寄附の受入基準と使途、記録管理を定める規程です。受入れを辞退する場合の判断基準や、匿名希望への配慮も規定します。記載例と注記を添えており、初めての担当者でも作成できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
寄附金等取扱規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、【法人名】(以下「法人」という。)が受け入れる寄附金その他の資産(以下「寄附金等」と総称する。)の受入基準、使途及び記録管理に関する事項を定め、寄附者との信頼関係を維持しつつ、寄附金等の適正な受入れ及び管理を図ることを目的とする。
第2条(適用範囲) 本規程は、金銭による寄附のほか、物品、有価証券、不動産及び遺贈による寄附その他名目のいかんを問わず法人が対価なく受け入れる資産全般に適用する。
第3条(定義) 1. 「一般寄附」とは、使途を特定しない寄附をいう。 2. 「指定寄附」とは、寄附者が使途を特定して行う寄附をいう。 3. 「遺贈寄附」とは、遺言により法人に対して行われる寄附をいう。
第4条(受入れの基本方針) 法人は、法人の目的及び事業に資すると認められる寄附金等を受け入れることを基本とし、寄附者の意思を尊重しつつ、法人の自主性及び中立性を損なわない範囲で受入れの可否を判断する。
第5条(受入れの審査) 1. 一定額(【〇〇万円】)以上の寄附又は不動産・有価証券等の現物寄附については、事務局長が受入れの可否を審査し、理事会に報告する。 2. 遺贈寄附については、負担(債務・条件等)の内容を確認の上、理事会の承認を経て受入れの可否を決定する。
第6条(受入れを辞退する場合の基準) 法人は、次の各号のいずれかに該当すると認められる場合、寄附の受入れを辞退することができる。 (1)反社会的勢力からの寄附その他法人の社会的信用を毀損するおそれがある場合 (2)寄附に付された条件が法人の目的又は事業運営と相容れない場合 (3)寄附の受入れにより特定の個人又は団体に対し特別の利益を与える結果となるおそれがある場合 (4)不動産その他の現物寄附について、維持管理費用が受入れによる便益を著しく上回ると見込まれる場合 (5)その他理事会が受入れを不適当と認める場合
第7条(使途の特定と一般寄附の取扱い) 1. 指定寄附は、寄附者が指定した使途にのみ充当するものとし、使途を変更する場合は、あらかじめ寄附者の同意を得るものとする。 2. 一般寄附は、法人の事業運営全般に充当することができる。
第8条(匿名寄附への対応) 1. 寄附者が氏名等の公表を希望しない場合、法人は、寄附者名簿、年次報告書その他の公表資料において当該寄附者の氏名を匿名として取り扱うものとする。 2. 匿名を希望する寄附者についても、寄附金税制上の証明書発行その他法令上必要な範囲では、寄附者情報を記録し、適切に管理するものとする。
第9条(寄附者情報の管理) 寄附者に関する個人情報は、個人情報の保護に関する法律その他の関係法令及び法人が別途定める個人情報保護規程に従って取り扱うものとする。
第10条(記録の作成及び保存) 1. 法人は、寄附の受入れごとに、寄附者名、金額又は評価額、受領日、使途及び審査結果を記載した寄附受入記録を作成する。 2. 前項の記録は、当該事業年度終了後【10年】保存するものとする。
第11条(会計処理) 寄附金等の会計処理は、法人が別途定める経理規程の定めるところによる。
第12条(寄附者への報告) 法人は、指定寄附について、当該事業年度の使途の実績を、寄附者の求めに応じて報告するものとする。
第13条(規程の改廃) 本規程の改廃は、理事会の決議による。
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 法人の立場から
A-1. 第6条の辞退基準を包括的な理事会裁量に寄せる修正
修正例: 「前各号に定めるもののほか、理事会が寄附の受入れを法人の運営上不適当と判断した場合には、理由を明示することなく受入れを辞退することができる。」 解説: 法人の立場からは、辞退理由を個別列挙するほど、列挙事由に該当しない微妙な事案での対応に窮する場面が生じ得る。包括的な裁量条項を残しておくことで柔軟な判断がしやすくなるが、恣意的な運用との批判を避けるため、判断過程を記録する運用と併用することが望ましい。
A-2. 第7条の使途変更手続を法人主導で進めやすくする修正
修正例: 「指定寄附の使途を変更する必要が生じた場合、法人は、変更の理由及び代替の使途案を寄附者に通知し、通知後【〇〇日】以内に異議の申出がないときは、当該変更に同意したものとみなす。」 解説: 使途変更のたびに個別同意を得る運用は事務負担が大きいため、法人としては通知後の異議申出期間を設けたみなし同意方式の方が運用しやすい。ただし寄附者の意思を軽視しているとの評価を避けるため、通知方法及び期間の妥当性には配慮を要する。
B節: 寄附者の立場から
B-1. 第7条の使途変更に事前同意を必須化する修正
修正例: 「指定寄附の使途を変更する場合、法人は、あらかじめ書面又は電磁的方法により寄附者の明示的な同意を得なければならない。同意が得られない場合、法人は、当該寄附金を寄附者に返還するものとする。」 解説: 寄附者の立場からは、指定した使途が守られることが寄附の前提であるため、みなし同意ではなく明示的な同意を要求し、同意が得られない場合の返還ルートまで確保しておくことが望ましい。
B-2. 第12条の報告義務を具体化する修正
修正例: 「法人は、指定寄附について、当該事業年度終了後【3か月】以内に、使途の実績、支出額及び成果の概要を記載した報告書を寄附者に送付するものとする。」 解説: 「求めに応じて報告する」という受動的な規定では、寄附者が報告を得るために自ら請求する負担を負う。寄附者の立場からは、法人側から定期的に報告書を送付する能動的な義務に修正することで、使途の透明性を確保しやすくなる。
場面別バリエーション: 不動産・遺贈による高額寄附の場合
不動産又は遺贈による寄附は、維持管理コストや負担付き遺贈のリスクを伴うため、第5条の審査を「事務局長の審査」から「弁護士等の専門家の意見を踏まえた理事会での個別審査」に格上げし、第6条の辞退基準に「負担の内容が受入れ後の法人運営に過大な影響を及ぼすと見込まれる場合」を追加することが考えられる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面の解説
本書式は、非営利法人が寄附の受入れに関する社内ルールを整備し、受入れの可否判断や使途管理を組織的に行う場面で使用することを想定している。事業の対価として金銭を受け取る協賛契約や、業務委託の性質を持つ助成金の交付を受ける場面には適さず、それぞれ協賛契約書又は助成金に関する契約書等、対価性のある取引としての枠組みで整理すべきである。
根拠法令の解説
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(公益認定法)第5条は、公益認定の基準の一つとして特定の個人又は団体に対し特別の利益を与えないことを求めており、第6条の辞退基準はこの趣旨を反映したものである。また、寄附金等の受入れが収支相償(公益認定法第14条)や遊休財産額の保有制限(公益認定法第16条)に影響を及ぼす場合があるため、高額の寄附を受け入れる際は経理規程との整合を確認する必要がある。寄附者に関する情報の取扱いについては、個人情報の保護に関する法律が適用される。
よくある失敗と対策の解説
第一に、辞退基準を定めないまま寄附を受け入れ、事後的に反社会的勢力との関係が判明して社会的信用を毀損する失敗がある。対策として、第6条に反社会的勢力排除条項を明記し、審査時の確認手順を定める。第二に、指定寄附の使途を法人側の都合で変更したにもかかわらず、寄附者への説明を怠り、信頼関係を損なう失敗がある。対策として、第7条に使途変更の手続と通知方法を明記する。第三に、匿名希望の寄附者情報を誤って公表資料に掲載してしまう失敗がある。対策として、第8条の匿名対応を寄附受入記録の管理項目として明示し、公表資料作成時の確認フローに組み込む。受入れを辞退すべきか否かの個別の判断や、遺贈に伴う負担の法的評価については、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- 寄附の受入対象を金銭のみに限定するか、現物・遺贈まで含めるかを明確にしたか
- 一定額以上の寄附について、審査を行う機関(事務局長・理事会)を明確にしたか
- 反社会的勢力排除条項その他の辞退基準を法人の実情に合わせて具体化したか
- 指定寄附の使途変更手続(同意方式かみなし同意方式か)を明確にしたか
- 匿名希望への配慮を、寄附受入記録上どのように管理するか具体的に定めたか
- 寄附者情報の取扱いについて、既存の個人情報保護規程との整合を確認したか
- 寄附受入記録の保存期間を、経理規程上の証憑保存期間と整合させたか
- 遺贈寄附における負担(債務・条件)の確認手順及び専門家関与の要否を定めたか
- 高額寄附の受入れが収支相償・遊休財産規制に及ぼす影響を確認する手順を設けたか
- 寄附者への使途実績報告の頻度及び方法(能動的送付か請求対応か)を定めたか