基本契約に基づき個別案件の作業範囲・納期・対価を確定する書面。下請法第3条の書面交付義務と民法第522条の申込み・承諾の要件を満たす様式。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
個別契約書(発注書兼請書)
第1部: 書式本文
本個別契約書(発注書兼請書、以下「本書」という。)は、【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】付「ソフトウェア開発基本契約書」(以下「基本契約」という。)第3条に基づき、【ユーザー商号】(以下「甲」という。)が【ベンダー商号】(以下「乙」という。)に委託する下記業務(以下「本業務」という。)について、甲の申込みに対し乙が承諾したことを証するため作成する。
第1条(基本契約との関係) 本書に定めのない事項については、基本契約の定めるところによる。本書と基本契約の内容が抵触する場合、本業務に関する限り本書の定めを優先して適用する。
第2条(業務内容) 1. 業務名称:【 】 2. 業務内容:【システム設計・開発・テスト等、具体的作業項目を記載】 3. 契約類型:【請負・準委任のいずれかを明記】
第3条(納期又は履行期間) 1. 納期:【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】(契約類型が請負の場合) 2. 履行期間:【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】から【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】まで(契約類型が準委任の場合)
第4条(対価及び支払条件) 1. 対価:金【 】円(消費税別) 2. 支払期日:乙が本業務の給付を受領した日(検収完了日又は準委任の場合は各月の役務提供完了日)から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間内である【 】日以内とする。 3. 支払方法:甲は乙が指定する銀行口座への振込により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
第5条(本書の成立) 1. 本書は、甲が発注書欄に記名押印して乙に交付し、乙が請書欄に記名押印して甲に返送した時に成立する。ただし、電子的方法による発注及び請書の授受についても、甲乙間で別途合意した方法によりこれと同様に取り扱うことができる。 2. 本書の成立は、民法第522条第1項に定める申込みと承諾の意思表示の合致による契約の成立の要件を満たすものとする。
第6条(下請法の適用に関する確認) 1. 甲及び乙は、甲の資本金の額及び本業務の内容に照らし、本取引が下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)第2条に定める情報成果物作成委託又は役務提供委託に該当し、甲が同法上の親事業者に、乙が下請事業者に該当する場合には、甲は同法第3条に基づき本書その他の必要事項を記載した書面を乙に交付するものとする。 2. 甲は、本書において、下請法第3条及び同法施行令が定める必要記載事項(給付の内容、納期、対価の額、支払期日、支払方法等)を可能な限り明確に記載するものとする。
第7条(納入及び検収) 1. 乙は、前条の納期又は履行期間内に、本業務の成果物又は役務の提供を完了し、甲の定める方法により報告する。 2. 甲は、成果物の受領後又は役務提供完了の報告後、基本契約に定める検査期間内に検査を行い、合否を乙に通知する。
第8条(内容の変更) 本書に定める業務内容、納期又は対価を変更する場合、甲乙は書面(電子的方法を含む。)による合意により変更するものとし、口頭による変更は原則として効力を有しない。
第9条(下請代金の減額及び返品の禁止) 甲は、乙の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、あらかじめ定めた対価を減額し、又は給付を受領した物を返品してはならない。
第10条(遅延利息) 甲が第4条2項の支払期日までに対価を支払わなかった場合、甲は乙に対し、支払期日の翌日から支払済みに至るまで、下請法第4条の2に定める率(年14.6%)による遅延利息を支払う。
第11条(有効期間) 本書は、成立の日から本業務の完了及び対価の支払完了まで効力を有する。
以上、本書の内容に相違ないことを証するため、下記のとおり発注及び請書の記名押印を行う。
【発注書】 発注日:【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】 甲 住所:【 】 商号又は名称:【 】 代表者:【 】 印
【請書】 請書提出日:【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】 乙 住所:【 】 商号又は名称:【 】 代表者:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. ベンダー向け書き換え
A-1. 元請から一括受注する大規模案件
第4条2項修正例:「支払期日は、乙が給付を受領した日から起算して30日以内とする。」 解説: 下請法第2条の2は、親事業者に給付受領日から60日以内のできる限り短い期間内での支払期日設定を義務付ける。ベンダーとして交渉力がある場合は、60日という上限に安住せず、30日など短期の期日を明記すべきである。
A-2. 小口・単発の受注案件
第7条追加例:「甲は、成果物の受領後【10】営業日以内に検査を完了しないときは、当該期間の満了をもって検査に合格したものとみなす。」 解説: 下請法は、親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して60日以内に代金を支払うことを求めており、検査の遅延を理由に支払を先延ばしすることは認められない。みなし合格条項により支払遅延を防止する。
B. ユーザー向け書き換え
B-1. 複数ベンダーへの分割発注案件
第2条追加例:「本業務は、別紙作業分担表に定める範囲に限るものとし、他のベンダーが担当する範囲との整合性の確保は甲が行う。」 解説: 分割発注では担当範囲の重複・空白が生じやすく紛争の火種になりやすい。作業分担表を本書に添付し範囲を明確化することが望ましい。
B-2. 継続的な小口発注案件
第8条修正例:「軽微な仕様変更(作業工数の増減が【〇】人日以内のもの)については、電子メールによる合意をもって本書の変更とみなすことができる。」 解説: 小口の継続発注では書面変更の都度の押印手続が実務負担となるため、軽微な変更について簡易な合意方法を認める一方、下請法上必要な記載事項の変更は別途書面化する運用が望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、基本契約を締結済みの当事者間で、個別のシステム開発案件ごとに作業範囲・納期・対価を確定するために用いる。基本契約が存在しない一回限りの取引では、本書式に基本契約相当の条項(秘密保持、知的財産権の帰属等)を追加した単独契約書として構成する必要がある。また、資本金要件等により下請法の適用対象とならない取引であっても、本書式の記載事項自体は取引条件の明確化に資するため、適用可否にかかわらず活用できる。
根拠法令 下請代金支払遅延等防止法第2条(定義)、第3条(書面の交付等)、第2条の2(支払期日)、第4条の2(遅延利息)を中心的な根拠とする。あわせて、契約の成立要件を定める民法第522条(申込みと承諾)を踏まえ、発注書・請書の往復により契約が成立する構造を明示している。
実務でよくある失敗と対策 第一に、下請法上の親事業者・下請事業者の該当性を資本金基準で確認せずに書面交付義務を見落とす失敗がある。取引開始前に自社及び相手方の資本金区分を確認し、該当する場合は第6条のように書面交付を明記する。第二に、支払期日を検収完了日から起算してしまい、検収の遅延によって実質的な支払遅延が生じる失敗がある。下請法第2条の2は給付を受領した日を起算点とするため、第4条2項のように受領日起算であることを明記する。第三に、基本契約と個別契約の優先関係が不明確なまま両者の記載が矛盾する失敗がある。第1条のように本業務に関する限り個別契約を優先する旨を明記する。これらは一般的な留意点であり、資本金区分の該当性判断や具体的な記載事項の要否については専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 基本契約が既に締結されているか、その締結日を正確に記載したか
- [ ] 業務内容が具体的に特定されているか(抽象的な記載になっていないか)
- [ ] 契約類型(請負・準委任)を明記したか
- [ ] 納期又は履行期間を明確に記載したか
- [ ] 対価の額及び消費税の取扱いを明記したか
- [ ] 支払期日が給付受領日から60日以内であることを確認したか
- [ ] 自社及び相手方の資本金区分から下請法の適用対象となるか確認したか
- [ ] 下請法第3条の必要記載事項に漏れがないか確認したか
- [ ] 発注書・請書の押印又は電子的合意の方法を定めたか
- [ ] 内容変更時の手続(書面化のルール)を定めたか