日「合意なく契約内容が変更された」との主張を招く失敗があります。対策として第3条・第5条で訂正の性質を明確にします。
- 訂正の遡及効を明記せず、訂正前の期間についてどちらの内容が適用されるか不明確になる失敗があります。対策として第4条で遡及効を明記します。
- 誤記に基づき既に履行された事項(過大な代金の支払い等)の精算方法を定めずに訂正のみを行い、金銭面の紛争が残る失敗があります。対策として第6条のように既履行部分の取扱いを明記します。
さらに、訂正合意書自体を口頭のやり取りやメールの添付ファイルだけで済ませ、原契約と紐づけて保管しないまま散逸させてしまう失敗も見られます。原契約の付属書類として一体的に管理することで、将来の契約更新時や監査時に訂正の経緯を確認できるようにしておくことが望まれます。
誤記の内容や訂正が契約の重要な部分に及ぶかどうかによって適切な処理方法は異なるため、個別事案は専門家に確認のうえ、単純訂正で足りるか契約変更手続によるべきかを判断してください。
第4部: 使用前チェックリスト
- 誤記の箇所(条項番号)を正確に特定したか
- 誤った記載と正しい記載を対比して明記したか
- 訂正が確認的なものか実質的変更かを整理したか
- 訂正の遡及効について明記したか
- 訂正の根拠資料(見積書、議事録等)を確認したか
- 既履行部分への影響と精算方法を明記したか
- 訂正方法(原本への追記か別書面か)を決定したか
- 第三者に提出済みの契約書写しへの対応を検討したか
- 印紙税の課税文書該当性を確認したか
- 原契約の付属書類として適切に保存したか
- 記名押印者の代表権限を確認したか
- 社内の契約管理台帳を更新したか