継続的に商品を売買する企業間取引で個別契約に共通する条件を定める基本契約書。民法第555条の売買規定を前提に、検査・所有権移転・危険負担・解除事由を整理します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
継続的売買取引基本契約書
第1部: 書式本文
【売主商号】(以下「甲」という)と【買主商号】(以下「乙」という)は、甲が乙に対して継続的に商品を売り渡す取引に関し、次のとおり基本契約(以下「本契約」という)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、甲乙間で反復継続して行われる【対象商品】の売買取引(以下「個別取引」という)に共通して適用される基本的条件を定めることを目的とする。
第2条(個別契約の成立) 1. 個別取引は、乙が品名、数量、単価、納期、納入場所等を記載した注文書を甲に交付し、甲がこれを承諾することにより成立する(以下「個別契約」という)。 2. 甲が注文書受領後【3】営業日以内に諾否を回答しない場合の取扱いは、別途協議のうえ書面で定める。 3. 個別契約の内容が本契約の定めと異なる場合は、個別契約の定めを優先する。
第3条(納品) 甲は、個別契約に定める納期までに、指定の納入場所において商品を引き渡す。
第4条(検査) 1. 乙は、商品受領後【10】営業日以内に本契約及び個別契約所定の検査基準に基づき検査を行い、結果を甲に通知する。 2. 前項の期間内に乙が通知をしないときは、当該商品は検査に合格したものとみなす。 3. 検査の結果、数量不足又は品質の契約不適合が発見されたときは、乙は甲に対しその旨を通知し、追完、代替品納入又は代金減額を請求できる。
第5条(所有権の移転) 商品の所有権は、乙が前条の検査に合格した時に甲から乙に移転する。ただし、代金完済まで所有権を甲に留保する旨を個別契約で別途定めた場合はこの限りでない。
第6条(危険負担) 商品の滅失、毀損等の危険は、商品が乙の指定する納入場所に納入され、乙が受領するまでは甲が負担し、受領後は乙が負担する。
第7条(代金及び支払方法) 乙は、個別契約に定める代金を、毎月末日締め、翌月【末日】までに甲の指定する銀行口座へ振込む方法により支払う。振込手数料は乙の負担とする。
第8条(契約不適合責任) 1. 納入された商品が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、乙は、甲に対し、履行の追完、代金の減額、損害賠償及び契約の解除を請求することができる。 2. 前項の請求は、乙が契約不適合を知った時から【1】年以内に甲にその旨を通知した場合に限り行うことができる。
第9条(知的財産権) 商品に関する特許権、意匠権その他の知的財産権は、別段の合意がない限り甲に帰属する。
第10条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約及び個別契約の履行に関して知り得た相手方の技術上・営業上の秘密情報を、相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示又は漏洩してはならない。
第11条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己及び自己の役員が反社会的勢力に該当しないこと及び将来にわたっても該当しないことを表明し、保証する。
第12条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約若しくは個別契約に違反し、相当期間を定めた催告後も是正されないとき、又は差押え、破産手続開始の申立てその他信用不安が生じたときは、催告を要せず本契約及び個別契約の全部又は一部を解除できる。
第13条(有効期間) 本契約の有効期間は締結日から【1】年間とし、期間満了の【1】か月前までにいずれの当事者からも書面による終了の申出がないときは、さらに【1】年間自動更新するものとし、以後も同様とする。
第14条(協議事項) 本契約に定めのない事項又は疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。
第15条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、【●●地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 売主(供給者)向け 検査みなし規定を短期化し、契約不適合責任の通知期間を制限することで長期の追及リスクを避ける。第4条2項を「受領後【5】営業日以内」に短縮し、第8条2項を「契約不適合を知った時から【6】か月以内」に変更する例が典型的である。また第5条の所有権移転時期を「代金完済時」とする所有権留保条項を明記し、代金回収前の商品流出リスクに備える。
B. 買主(仕入側)向け 検査期間を実務上余裕のある長さに延ばし、契約不適合責任の通知期間も長期化する。第4条1項を「受領後【20】営業日以内」とし、第8条2項を「契約不適合を知った時から【2】年以内」とする。さらに第6条の危険負担について、検査合格まで甲(売主)が負担する旨を明記し、検査不合格品の返送費用を甲負担とする条項を追加することが多い。
C. 中立・折衷案 検査期間は「10営業日」を基準としつつ、みなし合格規定と契約不適合の通知期限(1年)を民法の原則(民法566条の1年間の権利保存期間の考え方)に沿って設定する。所有権移転時期は検査合格時とし、危険負担も受領時を基準とすることで、双方に予見可能性のあるバランスを取る。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、同一当事者間で商品の種類・取引条件が概ね共通し、個別契約を反復して締結する売買取引に用いる。単発かつ一回限りの売買や、請負・準委任の性質を含む取引(製作物供給契約等)には適さず、その場合は個別の取引実態に応じた契約類型を検討すべきである。
根拠法令としては、民法第555条(売買の意義)、第562条から第564条まで(契約不適合責任としての追完請求、代金減額請求、損害賠償・解除)、第567条(危険の移転)を基本の枠組みとする。継続的取引であることを踏まえ、個別契約の成立要件(申込みと承諾、民法第522条)を明確化する必要がある。
実務でよくある失敗として、第一に検査基準や検査期間を定めずに「検査の上受領する」とのみ記載し、契約不適合の主張時期をめぐる紛争が生じる例が多い。対策として第4条のように検査期間とみなし合格規定を具体的数値で明記する。第二に、所有権移転時期と危険負担の基準時が一致していないため、商品滅失時の帰責が不明確になる例がある。第5条・第6条のように移転時期と負担の基準時を明確に対応させることが望ましい。第三に、自動更新条項があるにもかかわらず解除・終了の意思表示手続を定めていないため、更新拒絶の通知漏れによる意図しない契約継続が起きる例がある。第13条のように更新拒絶の通知期限を明記すべきである。なお、継続的取引の一方的解除・更新拒絶については、判例上「やむを得ない事由」の要否が問題となる場合があるため、契約類型や取引の実態に応じて個別事案を弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト・確認事項
- [ ] 対象商品の範囲・仕様が個別契約または別紙で特定されているか
- [ ] 検査基準・検査方法・検査期間が具体的数値で定められているか
- [ ] みなし合格規定の起算点(受領日・検収日等)が明確か
- [ ] 所有権移転時期と危険負担の基準時の整合性が取れているか
- [ ] 所有権留保条項の要否を検討したか(売主側の場合)
- [ ] 代金の支払サイト・支払方法・振込手数料負担者が明記されているか
- [ ] 契約不適合責任の通知期間が自社の立場に照らして適切か
- [ ] 秘密保持義務の存続期間(契約終了後の期間)が定められているか
- [ ] 反社会的勢力排除条項が最新のひな形に沿っているか
- [ ] 自動更新条項の更新拒絶通知期限・方法が明記されているか
- [ ] 合意管轄裁判所が自社にとって不利にならないか
- [ ] 個別契約の様式(注文書・受注書等)を別途整備しているか