企業型確定拠出年金を導入する企業向け。加入資格や掛金額、選択制の運用を定め、確定拠出年金法と労使合意に基づく規約整備の社内ルールを整えます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
企業型確定拠出年金規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、確定拠出年金法(以下「法」という。)第3条の規定に基づき会社が実施する企業型確定拠出年金(以下「企業型DC」という。)に関し、加入資格、掛金の額、運用及び給付等について、社内における取扱いを定めることを目的とする。本規程は、法及び企業型年金規約(以下「規約」という。)に定める事項を補足するものであり、規約の内容と本規程の内容が抵触する場合は規約が優先する。
第2条(制度の実施) 会社は、法第3条第1項の規定に基づき、規約について厚生労働大臣の承認を受けたうえで企業型DCを実施する。 2 規約の作成及び変更は、法第4条の規定に基づき、労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)の同意を得て行う。
第3条(加入資格) 企業型DCの加入者となる資格を有する者は、会社に使用される厚生年金保険の被保険者であって、満【 】歳以上満70歳未満の者とする。 2 前項にかかわらず、入社後【 】か月間を試用期間とする従業員については、試用期間満了後を加入資格取得日とする。 3 休職期間中の従業員の加入資格の得喪については、別途会社が定める。
第4条(加入者資格の喪失) 加入者は、次の各号のいずれかに該当するに至った日の翌日(死亡による場合は当該日)に、加入者資格を喪失する。 一 60歳(規約で定める場合は70歳)に達したとき 二 会社を退職したとき 三 死亡したとき 四 企業型年金加入者の資格喪失事由として規約に定めるその他の事由に該当したとき
第5条(掛金の額) 会社は、加入者について、次の各号のとおり事業主掛金を拠出する。 一 基本掛金 給与規程に定める基本給に【 】パーセントを乗じた額(月額【 】円を上限とする。) 二 前号の掛金額は、法第20条に定めるところにより、職務、勤続年数等に応じてあらかじめ規約に定めた算定方法(給与テーブルに基づく定額又は定率)により、加入者間で著しい格差が生じない範囲で定めるものとする。 2 事業主掛金は、法第19条に定める拠出限度額(他の企業年金制度の実施状況に応じて月額【55,000】円又は【27,500円】)を超えないものとする。 3 加入者は、規約の定めるところにより、事業主掛金に上乗せして加入者掛金(マッチング拠出)を拠出することができる。加入者掛金の額は、事業主掛金の額を超えず、かつ事業主掛金と加入者掛金の合計額が前項の拠出限度額を超えない範囲で、加入者自身が決定する。
第6条(掛金の拠出方法) 事業主掛金は、会社が資産管理機関に対し、毎月【 】日を拠出日として拠出する。 2 加入者掛金は、給与規程に定める賃金支払日において、当月分の給与から控除し、会社が取りまとめて資産管理機関に納付する。
第7条(運用の指図) 加入者は、自己の年金資産について、規約に定める運用商品の中から自らの責任と判断により運用の指図を行う。会社は、運用の結果について責任を負わない。 2 会社は、法第22条の2に定める継続投資教育を、少なくとも年【 】回実施する。
第8条(給付の種類) 企業型DCに基づく給付は、老齢給付金、障害給付金及び死亡一時金とし、その支給要件及び支給方法は法及び規約の定めるところによる。
第9条(退職時及び転職時の取扱い) 加入者資格を喪失した者(退職者)は、法の定めるところにより、個人型確定拠出年金(iDeCo)への資産移換又は転職先の企業型年金への資産移換の手続を行うことができる。会社は、退職者に対し、資格喪失後速やかに移換手続に関する案内を行う。 2 資産移換の手続を一定期間内に行わない場合、年金資産は国民年金基金連合会に自動移換され、その間運用が行われず、手数料が発生する等の不利益が生じ得ることを、会社は退職予定者に周知するものとする。
第10条(掛金の停止及び再開) 休職、育児休業その他の事由により給与の支給が停止された期間について、事業主掛金の拠出を停止することがある。この場合の取扱いは規約の定めるところによる。
第11条(制度の廃止) 会社が経営上の理由その他やむを得ない事由により企業型DCを廃止する場合は、法第4条に準じて労働組合等の同意を得たうえで、規約の承認の取消し等所定の手続を行う。
第12条(規程の改廃) 本規程の改廃は、労働基準法第89条及び第90条の定めるところにより従業員代表の意見を聴取するとともに、法第4条に基づく労使合意及び規約変更の承認手続を経て行う。
附則 本規程は、【西暦】年【 】月【 】日から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 全社員加入型向け
会社が事業主掛金を全額負担し、原則として全従業員を加入対象とする設計である。
修正条文例(第3条第1項の書き換え): 「企業型DCの加入者となる資格を有する者は、会社に使用される厚生年金保険の被保険者である正社員全員とし、選択の余地を設けない。」
修正条文例(第5条第1項に第3号として追加): 「三 事業主掛金は、賃金の減額や選択の結果としてではなく、会社が独自に負担する福利厚生費として拠出するものであり、給与規程上の賃金体系とは区分する。」
一言解説: 全社員加入型は選択制と異なり、掛金相当額が給与から振り替えられるものではないため、社会保険料の算定基礎への影響がなく、従業員にとって不利益が生じにくい設計である。ただし会社側の人件費負担は確実に増加するため、拠出率の設定は財務計画とあわせて検討する必要がある。
B節: 選択制導入企業向け
選択制は、従業員が「給与として受け取る」か「企業型DCの掛金として拠出する(ライフプラン手当等の名目)」かを自ら選択する制度である。
修正条文例(第5条第1項に選択制の規定として追加): 「四 加入者は、毎年【 】月に実施する選定手続において、会社が別途定める『ライフプラン手当』の全部又は一部を、給与として受け取るか、事業主掛金として企業型DCに拠出するかを選択することができる。 五 前号の選択により事業主掛金として拠出された金額は、所得税法上非課税として取り扱われる一方、給与として受け取ることを選択した金額は、通常の給与と同様に課税され、社会保険料の算定基礎に算入される。」
一言解説: 選択制は掛金原資を給与の中から捻出するため、加入者掛金(マッチング拠出)とは異なり、給与として受け取らないことを選択した部分は賃金に該当しないと整理される。これにより社会保険料の算定基礎が変動する点は、従業員にとってメリットにも将来の給付水準低下のデメリットにもなり得るため、選択時の説明義務を条文上明記することが重要である。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本規程は、退職金制度の見直しに伴い企業型確定拠出年金を新規導入する場面、既存の確定給付企業年金(DB)から企業型DCへ移行する場面、又は選択制の導入により従業員の資産形成の選択肢を広げたい場面で用いる。他方、従業員の年齢構成が高く、運用リスクを従業員に負担させることへの理解が得にくい組織や、労使間で制度変更についての合意形成が困難な状況では、拙速な導入を避け、制度設計段階から従業員代表との協議を尽くすべきである。
根拠法令としては、確定拠出年金法第3条に基づき、企業型DCの実施には規約について厚生労働大臣の承認を受ける必要があり、規約の作成・変更には同法第4条に基づき労働組合等の同意(労使合意)が、就業規則の意見聴取(労働基準法第90条)とは別個の手続として求められる。掛金額については、同法第19条及び確定拠出年金法施行令に定める拠出限度額(他の企業年金の実施状況により月額55,000円又は27,500円)を超えてはならない。また、事業主掛金は所得税法上非課税とされる一方、加入者掛金(マッチング拠出)は小規模企業共済等掛金控除の対象となるなど、税務上の取扱いが掛金の種類によって異なる。継続投資教育については同法第22条の2において努力義務として規定されている。
実務上よくある失敗として、第一に、規約の変更手続を経ずに規程本文のみを改定し、法第4条の労使合意及び厚生労働大臣への届出・承認を欠いたまま制度変更を実施してしまうケースがある。対策として、第12条のように規程の改廃には規約変更手続を伴う旨を明記し、規約が優先する旨(第1条)を明確にする。第二に、選択制において給与から掛金原資を捻出する設計であるにもかかわらず十分に説明しないまま導入し、標準報酬月額の低下により将来の厚生年金給付等が下がることについて従業員の理解を得られずトラブルとなるケースがある。対策として、第2部B節のように選択時の説明義務及び税務・社会保険上の違いを条文上明記する。第三に、退職者への資産移換手続の案内を怠り、自動移換による運用停止や手数料発生等の不利益を生じさせるケースがある。対策として、第9条のように会社の周知義務を明記することが望ましい。
なお、拠出限度額の計算や規約変更の承認手続の詳細は、個別の企業年金の実施状況によって取扱いが異なるため、社会保険労務士又は弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 規約について厚生労働大臣の承認(確定拠出年金法第3条)を受ける手続を予定しているか
- [ ] 規約の作成・変更につき労働組合等との合意(同法第4条)を得る手順を定めたか
- [ ] 加入資格の取得・喪失の年齢要件及び試用期間の取扱いを明記したか
- [ ] 事業主掛金の算定方法が加入者間で著しい格差を生じさせない設計になっているか
- [ ] 拠出限度額(同法第19条、月額55,000円又は27,500円)を超えない設計になっているか
- [ ] マッチング拠出(加入者掛金)を導入する場合、事業主掛金額を超えない旨を明記したか
- [ ] 選択制を導入する場合、給与として受け取る選択との税務・社会保険上の違いを説明する条項を設けたか
- [ ] 継続投資教育の実施頻度・内容を定めたか(同法第22条の2)
- [ ] 退職・転職時の資産移換手続及び自動移換のリスクについて周知する条項を設けたか
- [ ] 休職・育児休業期間中の掛金拠出の停止・再開の取扱いを定めたか
- [ ] 制度廃止時の手続(規約承認の取消し等)を定めたか
- [ ] 規約と本規程の内容が抵触する場合の優先関係を明記したか