建設会社が油圧ショベルやクレーン等の建設機械を借り受ける際の賃貸借契約書。労働安全衛生法の就業制限と機械の点検義務を踏まえ、運転者付き貸与と整備責任を分ける。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
建設機械賃貸借契約書
第1部: 書式本文
建設機械賃貸借契約書
【リース会社名】(以下「甲」という。)と【建設業者名】(以下「乙」という。)は、甲が乙に対し建設機械を賃貸することについて、次のとおり賃貸借契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的物) 甲は乙に対し、【機械種別(油圧ショベル・クレーン等)、型式、製造番号、能力・仕様】記載の建設機械(以下「本機械」という。)を賃貸し、乙はこれを借り受ける。
第2条(賃貸借期間及び賃料) 1. 賃貸借期間は【年月日】から【年月日】までとする。 2. 賃料は月額金【 】円(消費税別)とし、乙は毎月末日までに翌月分を甲の指定口座に振り込む方法により支払う。
第3条(貸与形態の区分) 1. 本契約における本機械の貸与形態は、次のいずれかとし、個別合意書において明示する。 (1) オペレーター付き貸与(甲が本機械を操作する運転者を派遣する形態) (2) 機械単独貸与(運転者を伴わず、乙が自らの労働者等に操作させる形態) 2. オペレーター付き貸与の場合、運転者に対する作業上の指揮命令は乙が行うものとし、本項の関係が労働者派遣法上の労働者派遣に該当することを踏まえ、甲乙は同法に定める手続を遵守する。
第4条(就業制限資格の確認) 1. 機械単独貸与の場合、乙は本機械の操作に労働安全衛生法上必要とされる技能講習修了資格又は特別教育修了資格を有する者を従事させるものとし、当該資格を証する書面を甲に提示する。 2. オペレーター付き貸与の場合、甲は前項の資格を有する運転者を配置し、その資格を証する書面を乙に提示する。
第5条(点検及び整備) 1. 甲は、本機械の引渡し前に、労働安全衛生法関係法令に定める特定自主検査その他の法定検査を実施し、その結果を乙に提示する。 2. 乙は、貸与期間中、本機械の作業開始前の日常点検を実施し、異常を認めたときは直ちに使用を中止し甲に報告する。 3. 法定検査の実施主体及び時期は、賃貸借期間の長さに応じて甲乙別途協議のうえ定める。
第6条(引渡し及び返還) 1. 甲は本機械を【引渡場所】において乙に引き渡す。 2. 乙は賃貸借期間満了時又は解除時に、本機械を通常の使用による損耗を除き引渡し時と同様の状態で甲に返還する。
第7条(故障及び事故発生時の対応) 1. 貸与期間中に本機械に故障が生じたときは、乙は直ちに甲に報告し、使用を中止する。 2. 故障の原因が本機械の経年劣化又は甲の点検整備の不備によるものであるときは、修理費用は甲の負担とする。 3. 故障の原因が乙又はその使用する者の操作方法の誤り、過積載その他の不適切な使用によるものであるときは、修理費用は乙の負担とする。 4. 前2項の原因の切り分けが困難な場合、甲乙は整備記録及び稼働記録に基づき協議のうえ負担割合を定める。
第8条(事故発生時の責任分担) 本機械の稼働に伴い第三者に損害を与えたときの賠償責任は、機械単独貸与の場合は乙が、オペレーター付き貸与の場合は運転者の使用者である甲が、それぞれ第一次的に負担するものとし、乙の指示に起因する事故についてはこの限りでない。
第9条(保険) 甲は本機械について機械保険を付保し、乙は本機械の稼働に係る第三者賠償責任保険等の加入状況を甲に開示する。
第10条(禁止事項) 乙は、甲の書面による事前の承諾なく、本機械を転貸し、又は担保に供してはならない。
第11条(解除) 甲又は乙が本契約に違反し、相当の期間を定めた催告後もこれが是正されないときは、相手方は本契約を解除できる。
第12条(協議事項) 本契約に定めのない事項について疑義が生じたときは、甲乙誠実に協議して解決する。
第13条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上を証するため本契約書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
【締結日】 甲(建設機械リース会社)【住所・商号・代表者名・印】 乙(借主・建設業者)【住所・商号・代表者名・印】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 建設機械リース会社に有利な修正例
A-1. 日常点検不履行時の免責明確化 「乙が第5条第2項の日常点検を怠り、又は異常を認めたにもかかわらず使用を継続したことに起因して生じた故障については、甲は修理費用及び稼働停止による逸失利益について一切の責任を負わない。」 一言解説: 日常点検の実施主体が借主であることを前提に、点検懈怠時の免責範囲を明確にし、経年劣化との切り分け紛争を予防する。
A-2. 資格未確認での操作に対する損害賠償請求権 「乙が第4条第1項の資格を有しない者に本機械を操作させたことにより生じた事故又は損害については、乙は甲に対しその全額を賠償する。」 一言解説: 就業制限資格の確認を怠った借主側の重大な義務違反について、賠償責任の所在を明文化する。
B. 借主(建設業者)に有利な修正例
B-1. 法定検査未実施機械の引渡拒否権 「甲は、直近の特定自主検査その他法定検査の実施記録を乙に提示できない本機械を引き渡してはならず、これに違反して引き渡された本機械に起因する事故及び工期遅延について、甲が責任を負う。」 一言解説: 法定検査の実施主体が原則としてリース会社側にあることを前提に、未検査機械の引渡しリスクを甲に負わせる修正である。
B-2. 経年劣化推定条項 「本機械の使用年数が【 】年を超える場合において故障が生じたときは、乙の重大な操作ミスが客観的資料により認められない限り、当該故障は経年劣化によるものと推定する。」 一言解説: 原因の切り分けが困難な故障について、借主に過度な立証負担が生じないよう推定規定を置く修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面の解説 本書式は、建設会社が油圧ショベル、クレーン等の建設機械を一定期間借り受ける取引で用いる。運転者付き貸与とするか機械単独貸与とするかにより指揮命令関係が大きく異なるため、実態と異なる区分を書面上選択して労働者派遣法の許可・届出義務を回避する目的で用いてはならない。また短期の単発貸与で継続利用の予定がない場合は、より簡易な単発の賃貸借申込書で足りることが多い。
根拠法令の解説 建設機械の賃貸借そのものは民法第601条に定める賃貸借契約として規律される。運転者付き貸与を行う場合、運転者に対する指揮命令を借主が行う実態があると労働者派遣法上の労働者派遣に該当し得るため、同法に定める許可及び派遣契約上の記載事項の遵守が必要となる。建設機械の操作については、労働安全衛生法に基づく車両系建設機械の運転の業務に係る技能講習修了又は特別教育修了の資格が必要とされ、クレーンの運転等についてはクレーン等安全規則に基づく免許又は技能講習の修了が求められる。また事業者は、車両系建設機械等について定期に自主検査(特定自主検査を含む。)を実施する義務を負う。
実務でよくある失敗と対策の解説 第一に、運転者付き貸与であるにもかかわらず借主側が運転者に直接作業指示を出し続け、指揮命令関係の実態と契約書上の区分が食い違い、労働者派遣法上の適正化の観点及び労災保険の適用関係が不明確になる例がある。第3条のように貸与形態を明示し、指揮命令の帰属を条文上固定することが対策になる。第二に、日常点検と特定自主検査等の法定検査について、どちらの当事者がいつ実施するかが契約書に記載されないまま貸与が開始され、検査記録の不備が発覚する例がある。第5条のように点検主体と時期を分けて明記することが有効である。第三に、貸与中に生じた故障について、経年劣化によるものか借主の使用方法によるものかを判断する客観的基準がなく、修理費用の負担割合をめぐって紛争化する例がある。第7条及びB-2のように、整備記録・稼働記録を基準とする協議手続や推定規定を設けることが望ましい。個別の事案については専門家(弁護士等)に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 貸与形態(オペレーター付きか機械単独か)を契約書上明示したか
- [ ] オペレーター付き貸与の場合、労働者派遣法上の許可・手続の要否を確認したか
- [ ] 機械単独貸与の場合、操作者の技能講習・特別教育修了資格を確認する条項があるか
- [ ] クレーン等を対象とする場合、クレーン等安全規則上の資格要件を確認したか
- [ ] 特定自主検査等の法定検査の実施主体及び時期を明記したか
- [ ] 日常点検の実施主体(借主)と報告手続を明記したか
- [ ] 故障発生時の原因切り分け手続(整備記録・稼働記録の確認)を定めたか
- [ ] 経年劣化と不適切使用の費用負担基準を明確にしたか
- [ ] 第三者事故発生時の賠償責任の第一次負担者を定めたか
- [ ] 機械保険及び第三者賠償責任保険の加入状況を相互に確認する条項があるか