工事が完成した旨を発注者へ届け出て検査を求める書式です。完成年月日、出来形の概要、提出図書の一覧を記載します。提出先や保存期間の目安もあわせて整理しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
工事完了届
第1部: 書式本文
工事完了届
【発注者名】 御中
工事名:【工事名称】 工事場所:【工事場所】 契約日:【契約年月日】 契約工期:【着工予定日】から【完成予定日】まで
下記のとおり工事が完成いたしましたので、公共工事標準請負契約約款【第31条】及び契約書の定めに基づき届け出るとともに、検査の実施を求めます。
第1条(完成年月日) 本工事の完成年月日を【年月日】とする。完成とは、契約図書に定める内容の施工が完了し、受注者において検査を受けられる状態に至った日をいう。
第2条(出来形の概要) 1. 施工内容:【施工内容の概要(例:鉄筋コンクリート造3階建て共同住宅新築工事一式)】 2. 出来形数量:契約数量に対する実施数量を別紙出来形数量表のとおり報告する。 3. 設計変更の有無:【有・無】(有の場合は変更設計図書の番号を付記する) 4. 主要な使用材料及び機器の一覧:別紙のとおり
第3条(提出図書) 本届出には、以下の図書を添付する。 1. 完成図(竣工図)一式 2. 出来形管理図表・品質管理記録 3. 工事写真(着工前・施工中・完成後の各段階を含む) 4. 施工体制台帳及び施工体系図(最終版) 5. 使用材料の試験成績書・検査記録 6. 官公署への届出・検査済証の写し(該当する場合) 7. 取扱説明書及び保証書(設備機器等) 8. 工事日報・打合せ記録簿の写し
第4条(未了事項) 契約内容のうち、天候その他やむを得ない事由により完成時点で未了となっている軽微な事項がある場合、その内容、理由及び完了予定日を別紙のとおり報告する。
第5条(検査の申請) 受注者は、本届出をもって公共工事標準請負契約約款【第31条】に定める完成検査の実施を発注者に求める。検査希望日は【年月日】とする。
第6条(前払金・部分払金との関係) 本工事について前払金又は部分払金を受領している場合、その精算は完成検査合格後、契約書に定める出来形確認手続に従って行う。
第7条(引渡しとの関係) 本届出は工事完成の事実を通知するものであり、目的物の引渡しは、検査合格後、別途「引渡書」により行う。
第7条の2(近隣・第三者への影響の報告) 施工に伴い近隣の建物・構造物等に影響を及ぼした事実がある場合、受注者はその内容、対応状況及び残存する懸念事項を本届出とあわせて発注者に報告する。
第8条(届出者) 受注者:【会社名・代表者名】(建設業許可番号:【許可番号】) 届出日:【年月日】 提出先:【発注者担当部署・担当者名】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 受注者の立場からの修正例
A-1. 未了事項があるが完成届を先行提出したい場合 第4条を「軽微な未了事項(【内容】)については、完成に影響を及ぼさない範囲であることを確認の上、完了予定日【年月日】までに是正する。当該事項は完成検査における指摘事項として取り扱われることに同意する。」に修正する。工期内完成の実質を維持しつつ、軽微な残工事を明示的に切り分ける趣旨である。
A-2. 完成検査日を受注者側で複数候補提示したい場合 第5条を「検査希望日は【年月日】、【年月日】、【年月日】のうちいずれかとし、発注者の都合を踏まえて決定する。」に修正する。発注者側検査体制の都合による検査日程の遅延リスクを軽減する目的である。
B節: 発注者の立場からの修正例
B-1. 提出図書の事前確認を求めたい場合 第3条に「発注者は、完成届受理前に完成図及び出来形管理記録の事前確認を求めることができる。受注者は、求めに応じ検査日の【日数】日前までに関係書類を提出する。」を追加する。検査当日の手戻りを防ぐ趣旨である。
B-2. 未了事項がある場合の完成届受理を拒否したい場合 第4条に第2項として「未了事項が契約内容の主要部分に及ぶ場合、発注者は本届出を受理せず、受注者に対し完成の是正を求めることができる。」を追加する。実質的な未完成工事を完成届によって既成事実化させないための条項である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面 契約図書に定める工事内容の施工が完了した時点で、発注者に対し完成の事実を通知し、検査の実施を求めるために使用する。公共工事標準請負契約約款上、完成検査は受注者からの完成通知を起点として一定期間内に実施される仕組みが一般的であり、本届出はその起点となる重要な書式である。
使ってはいけない場面 主要な施工内容が未完了の段階で、工期内完成の体裁を整えるためだけに提出することは避けるべきである。実態を伴わない完成届は、検査で不合格となった場合に契約違反や工期遅延の責任所在をめぐる紛争を招くほか、建設業法上の誠実施工義務(建設業法第25条の27等の趣旨)にも反するおそれがある。
根拠法令 - 公共工事標準請負契約約款(中央建設業審議会決定)第31条:検査及び引渡し - 同約款第32条:部分使用等 - 民法第633条:報酬の支払時期(仕事の目的物の引渡しと報酬支払の関係) - 民法第562条(請負契約に準用される契約不適合責任の考え方。同法第559条により売買の規定が準用される場面がある) - 建設業法第20条:建設工事の見積り等(工期・完成時期の適正な設定)
よくある失敗と条項上の対策 1. 出来形数量や設計変更の反映漏れがあり、検査で指摘を受けて再提出となるケース。対策として第2条のように設計変更の有無及び反映状況を明記する。 2. 提出図書に不備があり、検査自体が延期されるケース。対策として第3条のように提出図書を網羅的にリスト化し、B節B-1のように事前確認手続を設ける。 3. 未了事項を曖昧にしたまま届出し、後日「完成していなかった」との主張を招くケース。対策として第4条のように未了事項の内容・理由・完了予定日を明記し、A-1のように検査上の取扱いを合意する。
また、令和2年民法改正により、請負における契約不適合責任は売買の規定(民法第562条から第564条まで)が準用される整理となっており(民法第559条)、完成届の記載内容(特に出来形の概要及び未了事項の記載)は、後日、契約不適合責任の起算点や適用範囲を判断する際の重要な証拠となり得る。したがって、完成届の記載は正確性を最優先し、実際の出来形と乖離した楽観的な記載を避けるべきである。
工事完成の認定は、検査合格の可否や引渡し、報酬支払時期に直結する重要な法的判断を伴う。本書式の適用可否を含め、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- 工事名・工事場所・契約日が契約書と一致しているか
- 完成年月日が契約工期の終期又は変更後の工期と整合しているか
- 出来形数量が契約数量及び設計変更内容と一致しているか
- 完成図(竣工図)が最終版として整備されているか
- 出来形管理記録・品質管理記録に抜け漏れがないか
- 工事写真が着工前・施工中・完成後の各段階を網羅しているか
- 施工体制台帳が最終の下請構成を反映しているか
- 未了事項がある場合、内容・理由・完了予定日が明記されているか
- 検査希望日が発注者の検査体制と調整済みか
- 前払金・部分払金の精算方法が契約書と整合しているか
- 引渡しは別書式で行うことが明記され、混同されていないか
- 提出先・提出方法・提出期限を確認したか
- 取扱説明書・保証書等、設備機器の引継資料が完成届提出時点で準備できているか
- 官公署への完了届出・検査済証の取得が必要な工事の場合、その手続状況を確認したか