複数の主催者が公演を共催し費用と収益を分担する契約書。興行場法の許可名義や著作権法の演奏権処理、中止・延期時の損失負担割合を明確にします。

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興行・公演の共同開催契約書

第1部: 書式本文

【主幹事の主催者名】(以下「甲」という。)と【共催者名】(以下「乙」という。)とは、下記の公演(以下「本公演」という。)を共同で開催することに関し、次のとおり共同開催契約(以下「本契約」という。)を締結する。

公演名称:【     】 開催日時:【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】 会場:【     】

第1条(目的) 甲及び乙は、それぞれの企画力、資金力及び運営体制を持ち寄り、本公演を共同で開催し、その費用及び収益を分担することを目的として本契約を締結する。

第2条(主催者としての名義) 1. 本公演の主催名義は「甲及び乙」の連名とし、対外的な広報物、チケット及び関係官庁への届出等において両者の名義を併記する。 2. 会場使用及び興行に関して都道府県知事等の許可を要する場合、興行場法(昭和23年法律第137号)における許可名義は単一の主体に限られることが一般的であるため、甲乙協議の上、甲を許可申請の名義人とし、乙はこれに必要な協力を行う。

第3条(役割分担) 1. 甲は、会場の確保、出演者との出演契約の締結及び当日の運営総括を担当する。 2. 乙は、広報宣伝、協賛の獲得及びチケット販売の管理を担当する。 3. 甲及び乙は、前2項の役割分担の詳細を別途覚書等で定めるものとし、疑義が生じた場合は協議の上決定する。

第4条(著作権等の処理) 1. 本公演における楽曲の演奏又は上演に関し著作権法(昭和45年法律第48号)第22条に定める上演権及び演奏権の処理が必要な場合、甲は一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)その他の著作権等管理事業者との間で必要な利用許諾契約を締結し、使用料を支払う。 2. 甲及び乙は、著作権法第38条に定める非営利・無料・無報酬の上演等の要件を本公演が満たさないことを前提として、前項の許諾手続を行うものとする。 3. 前2項の使用料は、次条に定める費用分担の対象に含める。

第5条(費用及び収益の分担) 1. 本公演の実施に要する費用(会場費、出演料、著作権等使用料、広報宣伝費その他の直接費用をいう。以下「本公演費用」という。)は、甲乙が【50対50】の割合で分担する。 2. チケット販売収入、協賛金その他の収益から本公演費用を控除した金額(以下「本公演収益」という。)は、前項と同一の割合で甲乙に分配する。 3. 本公演終了後【〇〇】日以内に、甲は本公演費用及び本公演収益に関する精算書を作成し、乙に提示の上、過不足額を精算する。

第6条(協賛及び広告) 乙が獲得した協賛については、甲乙協議の上、公演プログラム、会場内表示その他の媒体における露出方法を決定する。

第7条(中止・延期時の損失負担) 1. 出演者の都合、天災その他の不可抗力により本公演を中止又は延期する場合、既に発生した本公演費用は第5条1項の分担割合に従い甲乙が負担する。 2. 一方当事者の帰責事由により本公演が中止となった場合、当該当事者は相手方に生じた損害(既払いの本公演費用及び得べかりし収益の喪失を含む。)を賠償する。

第8条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行に関連して知り得た相手方の営業上の情報を、相手方の承諾なく第三者に開示してはならない。

第9条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。

第10条(協議及び合意管轄) 本契約に関する紛争は、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上の合意を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。

【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】

(甲) 名称:【     】 代表者:【     】 印 (乙) 名称:【     】 代表者:【     】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 主幹事の主催者向け

A-1. 許可名義を単独で保持することのリスクを軽減したい場面

第2条2項追加例:「甲は、許可名義人として負う行政上の責任について、乙の役割分担に起因して生じた違反については乙に求償することができる。」 解説: 許可名義を単独で引き受ける主幹事は行政責任を集中して負うため、原因者への求償権を明記し負担の公平を図る。

A-2. 出演者との契約交渉を単独で担う場面

第3条1項修正例:「甲は出演契約の締結にあたり、出演料及び主要な条件について事前に乙の同意を得るものとする。」 解説: 費用分担の対象となる出演料の水準に乙の意向を反映させ、精算段階での紛争を予防する。

B. 共催者(共同主催会社)向け

B-1. 広報・チケット販売を主に担当する場面

第5条3項修正例:「乙は、チケット販売収入及び協賛金の入金状況を月次で甲に報告し、甲はこれに基づき暫定精算を行うことができる。」 解説: 収益の管理を担う共催者側の透明性を高め、最終精算前の資金繰りの見通しを主幹事側にも共有する。

B-2. 中止時の損失負担割合を修正したい場面

第7条1項修正例:「甲の担当領域(会場・出演契約)に起因する中止の場合は甲が、乙の担当領域(広報・協賛)に起因する中止の場合は乙が、当該中止により生じた費用を単独で負担する。」 解説: 一律の分担割合ではなく、原因が生じた役割分担領域に応じて負担者を分けることで、担当外の事情による損失負担を回避する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、複数の主催者が資金と役割を持ち寄り、対等な立場で一つの公演を共同開催する場合に用いる。一方当事者が単に会場や資金を提供するのみで企画・運営に関与しない場合には、共同開催契約ではなく協賛契約又は業務委託契約の構成がふさわしく、本書式をそのまま用いると収益分配や責任の所在が実態と乖離するおそれがある。

根拠法令 興行場法上の営業許可(同法第2条)は施設の常設的な興行使用について都道府県知事が交付するものであり、実務上は許可名義を単一の主体に集約する運用が一般的であるため、第2条2項のように許可名義人を明確化する必要がある。著作権法第22条は著作物の公の上演・演奏について著作権者の許諾を要する上演権・演奏権を定め、同法第38条は非営利・無料・無報酬の場合の例外を定めるが、入場料を徴収する公演の多くはこの例外に該当しないため、JASRAC等の著作権等管理事業者との利用許諾契約が別途必要となる。

実務でよくある失敗と対策 第一に、著作権等の利用許諾手続をいずれの当事者が行うか定めず、公演直前に手続が未了となる失敗がある。第4条のように担当者と費用負担の帰属を明記する。第二に、興行場法上の許可名義が単独の主体にしか付与できないことを認識せず、対外的な連名表記とのずれから行政対応で混乱が生じる失敗がある。第2条2項のように名義人と協力義務を分けて規定する。第三に、収益分配の割合のみを定め、中止・延期時の損失負担割合を定めないまま契約し、不可抗力発生時に紛争化する失敗もある。公演の規模や興行の性質により適切な分担は異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 対外的な主催名義と行政上の許可名義人を区別して定めたか
  • [ ] 興行場法上の許可申請の担当者及び協力義務を明記したか
  • [ ] 著作権等管理事業者との利用許諾手続の担当及び費用負担を定めたか
  • [ ] 著作権法第38条の非営利要件に該当しないことを前提とした設計になっているか
  • [ ] 会場・出演契約・広報・協賛等の役割分担を具体的に定めたか
  • [ ] 費用及び収益の分担割合を明記したか
  • [ ] 精算のタイミング及び精算書の様式・提示期限を定めたか
  • [ ] 中止・延期時の損失負担割合を帰責事由の有無に応じて定めたか
  • [ ] 一方当事者の帰責事由による中止時の損害賠償の範囲を明記したか