自社メディアへ広告を掲載する際の契約書。掲載基準と掲載拒否事由を定め、景品表示法第5条の不当表示や薬機法第66条の誇大広告のリスクを分担する。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
広告媒体掲載契約書
第1部: 書式本文
〇〇〇〇(以下「甲」という。媒体社)と〇〇〇〇(以下「乙」という。広告主)とは、甲が運営するウェブメディア〇〇〇〇(以下「本メディア」という。)への広告掲載について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 甲は乙に対し、本メディアの別紙に定める広告枠(以下「本広告枠」という。)を提供し、乙は当該広告枠に別紙に定める広告(以下「本広告」という。)を掲載する。
第2条(掲載期間及び掲載料) 本広告の掲載期間及び掲載料は別紙のとおりとする。
第3条(掲載基準) 1. 甲は、本広告の内容が次の各号のいずれかに該当すると判断した場合、掲載を拒否することができる。 一 法令に違反し、又は違反するおそれがあるもの 二 景品表示法第5条にいう優良誤認表示又は有利誤認表示に該当するおそれがあるもの 三 薬機法第66条にいう医薬品等の誇大広告に該当するおそれがあるもの 四 本メディアの読者層又は掲載方針に照らして不適切と甲が合理的に判断するもの 2. 甲は、掲載拒否をする場合、その理由を乙に通知する。
第4条(表示責任の分担) 1. 本広告の表示内容(文言、画像、訴求内容)は乙が作成し、その内容の正確性及び適法性については乙が責任を負う。 2. 甲は、掲載前に本広告の内容を審査し、明らかに法令違反が疑われる表現については修正を求めることができるが、審査の実施は乙の表示責任を免除するものではない。
第5条(掲載拒否事由の発生後の対応) 掲載開始後に第3条各号に定める事由が判明した場合、甲は乙に対し是正を求め、乙が是正に応じない場合、甲は掲載を停止することができる。
第6条(薬機法上の留意) 乙が化粧品、健康食品又は医療機器に関する広告を掲載する場合、乙は薬機法第66条(誇大広告等の禁止)及び第68条(未承認医薬品等の広告の禁止)に抵触する表現を用いないことを甲に対し表明し、保証する。
第7条(掲載料の支払) 乙は、別紙に定める掲載料を、別紙に定める支払期日までに甲に支払う。
第8条(広告効果の不保証) 甲は、本広告の掲載によるクリック数、コンバージョン数その他の効果を保証するものではない。
第9条(知的財産権) 本広告に使用される画像、文言その他の素材にかかる知的財産権は乙又は乙に権利を許諾する第三者に帰属し、乙は当該素材の使用について正当な権原を有することを甲に対し表明し、保証する。
第10条(第三者からのクレーム対応) 本広告の内容に起因して第三者からクレーム又は権利侵害の主張がなされた場合、乙は自己の責任と費用負担において対応し、甲に生じた損害を賠償する。
第11条(掲載の中止) 甲は、天災地変、システム障害その他やむを得ない事由により本広告枠を提供できない場合、乙に対しその旨を通知し、代替措置又は掲載料の日割り精算について協議する。
第12条(契約期間) 本契約の有効期間は、別紙に定める掲載期間と同一とする。
第13条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 媒体社向けの修正
A-1. 事後審査による即時掲載停止権の強化
修正後:「甲は、掲載開始後であっても、第3条各号に該当する事由を発見した場合、乙への事前通知を要せず即時に掲載を停止することができる。この場合、既払いの掲載料は返還しない。」 一言解説: 違法広告の掲載継続による媒体社自身のレピュテーションリスク及び行政指導リスクを避けるため、即時停止権を強化する修正である。
A-2. 審査は免責を目的としない旨の明記強化
修正後:「甲による掲載前審査は、本メディアの品質維持を目的とした任意の確認にとどまり、本広告の適法性を保証するものではない。乙は、甲の審査を経たことを理由に自己の表示責任を免れない。」 一言解説: 媒体社が行う審査があたかも適法性のお墨付きであるかのように誤解されることを防ぎ、表示責任があくまで広告主にあることを強調する修正である。
B. 広告主向けの修正
B-1. 掲載拒否・停止時の理由開示義務の強化
修正後:「甲は、掲載を拒否し、又は掲載を停止する場合、該当する号及びその判断根拠を具体的に乙に通知する。」 一言解説: 恣意的な掲載拒否・停止を防ぎ、広告主が是正措置を講じられるようにするための修正である。
B-2. 掲載効果の最低保証条項の追加
追加条文例:「甲は、本広告枠について、別紙に定める最低表示回数(インプレッション数)を保証し、掲載期間中に当該最低表示回数に達しなかった場合、乙に対し不足分に応じた掲載料の返還又は掲載期間の延長を行う。」 一言解説: 効果不保証が原則であっても、一定の露出量については媒体社側にコミットメントを求める広告主側の修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、自社が運営するウェブメディアの広告枠に、外部の広告主から広告を掲載する場面で用いる。他方、記事の体裁を取りながら広告であることを明示するタイアップ記事広告の制作を伴う場合には、PR表記や著作権処理に関する条項がより重要になるため、記事広告制作契約書を別途検討すべきである。
根拠法令 広告表示の適法性については、景品表示法第5条が、商品又は役務の内容について実際のものより著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)及び取引条件について実際のものより著しく有利であると誤認させる表示(有利誤認表示)を禁止している。同条の措置命令の名宛人は、表示内容の決定に関与した事業者(通常は広告主)であるが、媒体社が表示内容の作成に主体的に関与した場合には媒体社も対象となりうる。また、化粧品、健康食品、医療機器等に関する広告については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)第66条が虚偽誇大広告を禁止し、同法第68条が未承認の医薬品等についての広告を禁止している。これらの規制は表示を行う広告主に第一次的な責任があるが、媒体社としても掲載基準を設け、明らかな違反が疑われる場合には掲載を拒否する運用を行うことが、媒体の信頼性維持及び自己の責任軽減の観点から重要である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、媒体社が掲載前審査を行ったことをもって、広告主が「媒体社のお墨付きを得た」と誤解し、表示内容の適法性確認を怠る失敗がある。第4条第2項及びA-2のように、審査の実施が表示責任を免除しないことを明記することが対策となる。第二に、健康食品や化粧品の広告について、薬機法上のNGワード(「治る」「痩せる」等の効果を断定する表現)のチェック体制がないまま掲載し、後日行政指導の対象となる失敗がある。第6条のように薬機法上の表明保証を広告主に求め、掲載基準に薬機法該当性を明記することが対策となる。第三に、掲載効果に関する期待値のずれから、広告主が「思ったほど効果がなかった」として掲載料の減額や返還を求めるトラブルが生じる失敗がある。第8条のように効果不保証を明記しつつ、B-2のような最低表示回数保証など、双方が納得できる合理的な代替措置を検討することが対策となる。
景品表示法・薬機法上の広告表現の適法性は個別の表示内容ごとに判断されるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 広告枠の仕様(掲載位置・サイズ・掲載期間)を別紙で特定したか
- [ ] 掲載基準(法令違反・不適切表現等)を具体的に定めたか
- [ ] 表示内容の作成主体及び表示責任の所在を明確にしたか
- [ ] 薬機法上の広告規制(第66条・第68条)への対応を確認したか
- [ ] 掲載前審査が表示責任を免除しない旨を明記したか
- [ ] 掲載拒否・掲載停止時の通知方法及び理由開示を定めたか
- [ ] 広告効果の保証の有無(不保証か最低表示回数保証か)を明確にしたか
- [ ] 第三者からのクレーム対応の責任分担を定めたか
- [ ] 素材の知的財産権について広告主の表明保証を得たか
- [ ] 掲載料の支払期日及び中止時の精算方法を定めたか