サロンブランドが自社化粧品の企画を製造業者へ委託する際のOEM製造契約書。薬機法の製造販売業許可と表示広告規制を踏まえ、全成分表示と回収時の責任分担を定める。

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化粧品OEM製造委託契約書

第1部: 書式本文

【委託者名(サロン・ブランド運営者)】(以下「甲」という。)と【受託製造業者名】(以下「乙」という。)は、甲が企画するオリジナル化粧品(以下「本製品」という。)の製造委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 甲は乙に対し、本製品【製品名・剤形】の企画・処方に基づく製造を委託し、乙はこれを受託する。

第2条(許可・届出の分担) 甲は化粧品の製造販売業許可を取得し、化粧品製造販売届出及び品質保証・安全管理体制(GQP・GVP相当の体制)を自らの責任で整備する。乙は化粧品の製造業許可を取得し、当該許可の範囲内で製造を行う。両者は自己の許可・届出事項に変更が生じた場合、速やかに相手方へ通知する。

第3条(処方及び全成分表示) 本製品の処方は【甲が指定/甲乙協議のうえ乙が提案】するものとし、乙は薬機法上の全成分表示義務に従い、配合成分を包装等に表示できるよう成分情報を甲に開示する。処方変更を行う場合は事前に甲乙協議のうえ書面で合意する。

第4条(製造委託の範囲) 乙が行う業務範囲(原料調達、製造、充填、一次包装等)及び甲が行う業務範囲(表示ラベル最終確認、二次包装、出荷判定等)を別紙で定める。

第5条(表示・広告に関する責任分担) 容器・包装の表示内容及び販売時の広告表現は甲の責任において薬機法上の効能効果の標榜範囲(化粧品として認められる範囲)を遵守して作成する。乙は、製造仕様書との整合性について確認に協力する。

第6条(品質管理及び検査) 乙は製造ロットごとに品質検査を実施し、検査記録を甲に提出する。甲は必要に応じて乙の製造施設の立入確認を求めることができる。

第7条(発注・納期・検収) 甲の発注方法、乙の納期、甲による検収基準及び不合格品の取扱いを定める。委託代金の支払期日、下請代金支払遅延等防止法が適用される場合の支払期日規制(役務提供を受けた日から起算して60日以内)についても留意する。

第8条(回収(リコール)時の責任分担) 本製品に品質不良、健康被害の発生等により自主回収を要する事態が生じた場合の対応手順、費用負担割合、原因究明への協力義務を定める。原因が処方に起因する場合と製造工程に起因する場合とで負担割合を区別する旨を明記する。

第9条(製造物責任) 本製品の欠陥に起因して消費者等の生命・身体・財産に損害が生じた場合の製造物責任法上の責任分担につき、原因が処方設計にあるときは甲が、製造工程の瑕疵にあるときは乙が、それぞれ第一次的に対応する旨を定める。

第10条(知的財産権) 本製品の処方、ブランド名、パッケージデザインに関する知的財産権の帰属を定める。乙が保有する製造ノウハウについては乙に留保される旨を確認する。

第11条(秘密保持) 甲乙は、本契約に関連して知り得た処方、製造ノウハウ、取引条件等の秘密情報を第三者に開示せず、本契約目的以外に使用しない。

第12条(最小ロット・在庫) 最小製造ロット数、原料の最小発注単位、契約終了時の残存原料・仕掛品の取扱いを定める。

第13条(契約期間及び解除) 契約期間、中途解約の予告期間、重大な契約違反時の解除事由を定める。

第14条(協議事項) 本契約に定めのない事項は甲乙誠実に協議のうえ解決する。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 委託者(サロン・ブランド)の立場から

A-1 回収費用負担の限定 「回収の原因が乙の製造工程における瑕疵に起因することが判明した場合、回収費用は乙が負担する」との条項を明記することで、処方設計側の甲が製造起因の不具合について費用を過大に負担するリスクを避けられる。

A-2 表示確認プロセスの導入 「乙は出荷前に、表示ラベルの全成分表示及び薬機法上の標榜範囲について甲に最終確認を求める」との条項を加えることで、乙側の表示ミスによる薬機法違反リスクを事前にチェックできる。

B. 受託製造業者の立場から

B-1 処方起因リスクの免責 「甲が指定した処方に起因する品質不良・健康被害について、乙は製造工程上の過失がない限り責任を負わない」との条項を明記することで、甲の処方指定に従っただけの乙が、処方自体の欠陥による責任まで負わされることを防げる。

B-2 広告表現に関する免責 「本製品の広告・販促物における効能効果の表現は甲の責任において薬機法に適合させるものとし、乙は当該表現の適法性について保証しない」との条項を加えることで、乙が関与しない販売時の広告表現による薬機法違反リスクから乙を切り離せる。

B-3 最小ロット未消化時の取扱い明確化 「甲が最小ロット数を発注しなかった場合の追加費用又は単価調整については別紙単価表による」と明記することで、小ロット企画の多い個人ブランド案件において、乙が採算割れの製造を強いられる事態を防げる。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本書式は、美容サロンやブランド運営者が自社ブランドの化粧品(洗顔料、化粧水、美容液等)の企画を行い、製造そのものは外部の製造業者に委託するOEM(相手先ブランドによる製造)の場面で使用する。医薬部外品や医薬品に該当する製品の製造委託、あるいは化粧品の製造販売業許可を甲が保有しないまま乙名義でのみ販売を行う形態については、許可区分や責任主体の整理が本書式の前提と異なるため、別途の検討を要する。

根拠法令としては、医薬品医療機器等法(化粧品製造販売業許可・製造業許可の区分、製造販売業者が負う品質保証・安全管理の体制整備義務、全成分表示義務、化粧品として認められる効能効果の標榜範囲を超える広告表現の禁止)、製造物責任法(製品の欠陥に起因する損害についての無過失責任、処方設計上の欠陥と製造上の欠陥の区別)、下請代金支払遅延等防止法(委託者が資本金要件等に該当する場合の代金支払期日規制及び下請事業者への不当な減額・返品の禁止)が関係する。

実務でよくある失敗として、第一に、甲が化粧品製造販売業許可を持たないまま、乙(製造業許可のみ)に販売主体としての責任まで期待してしまい、許可区分の齟齬が後日発覚するケースがある。対策として、契約冒頭で甲乙それぞれの許可・届出事項を確認し明記する。第二に、自主回収が発生した際の費用負担割合を事前に定めておらず、処方起因か製造起因かの原因究明で対立するケースがある。対策として、原因の切り分け基準と暫定費用負担のルールをあらかじめ条項化する。第三に、広告・パッケージの効能効果表示が薬機法上の化粧品の標榜範囲を超え、景品表示法・薬機法上の指摘を受けるケースがある。対策として、表示・広告の最終責任者を甲に一本化しつつ、出荷前の相互確認プロセスを設ける。

第四に、最小ロット数や原料の最小発注単位について契約締結後に初めて乙から提示され、甲が想定していた小規模スタートアップ的な販売計画と齟齬が生じるケースがある。対策として、契約締結前の見積り段階で最小ロット・原料単位・追加費用の条件を書面で確認し、契約書上にも明記する。

許可区分や表示規制の当てはめは製品カテゴリ(化粧品か医薬部外品か)によっても異なるため、個別の製品設計については専門家へ確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 甲の化粧品製造販売業許可及び乙の製造業許可の有無を確認したか
  • [ ] 甲乙の業務範囲(処方設計・製造・表示・出荷判定)を別紙で明確にしているか
  • [ ] 全成分表示に必要な成分情報の開示方法を定めているか
  • [ ] 表示・広告の薬機法適合性の最終確認プロセスを設けているか
  • [ ] 品質検査の実施主体及び検査記録の提出方法を定めているか
  • [ ] 自主回収時の費用負担割合(処方起因・製造起因の切り分け)を定めているか
  • [ ] 製造物責任法上の責任分担を条項化しているか
  • [ ] 下請代金支払遅延等防止法の適用有無と支払期日を確認したか
  • [ ] 最小ロット数及び契約終了時の残存原料の取扱いを定めているか
  • [ ] 処方・製造ノウハウに関する秘密保持及び知的財産権の帰属を明記しているか