分割弁済の遅滞が続いた債務者に対し、契約の期限の利益喪失条項と民法第137条を根拠に残債務全額の即時支払を通告する書面です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
期限の利益喪失通知書
第1部: 書式本文
期限の利益喪失通知書
【通知日付】
【債務者氏名又は名称】 殿 【債務者住所】
【債権者住所】 【債権者氏名又は名称】 ㊞
第1条(通知の趣旨) 債権者は、債務者との間で締結した下記契約(以下「本件契約」という)に基づき分割弁済を認めてきたが、債務者は下記記載の通り分割金の支払を怠り、その状態が継続している。ついては、本件契約【期限の利益喪失条項の条番号】及び民法第137条に基づき、債務者は期限の利益を喪失したことを本書面をもって通知する。
第2条(本件契約の内容) (1) 契約名称:【金銭消費貸借契約書・分割弁済契約書・売買契約書等】 (2) 契約締結日:【契約締結日】 (3) 分割弁済の内容:元金【総額】円を【回数】回に分割し、毎月【支払日】限り金【分割金額】円ずつ支払う (4) 期限の利益喪失条項:第【条番号】条「債務者が分割金の支払を【滞納回数】回以上怠ったときその他別紙記載の事由に該当したときは、債権者からの通知催告を要せず(又は債権者の通知により)当然に期限の利益を喪失し、残債務全額を直ちに支払う」
第3条(期限の利益喪失事由の発生) 債務者は、【滞納開始日】以降、下記の通り分割金の支払を怠っている。 (1) 滞納した分割金の支払期日:【滞納した支払期日一覧】 (2) 滞納回数:【滞納回数】回 (3) この滞納は、前条(4)記載の期限の利益喪失条項に定める事由に該当する。
第4条(残債務の内容) 期限の利益喪失時点における残債務は次の通りである。 (1) 残元金:金【残元金】円 (2) 遅延損害金:金【遅延損害金額】円(年【遅延損害金利率】パーセントの割合による) (3) 合計:金【合計金額】円
第5条(即時一括払いの請求) 債務者は、本書面到達後直ちに(又は【支払期限】日以内に)、前条記載の合計金額を一括して下記口座に支払うものとする。 振込先:【金融機関名・支店名・口座種別・口座番号・口座名義】
第6条(保証人への効力に関する説明) 本件契約に連帯保証人【連帯保証人氏名】が存在する場合、期限の利益の喪失は保証債務にも及び、連帯保証人も残債務全額について直ちに履行の請求を受ける立場となることを付言する。
第7条(履行なき場合の措置) 前条の期限までに支払がない場合、債権者は法的手続(訴訟の提起、支払督促の申立て、又は債務名義がある場合は強制執行の申立て)に着手する。
第8条(遅延損害金の起算日に関する説明) 遅延損害金は、期限の利益喪失時点以降、契約書に定める利率(定めがない場合は法定利率)により発生する。分割弁済中に生じていた各回の遅滞に対する遅延損害金がある場合は、これを別途合算する。
第9条(民法第137条各号の事由に関する説明) 民法第137条は、期限の利益喪失の法定事由として、債務者が破産手続開始の決定を受けたとき(第1号)、担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき(第2号)、債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき(第3号)を定めている。本件の喪失事由がこれらの法定事由に該当する場合は、契約上の特約の有無にかかわらず期限の利益を喪失する。
第10条(連絡先) 本件に関する連絡は下記宛先まで願いたい。 【債権者連絡先(住所・電話番号・メールアドレス)】
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 通知する債権者側で使用する場合
債権者側で作成する場合、第2条(4)の期限の利益喪失条項は、契約書に記載された条項の文言をそのまま正確に引用することが不可欠である。喪失事由が「債権者からの通知を要せず当然喪失する」旨の条項(当然喪失条項)である場合と、「債権者の通知により喪失する」旨の条項(請求喪失条項)である場合とで、本通知書の法的位置づけが異なる点に注意が必要である。当然喪失条項の場合、本通知書は既に生じた喪失の事実を確認的に通知するものとなり、請求喪失条項の場合は、本通知書の到達こそが喪失の効力発生要件となるため、第1条の記載や送付方法(配達証明付内容証明郵便等)をより慎重に選択する必要がある。
B. 通知を受けた債務者側の対応留意点
通知を受けた債務者側は、まず第2条(4)記載の期限の利益喪失条項の内容及び第3条記載の滞納の事実が、契約書及び実際の入金履歴と一致しているかを確認する必要がある。特に滞納回数の数え方(連続滞納か通算滞納か)は契約書ごとに定めが異なるため、条項の文言を精査すべきである。誤解や入金の行き違いにより実際には滞納していない場合は、直ちに証拠(振込明細等)を添えて反論することが重要である。他方、実際に滞納の事実がある場合は、残債務の一括請求に応じることが困難であれば、分割弁済の再交渉や、連帯保証人がいる場合はその影響についても速やかに情報共有することが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、分割弁済契約を締結した債務者が支払を継続的に怠った場合に、契約上定められた期限の利益喪失条項及び民法第137条を根拠として、残債務全額の即時一括払いを求めるために送付するものである。使用すべき場面は、契約書上に期限の利益喪失条項が明記されており、かつ実際にその発生事由(分割金の一定回数以上の滞納等)が生じている場合である。喪失条項が契約書に存在しない場合や、喪失事由に該当する事実が乏しい場合には、まず催告書等より穏当な書面を用いるべきであり、拙速に本書式を送付すると、後日債務者から喪失の効力を争われるおそれがある。
根拠法令は、民法第137条(期限の利益の喪失)であり、同条は債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、担保を滅失・損傷・減少させたとき、担保供与義務を履行しないときに、法定の期限の利益喪失事由として定めている。もっとも実務上は、これに加えて契約書上の特約(分割金の支払遅滞等)により期限の利益喪失事由を広げるのが一般的であり、本書式の効力は主として契約書の条項に依拠する点に留意が必要である。実務上よくある失敗の第一は、契約書に期限の利益喪失条項自体が存在しないにもかかわらず、当然に一括請求ができると誤解して通知してしまう例であり、送付前に契約書の該当条項の有無を必ず確認することが対策となる。第二の失敗は、滞納回数の数え方を誤り、実際には条項所定の要件を満たしていない段階で喪失通知を送ってしまうケースであり、第3条のように滞納の履歴を具体的な日付とともに記載し、条項の要件と照合することが有効である。第三に、連帯保証人への影響を説明せずに通知し、後日保証人との間で認識の齟齬が生じる例もあるため、第6条のように保証人への影響を明記しておくことが望ましい。個別の事案における条項の解釈や喪失の効力発生時期については、弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト・確認事項
- [ ] 契約書に期限の利益喪失条項が明記されているか確認したか
- [ ] 喪失条項が当然喪失型か請求喪失型かを確認したか
- [ ] 滞納の事実(滞納回数・滞納期間)が条項所定の要件に該当しているか確認したか
- [ ] 入金履歴と契約書上の支払予定を照合し、誤請求がないか確認したか
- [ ] 残元金・遅延損害金の計算根拠を契約書の利率規定と照合したか
- [ ] 連帯保証人の有無及び保証人への通知の要否を確認したか
- [ ] 支払期限及び振込先口座情報を正確に記載したか
- [ ] 履行がない場合の次の法的手続(訴訟・支払督促・強制執行)の方針を検討したか
- [ ] 内容証明郵便及び配達証明の利用を検討したか
- [ ] 消滅時効の起算点(期限の利益喪失時)を確認したか
- [ ] 送付前に弁護士等の専門家へ相談する必要性を検討したか
- [ ] 民法第137条各号の法定事由に該当する事情がないか確認したか
- [ ] 分割弁済中の各回の遅延損害金を合算計算に含めたか確認したか