返済が困難となった債務者と元本据置や期間延長を合意する変更契約書。民法第587条の原契約の同一性を保ちつつ担保・保証の効力継続を確認します。

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金銭消費貸借契約変更契約書(リスケジュール)

第1部: 書式本文

【貸主商号】(以下「甲」という。)、【借主商号】(以下「乙」という。)及び【連帯保証人氏名】(以下「丙」という。)は、甲乙間の【〇〇年〇〇月〇〇日】付金銭消費貸借契約(以下「原契約」という。)の内容を変更することにつき、次のとおり合意する(以下「本変更契約」という。)。

第1条(原契約の確認) 1. 【〇〇年〇〇月〇〇日】現在における原契約に基づく乙の甲に対する残債務元本は金【 】円、既発生の未払利息は金【 】円であることを甲乙丙確認する。 2. 本変更契約は原契約の同一性を維持したまま返済条件を変更するものであり、民法第519条の債務免除又は更改には該当しないことを甲乙丙確認する。

第2条(返済条件の変更) 1. 原契約における毎月の分割返済額を、【〇〇年〇〇月】分から【金〇円】に減額する。 2. 元本の最終返済期日を【〇〇年〇〇月〇〇日】まで延長する。 3. 【〇〇年〇〇月】から【〇〇年〇〇月】までの【6】か月間、元本の返済を据え置き、利息のみを支払う。

第3条(利息) 据置期間中及び変更後の分割返済期間中の利息は、原契約と同じく年【 】パーセントとし、利息制限法第1条の上限を超えないものとする。

第4条(遅延損害金) 乙が変更後の返済条件による支払を遅滞したときは、遅延元本に対し年【 】パーセント(利息制限法第4条の上限の範囲内)の割合による遅延損害金を支払う。

第5条(担保及び保証の継続) 原契約に付されていた担保及び丙の連帯保証は、本変更契約締結後も原契約と同一性を有する債務を担保するものとして、変更後の債務についてもその効力を継続する。

第6条(丙の同意) 丙は、原契約の内容が本変更契約のとおり変更されることに同意し、変更後の返済条件による乙の債務について、引き続き連帯して保証する。

第7条(期限の利益喪失) 乙が変更後の返済条件による分割返済を【2】回以上遅滞したとき、又は乙について破産手続開始の申立てその他信用状況の著しい悪化が生じたときは、乙は甲の通知催告により当然に期限の利益を喪失する。

第8条(誓約事項) 乙は、本変更契約締結後、資金繰りの状況及び事業計画の進捗について、甲の求めに応じ【四半期】ごとに報告する。

第9条(清算条項) 甲、乙及び丙は、原契約及び本変更契約に関し、本変更契約に定めるもののほか何らの債権債務のないことを相互に確認する。

第10条(協議及び合意管轄) 本変更契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上を証するため本書3通を作成し、甲乙丙記名押印の上、各自1通を保有する。

【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】

(甲) 住所:【     】 商号:【     】 代表者:【     】 印 (乙) 住所:【     】 商号:【     】 代表者:【     】 印 (丙) 住所:【     】 氏名:【     】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 貸主向け書き換え

A-1. 中小企業向け経営改善計画に基づくリスケ

第8条修正例:「乙は、経営改善計画の進捗状況を記載した月次報告書を毎月末までに甲に提出し、計画未達時は甲乙協議のうえ計画を見直す。」 解説: 中小企業金融円滑化の実務では経営改善計画の進捗管理が重視されるため、月次報告義務を明記し早期の異変把握を可能にする。

A-2. 据置期間経過後の段階的増額返済(ステップ返済)を求める場面

第2条3項修正例:「据置期間経過後、返済額は当初【6】か月は原契約の50パーセント、以後残期間は原契約と同額まで段階的に増額する。」 解説: 業績回復の見通しに応じて返済負担を段階的に戻すことで、急激な負担増による再度の延滞を防ぐ。

B. 借主・連帯保証人向け書き換え

B-1. 連帯保証人の負担を軽減したい場面

第6条修正例:「丙の保証は、本変更契約締結時点における残債務元本【 】円を極度額とする根保証とし、以後増加する債務には及ばない。」 解説: 保証人の予測可能性を確保するため、変更後の債務について保証範囲を明確に限定する。

B-2. 借主が期限の利益喪失事由を緩和したい場面

第7条修正例:「期限の利益喪失は分割返済を【3】回以上連続して遅滞した場合に限る。」 解説: 一時的な資金繰りの遅れで直ちに一括請求とならないよう、遅滞回数の要件を厳格化する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、既存の金銭消費貸借契約について借主の資金繰り悪化等を理由に返済条件(返済額・返済期間・据置期間)を変更する場面で用いる。債務の一部を免除する場合は本書式に加えて別途債務免除の合意を明確にする必要があり、免除を主目的とする場合は貸付金の一部免除に関する合意書を用いる方が適切である。また新たな消費貸借として実質的に別契約を締結する意図がある場合は、更改(民法第513条)に該当しないか慎重に検討する必要がある。

根拠法令 返済条件の変更は原契約と同一性を保つ限り、原契約に付された担保・保証の効力に影響を与えない。この点は、債務の要素を変更して新債務を成立させる更改(民法第513条)との違いとして重要であり、本書式は更改ではなく原契約の内容変更であることを第1条で明記する。利息及び遅延損害金は利息制限法第1条及び第4条の上限規制に服する。連帯保証人の同意については、保証内容が実質的に不利益変更となる場合、丙の明確な同意取得が求められる。

実務でよくある失敗と対策 第一に、返済条件の変更が更改とみなされ、原契約に付された担保や保証が消滅してしまう失敗がある。第1条及び第5条のように原契約との同一性及び担保・保証の継続を明記する。第二に、連帯保証人の同意を取得せずに条件変更を行い、後日保証の効力が争われる失敗がある。第6条のように丙を契約当事者として明記し同意を得る。第三に、据置期間経過後の返済額を一律に原契約水準へ戻し、資金繰りが再度悪化する失敗がある。ステップ返済のような段階的増額の設計が有効である。第四に、リスケジュール合意後も乙の状況把握を怠り、再度の延滞に気づくのが遅れる失敗もある。第8条のような定期報告義務を実効的に運用し、資金繰りの悪化の兆候を早期に把握する体制を整えることが望ましい。個別の資金繰り状況を踏まえた条件設計は専門家に確認することが望ましい。

リスケジュールの実施にあたっての留意点 リスケジュールは、貸主にとって当面の資金回収を犠牲にしてでも借主の事業継続を支援し、長期的な回収可能性を高める手段である。もっとも、貸主が金融機関である場合、条件変更の内容によっては金融検査上の債務者区分の見直しや、貸倒引当金の計上要否にも影響しうるため、条件変更の妥当性について社内の与信管理部門との連携を図ることが望ましい。借主側においても、条件変更後の計画が実現可能なものであるかを慎重に検討し、無理のない返済スケジュールを設定することが重要である。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 原契約の残債務元本・未払利息を正確に確認したか
  • [ ] 本変更が更改でなく原契約の同一性を維持した変更であることを明記したか
  • [ ] 据置期間及び変更後の返済額・返済期間を具体的に定めたか
  • [ ] 利息及び遅延損害金が利息制限法の上限を超えていないか
  • [ ] 既存の担保・保証が変更後の債務にも及ぶことを確認したか
  • [ ] 連帯保証人から変更内容についての明確な同意を得たか
  • [ ] 期限の利益喪失事由(遅滞回数等)を具体的に定めたか
  • [ ] 進捗報告義務など貸主によるモニタリング条項を設けたか
  • [ ] 清算条項により変更前の債権債務関係を整理したか