客観的な労働時間把握が必要な全企業向け。打刻方法や修正申請、残業の事前承認を定め、労働安全衛生法第66条の8の3の記録義務に対応します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
勤怠管理規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、株式会社【会社名】(以下「会社」という。)の従業員の労働時間、休憩、休日及び時間外・休日労働の状況を客観的な方法により把握し、適正な勤怠管理を行うために必要な事項を定める。会社は、労働安全衛生法第66条の8の3に基づき、労働者の労働時間の状況を厚生労働省令で定める方法により把握しなければならない。
第2条(適用範囲) 本規程は、管理監督者、みなし労働時間制の適用者を含む全従業員に適用する。ただし、労働時間の状況の把握方法及び記録の取扱いについては、雇用形態を問わず統一的に運用する。
第3条(労働時間の把握方法) 1 従業員の始業及び終業の時刻は、【ICカード打刻機/勤怠管理システム】による客観的な記録により把握することを原則とする。 2 客観的な方法によることが困難な業務に従事する従業員については、自己申告制によることができる。この場合、会社は当該申告内容と入退館記録、パソコンの使用時間等の客観的記録との間に著しい乖離がないかを定期的に確認する。
第4条(打刻の方法) 1 従業員は、出社時及び退社時に、所定の打刻機器を用いて自ら打刻しなければならない。 2 他人に自己の打刻を依頼し、又は他人の打刻を代行してはならない。 3 休憩の開始及び終了についても、所定の方法により記録するものとする。
第5条(打刻の修正申請) 1 打刻漏れ、打刻誤り又はシステム障害等により正確な記録がなされなかった場合、従業員は当日又は翌営業日までに所属長に修正申請を行うものとする。 2 修正申請には、実際の労働時間を示す資料(業務メール送信履歴、入退館記録等)を添付するものとし、所属長は当該資料に基づき事実確認の上、承認又は却下を行う。 3 会社は、修正申請の履歴を打刻記録と併せて保存する。
第6条(時間外労働及び休日労働の事前申告・承認) 1 従業員が時間外労働又は休日労働を行おうとするときは、事前に所定の様式により所属長の承認を得なければならない。 2 事前申告がなされないまま時間外労働が行われた場合であっても、会社の指揮命令下にあったと客観的に認められる労働時間については、労働時間として取り扱う。 3 所属長は、承認申請の内容と客観的記録との乖離を月次で確認し、乖離が認められる場合は速やかに是正指導を行う。
第7条(休憩時間) 休憩時間は労働基準法第34条の定めるところにより付与し、休憩の取得状況についても打刻記録により確認する。
第8条(勤怠記録の保存) 会社は、打刻記録、修正申請記録及び時間外労働承認記録を、労働基準法第109条の定めに従い、当該記録に係る賃金支払期日の属する期間の末日から5年間(当分の間3年間)保存する。
第9条(サービス残業の禁止) 1 従業員は、所定労働時間外に業務を行う場合は必ず事前申告及び事後の打刻を行わなければならず、無申告のまま業務を継続してはならない。 2 会社は、退勤打刻後に業務用パソコンへのログインが確認される等、打刻と実態の乖離を示す事実を把握した場合、速やかに実態調査を行い、必要な賃金を追加で支払う。
第10条(在宅勤務・社外勤務時の把握) 在宅勤務又は社外勤務を行う従業員については、業務用パソコンのログイン・ログオフ記録その他の客観的な記録により労働時間の状況を把握する。
第11条(管理監督者の取扱い) 管理監督者についても、健康確保の観点から、第3条に定める方法により労働時間の状況を把握する。
第12条(是正措置) 所属長は、勤怠記録の点検の結果、長時間労働の兆候又は打刻の不備を把握した場合、速やかに本人及び人事部に報告し、必要な業務配分の見直し等の措置を講じる。
第13条(雑則) 本規程に定めのない事項については、就業規則その他の社内規程の定めるところによる。
附則 本規程は【年】年【月】月【日】日から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. ICカード打刻型向け
入退館ゲートと勤怠システムが連動しているオフィス勤務中心の企業では、打刻機器の設置場所と実際の業務開始場所が異なる場合の取扱いを明確にしておく必要がある。
修正条文例(第3条第1項に追加) 「ICカードによる入館記録と打刻記録との間に15分を超える乖離が生じた場合、所属長は当該乖離の理由を従業員に確認し、記録票に理由を付記する。」
一言解説: 入館後に着替えや準備作業が発生する業種では、入館時刻と労働時間の開始時刻が一致しないことがあるため、乖離の許容範囲と確認手続をあらかじめ定めておくと運用が安定する。
B. PCログ・クラウド打刻型向け
在宅勤務やフレックスタイム制を併用する企業では、クラウド打刻アプリの打刻時刻とPCのログイン・ログオフ時刻を突合する仕組みが実効性を左右する。
修正条文例(第3条第2項に追加) 「クラウド打刻アプリによる打刻時刻と業務用パソコンのログイン・ログオフ記録との間に著しい乖離が認められる場合、会社は当該従業員に対しヒアリングを実施し、必要に応じて記録を補正する。」
一言解説: クラウド打刻は打刻忘れが生じやすいため、PCログという別系統の客観的記録と突合する仕組みを条文に明記することで、労働時間状況の把握義務(安衛法第66条の8の3)への対応精度が高まる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、常時使用する労働者を雇用する事業場で、始業・終業時刻の客観的把握体制を整備する場面で使用する。すでに勤怠システムの仕様書上で打刻方法や修正フローが確立しており、就業規則本体に労働時間管理条項を統合済みの企業では、本書式を重複して導入するのではなく、既存規程との整合を確認した上で必要部分のみを補充することが望ましい。
根拠法令は、労働安全衛生法第66条の8の3(労働者の労働時間の状況の把握義務)である。同条は、事業者に対し、タイムカードによる記録、パソコン等の使用時間の記録その他の客観的な方法その他適切な方法により労働時間の状況を把握することを義務付けている。あわせて、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)が、自己申告制を採用する場合の実態調査義務や乖離是正の考え方を示しており、第5条・第9条の起案根拠となる。
実務でよくある失敗の一つは、自己申告制を採用しながら、申告内容と客観的記録との突合を全く行わないことである。この場合、形式上の記録は整っていても、ガイドラインが求める「実態調査」を怠っていると評価されるおそれがある。対策として、第5条・第9条のように、客観的記録との乖離確認手続を条文上に明記し、乖離が生じた場合の是正フローを定めておく。
二つ目の失敗は、時間外労働の事前承認制を導入しながら、無承認のまま行われた残業を一切労働時間として扱わない運用を条文化することである。事前承認がないことのみを理由に賃金支払を拒否することは、会社の指揮命令下にあった実態が認められる限り労働基準法上認められない。第6条第2項のように、客観的に認められる労働時間は承認の有無にかかわらず労働時間として取り扱う旨を明記することが望ましい。
なお、労働時間該当性の判断は業務実態によって個別に異なるため、規程の運用にあたっては個別事案について社会保険労務士又は弁護士に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 始業・終業時刻の把握方法(打刻機器・システム)を条文上に明記したか
- [ ] 自己申告制を採用する場合、客観的記録との突合手続を定めたか
- [ ] 打刻の修正申請の手続と承認権者を明確にしたか
- [ ] 時間外労働・休日労働の事前承認フローを定めたか
- [ ] 無申告残業が発生した場合の賃金支払方針を明記したか
- [ ] 勤怠記録の保存期間(労基法第109条、5年・当分の間3年)を確認したか
- [ ] 在宅勤務・社外勤務時の労働時間把握方法を定めたか
- [ ] 管理監督者についても労働時間状況の把握対象としたか
- [ ] 厚労省ガイドラインの実態調査義務に対応した是正手続を定めたか
- [ ] 打刻記録とPCログ等、複数系統の記録の突合ルールを設けたか
- [ ] 社会保険労務士又は弁護士による条文案の確認を経たか