新規の取引先や送金先が制裁対象に該当しないかを確認する社内手順書。外為法に基づく資産凍結措置、国連安保理決議の制裁リストおよびOFAC規制との照合方法を示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
経済制裁・輸出禁止対象者スクリーニング手順書
第1部: 書式本文
本書式は、新規の取引先、送金先、荷受人、船会社等が経済制裁の対象者(資産凍結対象者等)に該当しないかを取引開始前に確認するための社内手順を定める記載項目一覧形式の書式である。経済制裁対象者リストは日本国内の告示のみならず国連安全保障理事会決議や米国OFAC規制など複数の法域にまたがって更新されるため、単一のリストとの照合のみで足りると考えるべきではなく、取引の性質に応じて確認範囲を都度見直す必要がある。
1. スクリーニングの対象
- 対象取引:【新規契約締結/新規送金/新規荷受人指定/既存取引先の定期再確認】
- 対象当事者:【契約相手方、実質的支配者、送金先金融機関、荷受人、船舶・航空機の運航者等】
- スクリーニング実施日:【西暦年月日】
- 実施担当者(コンプライアンス担当者):【氏名/部署】
2. 照合対象リストの特定
- 財務省告示に基づく資産凍結等の措置の対象者リスト(外為法16条・21条関連):【確認済み/該当なし】
- 経済産業省告示に基づく輸出禁止対象者(外国ユーザーリスト等):【確認済み/該当なし】
- 国連安全保障理事会決議に基づく制裁対象者リスト(北朝鮮、イラン等の各決議関連):【確認済み/該当なし】
- 米国財務省OFAC規制における特別指定国民等リスト(SDNリスト):【確認済み/該当なし】
- その他関連国・地域の制裁リスト(EU、英国等):【確認要否の判断/確認済み】
3. 照合方法
- 使用ツール:【外部スクリーニングシステム名/手動照合】
- 表記ゆれ対応:【氏名・法人名のローマ字表記ゆれ、旧字・別名(エイリアス)の考慮有無】
- あいまい検索の実施:【実施/未実施、一致度の閾値】
- 間接保有(50%ルール)の確認:【制裁対象者が議決権の50%以上を保有する法人の有無を確認】
4. 該当時の対応
- 一致候補の有無:【なし/あり(候補者名・一致度)】
- 一致候補ありの場合の一次対応:【取引保留、追加情報による本人特定】
- 誤検知(偽陽性)の判断根拠:【生年月日、所在地、パスポート番号等による識別】
- 真の該当が疑われる場合の対応:【取引の即時停止、社内法務・コンプライアンス部門への報告、必要に応じ財務省・関係当局への確認】
5. 記録の保存
- 記録媒体:【スクリーニング結果画面のキャプチャ、照合ログ】
- 保存期間:【7年間 等、社内規程に定める期間】
- 承認欄:【実施担当者印/コンプライアンス責任者印】
6. 定期再確認
- 再確認の頻度:【既存取引先について年1回/リスト更新の都度】
- 再確認結果の反映先:【取引先マスタ、与信管理システム等】
- リスト更新の情報源:【財務省・経済産業省の告示発出情報、OFAC更新通知の購読状況】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 輸出企業向け
貨物の輸出取引において、荷受人や需要者のスクリーニングを行う場合の文例。
修正条文例:「輸出企業は、船積み指示書を発行する前に、荷受人、通知先および最終需要者の氏名・名称を、資産凍結等の措置の対象者リストおよび外国ユーザーリストと照合し、一致候補がある場合は船積みを保留のうえ、社内のコンプライアンス部門の確認を経てから出荷可否を決定するものとする。」
一言解説:船積み直前のタイミングでのスクリーニングを手順に組み込むことで、取引開始時点との間に生じる需要者情報の変化を捕捉できる。
B. コンプライアンス担当者向け
複数の事業部門から寄せられる取引先候補を横断的に審査する立場での文例。
修正条文例:「コンプライアンス担当者は、事業部門から取引先候補の情報提供を受けた場合、遅くとも契約締結の3営業日前までにスクリーニングを完了し、一致候補が生じた場合は事業部門に対し契約締結の延期を要請する権限を有する。」
一言解説:審査完了までの期限とコンプライアンス部門の権限を明記することで、事業部門の都合による審査省略を防止できる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本手順書は、新規取引先との契約締結前、新規の送金や荷受人指定の前、および既存取引先の定期的な再確認の場面で使用する。既に取引が実行され資金の移動や貨物の引渡しが完了した後にスクリーニングを行っても、資産凍結措置違反の是正にはならず、事後的な使用は本来の予防目的を果たさない点に留意が必要である。
根拠法令は、外国為替及び外国貿易法(外為法)16条および21条に基づき財務大臣が指定する資産凍結等の措置の対象者との間の支払等を規制する制度である。対象者リストは財務省告示により随時更新され、その多くは国連安全保障理事会決議(北朝鮮に関する決議第1718号系統、イランに関する決議等)に基づく指定を国内法令に取り込んだものである。加えて、米国と関連する決済(ドル建て送金、米国系金融機関の経由等)を伴う取引については、米国財務省外国資産管理室(OFAC)が管理する特別指定国民等リスト(SDNリスト)への該当性も別途確認する必要があり、日本企業であっても取引の構造によってはOFAC規制の域外適用を受ける可能性がある。
実務でよくある失敗として、第一に、取引先名のローマ字表記ゆれ(姓名の順序違い、ミドルネームの省略、旧字体の相違等)により、実際には制裁対象者であるにもかかわらず完全一致検索で検知できないケースがある。対策として第3項のように、あいまい検索の実施とその一致度閾値を手順として明記し、表記ゆれを前提とした照合を行うことが有効である。第二に、取引相手方の法人自体は制裁対象者リストに掲載されていないものの、その議決権の過半数を制裁対象者が保有しているために実質的に規制対象となる、いわゆる間接保有(50%ルール)の見落としがある。対策として第3項に間接保有の確認欄を設けている。第三に、スクリーニングを実施した記録を保存せず、後日の当局照会に対して実施の証跡を示せないケースがある。対策として第5項のように、照合ログの保存媒体と保存期間を具体的に定める運用としている。第四に、取引開始時点では一致なしと判断されたものの、その後の制裁リスト更新によって新たに対象者に指定された事実に気づかず取引を継続してしまうケースもある。対策として第6項のように、既存取引先について定期的な再確認の頻度とリスト更新情報の収集経路をあらかじめ定めておくことが望ましい。制裁対象者への該当性や域外適用の有無の判断は取引の構造や決済経路によって結論が左右されやすいため、疑わしい取引については速やかに専門家へ相談する体制を整えておくべきである。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] スクリーニング対象(契約相手方、実質的支配者、送金先、荷受人等)を網羅したか
- [ ] 財務省告示に基づく資産凍結等の措置の対象者リストと照合したか
- [ ] 国連安全保障理事会決議に基づく制裁対象者リストとの関連を確認したか
- [ ] 米国OFAC規制のSDNリストとの照合が必要な取引かを判断したか
- [ ] 氏名・法人名の表記ゆれを考慮したあいまい検索を実施したか
- [ ] 間接保有(50%ルール)による実質的該当性を確認したか
- [ ] 一致候補が生じた場合の一次対応手順を定めたか
- [ ] 誤検知(偽陽性)を排除するための本人識別情報の照合を行ったか
- [ ] 真の該当が疑われる場合の社内報告・当局確認のフローを定めたか
- [ ] スクリーニング完了までの期限を事業部門との間で共有したか
- [ ] 照合ログ・実施記録の保存媒体と保存期間を定めたか
- [ ] 既存取引先についての定期再確認の頻度を定めたか