土地売買で登記簿面積によるか実測面積により代金を精算するかを定める特約。民法第562条の契約不適合責任との関係と、実測図の作成や清算単価の扱いを明確化。
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公簿売買・実測売買に関する特約
第1部: 書式本文
第1条(前提) 本特約は、売主甲及び買主乙が締結する別紙物件目録記載の土地に関する売買契約(以下「原契約」という。)における売買代金の算定方式を定めるものである。
第2条(算定方式の選択) 本物件の売買代金は、〔選択A: 公簿売買(登記簿上の地積を基準として算定し、実測面積との差異があっても代金を清算しない方式)/選択B: 実測売買(実測面積を基準として代金を算定又は清算する方式)〕による。
第3条(公簿売買の場合の確認) 選択Aの場合、甲及び乙は、登記簿上の地積〇〇平方メートルを基準として売買代金金〇〇円を確定したものとし、引渡し後に実測面積が判明しても、その多寡にかかわらず代金の増減精算は行わない。
第4条(実測売買の場合の測量の実施) 選択Bの場合、甲は自己の費用で本物件の確定測量(隣接土地所有者及び道路管理者との境界立会いを含む。)を実施し、実測図を作成する。
第5条(実測売買の場合の清算単価) 選択Bの場合、売買代金は、登記簿上の地積を基準とした暫定代金金〇〇円(1平方メートルあたり金〇〇円)とし、確定測量の結果、登記簿上の地積との間に差異が生じたときは、当該差異に前記単価を乗じた金額を残代金支払時に清算する。
第6条(測量の実施期限) 甲は、残代金の支払期日までに確定測量を完了し、実測図を乙に提出する。測量が期日までに完了しない場合、当事者間で協議のうえ引渡し及び代金支払の時期を調整する。
第7条(契約不適合責任との関係) 選択Aの公簿売買による場合であっても、実測面積が登記簿上の地積と著しく相違し、当該相違が本物件の品質等に関する契約不適合に該当すると認められるときは、民法第562条以下の契約不適合責任の規定の適用を妨げない。
第8条(境界確定ができない場合の措置) 実測売買において、隣接土地所有者の協力が得られず境界確定測量ができない場合、当事者は代金の算定方式を公簿売買に変更するか、又は本契約を解除するかを協議する。
第9条(測量費用の負担) 確定測量に要する費用は、選択Bの場合、原則として甲(売主)が負担する。ただし、乙(買主)の要請により追加の測量を実施する場合はその限りでない。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 売主向けの修正
A-1. 公簿売買の原則採用及び例外の限定
修正後(第2条の代替):「本物件の売買代金は公簿売買によるものとし、実測売買への変更は、実測面積と登記簿上の地積との差異が登記簿上の地積の10%を超える場合に限り、買主の請求により行うことができる。」 一言解説: 売主が測量費用や時間的コストを避けたい場合に公簿売買を原則としつつ、著しい面積相違がある場合のみ例外的に精算するバランス型の修正である。
B. 買主向けの修正
B-1. 実測売買を原則とし、暫定代金の割合を保守的に設定
修正後(第5条の代替):「暫定代金は登記簿上の地積の95%に相当する面積を基準として算定し、確定測量の結果判明した実測面積との差異を清算する。」 一言解説: 登記簿上の地積が実際より過大に記載されている「縄延び・縄縮み」のリスクを踏まえ、買主が保守的な暫定代金を設定することで、清算時の追加負担を抑える修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、土地の売買において、売買代金の算定基準を登記簿上の地積によるか(公簿売買)、実際に測量した面積によるか(実測売買)を明確化する場面で用いる。区分所有建物(マンション)の売買のように専有面積が一義的に定まっている取引には適用の必要がなく、主に戸建て住宅の敷地や更地、農地・山林等、地積の実測に相応の費用と時間を要する土地の取引で重要となる。
根拠法令 民法第562条以下の契約不適合責任は、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合の売主の責任を定めており、実測面積が契約で予定された数量(公簿面積)と大きく異なる場合、数量に関する契約不適合の問題として整理される可能性がある。もっとも、公簿売買の特約は、当事者が地積を「目安」として扱い、数量を保証しない旨の合意であるから、原則として数量指示売買(契約当事者が目的物の数量を確保するために代金額を定めた売買)には該当せず、契約不適合責任は生じないと解されるのが一般的である。実測売買の場合は、確定測量における境界確定手続として、民法第223条・第224条の境界標設置に関する規定や、隣接地所有者との筆界確認(前掲の境界確認書参照)が前提となる。
実務でよくある失敗と対策 第一に、公簿売買としながら、重要事項説明や広告において実測に近い数値を強調して表示してしまい、実質的に数量指示売買と評価され契約不適合責任を追及される失敗がある。第7条のように、公簿売買であっても著しい相違がある場合の適用関係を整理しておくことが重要である。第二に、実測売買を選択したにもかかわらず、隣接土地所有者の協力が得られず境界確定測量が完了しないまま引渡期日が到来してしまう失敗がある。第8条のように境界確定ができない場合の代替措置(公簿売買への変更、契約解除等)を事前に定めておくことが望ましい。第三に、清算単価(1平方メートルあたりの単価)を明確にせず、実測面積が判明した後に清算金額の算定方法をめぐって争いになる失敗がある。第5条のように単価を契約書上に明記することが重要である。
第四に、実測売買における測量費用の負担者を明確にしないまま契約し、確定測量の見積りが想定より高額であった際に負担をめぐって紛争になる失敗もある。第4条のように測量費用の負担者(通常は売主)を明記し、概算費用についても事前に見積りを取得しておくことが望ましい。第五に、宅地建物取引業者が売主となる取引において、公簿売買である旨を重要事項説明書に明記せず、買主が実測面積による代金精算があるものと誤信してしまう失敗もある。算定方式(公簿売買か実測売買か)は買主の代金負担に直結する重要な事項であるため、重要事項説明書及び契約書双方で一貫した記載とすることが不可欠である。
公簿売買か実測売買かの選択は、対象地の測量費用、隣接地との境界確定の難易度、取引価格に照らして判断すべきものであり、契約締結前に専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 公簿売買と実測売買のいずれによるかを明確に選択したか
- [ ] 実測売買の場合、測量費用の負担者及び測量の実施期限を確認したか
- [ ] 清算単価(1平方メートルあたりの金額)を明記したか
- [ ] 境界確定測量に隣接地所有者の協力が必要な場合、その見込みを事前に確認したか
- [ ] 境界確定ができない場合の代替措置(公簿売買への変更・解除)を定めたか
- [ ] 公簿売買の場合でも著しい面積相違があった場合の取扱いを整理したか
- [ ] 重要事項説明・広告表示と契約書の算定方式に矛盾がないか確認したか
- [ ] 登記簿上の地積が古い測量に基づくものである可能性(縄延び・縄縮み)を考慮したか
- [ ] 測量費用の概算見積りを事前に取得し、負担者を明記したか
- [ ] 重要事項説明書と契約書の算定方式の記載が一貫しているか確認したか