計測タグをサイトへ設置する際の役割分担を定める覚書。取得情報の範囲と電気通信事業法の外部送信規律、個人情報保護法第31条の確認義務に対応する。

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効果測定タグ設置に関する覚書

第1部: 書式本文

〇〇〇〇(以下「甲」という。広告主)と〇〇〇〇(以下「乙」という。サイト運営者)とは、甲が実施する広告の効果測定のため、乙が運営するウェブサイト(以下「本サイト」という。)に効果測定用タグ(以下「本タグ」という。)を設置することについて、次のとおり覚書(以下「本覚書」という。)を締結する。

第1条(目的) 本覚書は、甲が広告経由の成果(コンバージョン)を計測するために本サイトへ本タグを設置するにあたり、設置箇所、取得情報の範囲及び甲乙の役割分担を明確にすることを目的とする。

第2条(本タグの設置箇所及び方法) 乙は、甲の指定する本タグを、別紙に定めるページ(購入完了ページ、会員登録完了ページ等)に、甲の指定する方法により設置する。

第3条(取得情報の範囲) 1. 本タグにより取得される情報は、別紙に定めるとおりとし、原則としてクッキー等の識別子、ページ閲覧履歴及びコンバージョンの発生有無に限る。 2. 甲は、本タグにより氏名、住所、電話番号等の個人情報を直接取得しない設計とする。

第4条(外部送信規律への対応) 1. 本タグの設置により、本サイトの利用者の端末に対しクッキー等を送信させる場合、乙は電気通信事業法第27条の12に定める通知又は公表の措置を、本サイトのプライバシーポリシー又は個別の案内表示により講ずる。 2. 甲は、乙が前項の措置を講ずるために必要な情報(送信される情報の内容、送信先の名称、利用目的)を乙に提供する。

第5条(個人関連情報の第三者提供にかかる確認) 1. 本タグにより取得される識別子情報が個人情報保護法第2条第7項に定める個人関連情報に該当し、乙から甲に対する提供が行われると整理される場合、甲は同法第31条第1項に基づき、当該情報を個人データとして取得することの本人同意が取得されていること等を確認する。 2. 乙は、甲が前項の確認を行うために必要な範囲で、本サイトにおける同意取得の実施状況について情報を提供する。

第6条(データの帰属及び利用目的の限定) 本タグにより取得されたデータは甲に帰属し、甲は当該データを広告効果の測定及び改善の目的以外に利用しない。

第7条(本サイトへの影響) 1. 乙は、本タグの設置により本サイトの表示速度又は動作に重大な支障が生じた場合、甲に対しその旨を通知し、甲は原因を調査のうえ必要な対応を行う。 2. 甲は、本タグの仕様変更を行う場合、事前に乙へ通知する。

第8条(設置期間) 本タグの設置期間は別紙のとおりとし、期間満了後、乙は本タグを本サイトから遅滞なく撤去する。

第9条(秘密保持) 甲及び乙は、本覚書の履行の過程で知り得た相手方の営業上の秘密情報を第三者に開示してはならない。

第10条(協議) 本覚書に定めのない事項について疑義が生じた場合、甲乙誠実に協議のうえ解決する。

第11条(合意管轄) 本覚書に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 広告主向けの修正

A-1. データ提供範囲の拡張要求

修正後:「乙は、コンバージョン情報に加え、購入金額及び購入商品カテゴリについても、個人を特定しない集計情報として甲に提供する。」 一言解説: 単純なコンバージョン有無だけでなく、広告の費用対効果分析を精緻化するため、匿名化された付加情報の提供を求める広告主側の修正である。

A-2. タグ設置不備による計測誤差の責任明確化

追加条文例:「乙の作業に起因して本タグの設置が不適切であったことにより計測データに著しい誤差が生じた場合、乙は甲に対しその旨を速やかに通知し、是正に協力する。」 一言解説: 計測データの精度は広告予算配分の判断材料となるため、設置不備の早期発見・是正の枠組みを設ける修正である。

B. サイト運営者向けの修正

B-1. 通知・公表措置の実施主体と費用負担の明確化

修正後:「第4条第1項の通知又は公表に必要なプライバシーポリシーの改訂作業は乙が行うものとし、これに要する合理的な費用は甲乙協議のうえ甲が負担する。」 一言解説: 複数の広告主から同種のタグ設置依頼を受ける媒体運営者にとって、都度のポリシー改訂は負担となるため、費用分担を明確化する修正である。

B-2. 表示速度低下時のタグ撤去権の追加

追加条文例:「本タグの設置により本サイトの表示速度が著しく低下し、乙の運営に重大な支障が生じると乙が合理的に判断した場合、乙は甲への通知のうえ本タグを一時的に撤去することができる。」 一言解説: サイトのパフォーマンスは検索順位やユーザー体験に直結するため、サイト運営者に緊急時の裁量的撤去権を認める修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、広告主が自ら実施する広告の効果測定のため、提携先や取引先が運営するウェブサイト(自社の管理外にあるサイト)に効果測定用タグの設置を依頼する場面で用いる。自社が運営するウェブサイトへの自社タグの設置には契約書は不要であり、本書式は他社サイトとの間で役割分担を明確にする必要がある場面に限って用いるべきである。

根拠法令 効果測定タグの設置は、令和5年施行の改正電気通信事業法第27条の12(外部送信規律)の典型的な適用場面である。同条は、利用者の端末に対する情報の送信について、送信される情報の内容及び送信先を利用者に通知し、又は容易に知りうる状態に置くことを求めており、効果測定タグを通じたクッキー等の外部送信もこの規律の対象となりうる。加えて、取得された識別子情報を広告主(甲)に提供する行為が、個人情報保護法第2条第7項に定める個人関連情報の第三者提供に該当する場合、同法第31条第1項に基づき、提供先(甲)において当該情報を個人データとして取得することについて本人の同意が得られていること等を確認する義務が生じる。これらの規律は、単に技術的にタグを設置すれば足りるものではなく、通知・公表の実装及び本人同意の確認体制の整備という組織的な対応を要する点に留意すべきである。

実務でよくある失敗と対策 第一に、タグ設置の依頼を受けたサイト運営者が、外部送信規律への対応を「広告主側の責任」と誤解し、自社サイトのプライバシーポリシーの改訂を怠る失敗がある。第4条のように通知・公表の実施主体を明確にし、B-1のように費用分担も含めて取り決めることが対策となる。第二に、個人関連情報の第三者提供規制への対応として、本人同意の取得状況の確認を行わないまま識別子情報の授受を継続する失敗がある。第5条のように確認の枠組みを契約上定めることが対策となる。第三に、複数の広告主のタグを次々と設置した結果、サイトの表示速度が著しく低下し、SEO評価やユーザー離脱率に悪影響が生じる失敗がある。B-2のような緊急時のタグ撤去権を設けることが対策となる。

外部送信規律及び個人関連情報の第三者提供規制への該当性の判断は個別の技術仕様やデータの流れによって異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] タグの設置箇所及び取得情報の範囲を別紙で具体的に特定したか
  • [ ] 個人情報を直接取得しない設計になっているか確認したか
  • [ ] 電気通信事業法第27条の12に基づく通知・公表の実施主体を明確にしたか
  • [ ] 個人関連情報の第三者提供(個人情報保護法第31条)への該当性を確認したか
  • [ ] 取得データの利用目的を効果測定に限定する条項を設けたか
  • [ ] タグ設置によるサイトパフォーマンスへの影響への対応方針を定めたか
  • [ ] タグの設置期間及び終了後の撤去義務を定めたか
  • [ ] タグ仕様変更時の事前通知の手続を定めたか
  • [ ] 費用負担(プライバシーポリシー改訂等)の分担を確認したか
  • [ ] 秘密保持義務の対象範囲を確認したか