広告であることを明示する記事の制作・掲載条件を定める契約書。景品表示法のステマ規制告示に基づくPR表記と著作権法第21条の利用許諾を規定する。

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記事広告(タイアップ)制作契約書

第1部: 書式本文

〇〇〇〇(以下「甲」という。媒体社)、〇〇〇〇(以下「乙」という。広告主)及び〇〇〇〇(以下「丙」という。制作会社)は、乙の商品又はサービスを紹介する記事広告(以下「本記事」という。)の制作及び甲の運営する本メディアへの掲載について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 丙は乙の依頼に基づき本記事を制作し、甲は本記事を本メディアに掲載する。三者は、本記事が広告であることを消費者に明示する義務を負うことを相互に確認する。

第2条(制作業務の内容) 丙が行う制作業務の内容(取材、執筆、写真撮影、編集)及び納期は別紙のとおりとする。

第3条(PR表記の義務) 1. 甲及び丙は、本記事が広告であることを一般消費者が判別できるよう、消費者庁の定めるステルスマーケティング告示に基づき、記事の冒頭その他消費者の目に留まりやすい箇所に「PR」「広告」「[企業名]提供」等の文言を明瞭に表示する。 2. 前項の表示は、本メディアの通常の記事と混同されない書体、色彩又は配置により行う。 3. 乙は、SNS等で本記事を二次的に紹介する場合も、前2項に準じたPR表記を行う。

第4条(記事内容の確認及び修正) 1. 丙は、本記事の初稿を乙及び甲に提示し、内容について確認を求める。 2. 乙は、商品又はサービスの説明内容について、事実と異なる記載がないか確認し、修正を求めることができる。 3. 甲は、本メディアの編集方針及び景品表示法上のリスクの観点から、表現の修正を求めることができる。

第5条(著作権の帰属及び利用許諾) 1. 本記事にかかる著作権は、丙に帰属する。ただし、丙は甲に対し、本メディアへの掲載、アーカイブとしての保存及び甲の運営するSNSアカウントでの告知に必要な範囲で、著作権法第21条及び第23条に定める利用を許諾する。 2. 丙は乙に対し、乙が自社のウェブサイト、広告媒体又はSNSにおいて本記事を二次利用(転載、抜粋引用を含む。)することを許諾する。 3. 前2項の利用にあたっても、第3条のPR表記義務は継続して適用される。

第6条(取材協力) 乙は、本記事の制作に必要な取材、資料提供及び事実確認への協力を丙に対し行う。

第7条(表示内容の適法性) 乙は、本記事に掲載される自社の商品又はサービスに関する説明内容が、景品表示法上の優良誤認表示・有利誤認表示に該当しないことについて、丙及び甲に対し必要な資料を提供し、確認に協力する。

第8条(掲載期間) 本記事の掲載期間は別紙のとおりとし、掲載期間経過後の取扱い(削除、アーカイブとしての存置等)は別紙に定めるところによる。

第9条(対価) 乙は、本記事の制作費用として丙に、掲載料として甲に、それぞれ別紙に定める金額を支払う。

第10条(第三者からのクレーム対応) 本記事の内容(取材に基づく事実関係及び乙提供情報を除く。)に起因して第三者からクレーム又は権利侵害の主張がなされた場合、丙は自己の責任において対応する。ただし、乙提供情報の内容に起因する場合は乙が責任を負う。

第11条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 媒体社向けの修正

A-1. PR表記の最終確認権限の明記

修正後:「甲は、掲載直前において本記事のPR表記の位置・文言が本契約の基準を満たしているかを最終確認する権限を有し、満たしていないと判断した場合、掲載を留保することができる。」 一言解説: ステルスマーケティング規制違反の責任は表示媒体である甲にも及びうるため、掲載直前の最終確認権限を明確化する修正である。

A-2. 記事内容の事実確認不足による免責

修正後:「乙から提供された情報に基づき記載された事実関係について、乙が虚偽又は不正確な情報を提供したことに起因する不適切な表示が生じた場合、甲及び丙はその責任を負わない。」 一言解説: 媒体社・制作会社が広告主提供情報の真偽まで独自に検証することは限界があるため、情報提供者である広告主に責任を帰属させる修正である。

B. 広告主向けの修正

B-1. 二次利用範囲の拡大

修正後:「乙は、本記事を自社の営業資料、プレゼンテーション資料及び採用広報においても、PR表記を付したうえで利用することができる。」 一言解説: 記事広告を営業ツールとして幅広く活用したい広告主が、二次利用の範囲を拡大する修正である。

C. 制作会社向けの修正

C-1. 修正回数の上限設定

修正後:「乙及び甲からの内容修正の依頼は、初稿提示後2回までとし、3回目以降の修正については別途追加費用を協議する。」 一言解説: 無制限の修正対応は制作会社の採算を悪化させるため、修正回数に上限を設ける実務上一般的な修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、メディアの記事という体裁を取りながら特定の商品・サービスを紹介する、いわゆるタイアップ記事広告・ネイティブ広告を制作・掲載する場面で用いる。媒体社、広告主、制作会社の三者が関与する取引を想定しているが、媒体社が自ら制作を兼ねる場合や、広告主が直接インフルエンサーに依頼する場合には、当事者構成を二者間に簡略化する必要がある。純粋なバナー広告や記事とは無関係の広告枠掲載には、通常の広告媒体掲載契約書を用いるべきである。

根拠法令 記事広告の最大の法的論点は、令和5年10月施行の景品表示法上のステルスマーケティング規制(内閣府告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」)である。同告示は、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められるものを不当表示として規制する。記事の体裁を取るタイアップ広告は、通常の編集記事と誤認されやすいため、PR表記等により広告であることを明瞭に表示することが必須となる。表示が不十分な場合、表示内容の決定に関与した事業者(通常は広告主及び媒体社)が景品表示法上の措置命置の対象となりうる。また、本記事の著作物性については著作権法第21条(複製権)及び第23条(公衆送信権)に基づく利用許諾の範囲設定が重要であり、誰が著作権者となるか(通常は制作会社)、二次利用がどこまで許容されるかを契約上明確にする必要がある。

実務でよくある失敗と対策 第一に、PR表記を記事の末尾に小さく表示するにとどめ、消費者庁の運用基準が求める「一般消費者が容易に認識できる表示」の水準を満たさない失敗がある。第3条第2項のように、表示の書体・色彩・配置についても具体的な基準を定めることが対策となる。第二に、広告主がSNSで記事を再拡散する際にPR表記を付し忘れる失敗がある。第3条第3項及び第5条第3項のように、二次利用時にもPR表記義務が継続する旨を明記することが対策となる。第三に、著作権の帰属先を曖昧にしたまま制作を進め、広告主による二次利用の範囲を巡って契約後に紛争になる失敗がある。第5条のように著作権の帰属先と、媒体社・広告主それぞれへの利用許諾範囲を書き分けることが対策となる。

ステルスマーケティング規制の該当性は表示の態様や配置によって個別に判断されるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] PR表記の文言・配置・書体が消費者庁の運用基準を満たしているか確認したか
  • [ ] SNS等での二次拡散時のPR表記義務を明記したか
  • [ ] 著作権の帰属先(通常は制作会社)を明確にしたか
  • [ ] 媒体社・広告主それぞれへの利用許諾範囲を定めたか
  • [ ] 記事内容の事実確認プロセス(初稿確認・修正依頼)を定めたか
  • [ ] 景品表示法上のリスク表現について媒体社が修正を求める権限を確認したか
  • [ ] 広告主提供情報の真偽に関する責任分担を定めたか
  • [ ] 修正回数の上限を制作会社との間で確認したか
  • [ ] 掲載期間及び掲載終了後の記事の存置・削除方針を定めたか
  • [ ] 対価(制作費・掲載料)の支払先及び金額を明確にしたか