国際複合一貫輸送を担う利用運送事業者へ集荷から海外配送までを委託する書式。貨物利用運送事業法とFIATA約款を踏まえ、責任限度額と遅延損害の取扱いを明記します。

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国際フォワーダー業務委託契約書

第1部: 書式本文

【荷主】【商号・所在地】(以下「甲」という。)と【フォワーダー】【商号・所在地・貨物利用運送事業登録番号】(以下「乙」という。)は、甲の貨物に係る国際複合一貫輸送業務の委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的)

本契約は、乙が貨物利用運送事業法に基づく利用運送事業者として、甲の指定する貨物につき集荷地から仕向地までの国際複合一貫輸送(海上運送、航空運送及び陸上運送を組み合わせた輸送を含む。)を引き受けることを目的とする。

第2条(委託業務の範囲)

  1. 甲は乙に対し、次の業務(以下「本件業務」という。)を委託する。 (1) 集荷地における貨物の受取及び梱包状態の確認 (2) 海上運送人、航空運送人その他実運送人の手配 (3) 複合運送証券(House B/L又はFIATA複合運送証券(FBL)を含む。)の発行 (4) 仕向地における貨物の引渡し及び配送手配 (5) その他甲乙が別途合意する附帯業務
  2. 通関業務は本件業務に含まないものとし、別途通関業務委託契約による。

第3条(運送の引受け及び運送証券の発行)

乙は、甲から貨物の運送を引き受けたときは、甲の請求により、運送区間、運賃、貨物の受渡場所等を記載した複合運送証券を発行する。当該証券には、乙が加盟する国際団体(FIATA等)が定める複合運送証券約款(FBL約款)を適用する旨を記載することができる。

第4条(運賃及び諸掛り)

  1. 甲は乙に対し、本件業務の対価として、別紙運賃表に定める海上運賃、航空運賃、陸上運賃及び取扱手数料を支払う。
  2. 為替変動、燃料費変動等により運賃の見直しが必要となった場合、乙は甲に対し事前に書面で通知し、協議の上で改定する。

第5条(引渡し及び危険負担の移転)

  1. 貨物の滅失又は毀損に係る危険は、乙が集荷地において貨物を受け取った時点で甲から乙に移転する。
  2. 乙は、仕向地における貨物の引渡しをもって本件業務を完了したものとする。

第6条(運送人の責任限度額)

  1. 乙の貨物の滅失、毀損又は延着に関する責任は、国際海上物品運送法及び乙が適用するFIATA複合運送証券約款の定めに従うものとし、乙の責任限度額は、貨物1キログラムあたり【 】計算単位(SDR)又は貨物1梱包若しくは1単位あたり【 】計算単位(SDR)のいずれか高い額を上限とする。
  2. 貨物の種類・性質上、前項の責任限度額を超える価格を運送証券に申告した場合(価格申告)、当該申告価格を限度として乙が責任を負う。この場合、甲は別途申告割増運賃を支払う。

第7条(延着及び遅延損害)

  1. 乙の責めに帰すべき事由による輸送の遅延により甲に損害が生じた場合、乙は当該遅延に係る運賃相当額を上限として賠償する。ただし、乙に故意又は重大な過失がある場合はこの限りでない。
  2. 天災、戦争、ストライキ、港湾混雑、政府機関の措置その他乙の合理的な支配を超える事由による遅延について、乙は責任を負わない。

第8条(危険物・特殊貨物の取扱い)

  1. 甲は、危険物、生鮮品その他特殊な取扱いを要する貨物を委託する場合、事前に乙にその性質及び取扱方法を書面で通知する。
  2. 甲が前項の通知を怠ったことにより生じた損害については、甲がその責任を負う。

第9条(保険)

乙は、甲に対し貨物海上保険(オールリスク担保等)の付保を推奨するものとし、甲が付保しない場合、乙が負う責任は第6条に定める責任限度額の範囲にとどまる。

第10条(下請運送人の使用)

乙は、本件業務の遂行のため実運送人その他の下請業者を使用することができる。この場合、乙は下請業者の選定及び行為について甲に対し責任を負う。

第11条(秘密保持)

甲及び乙は、本契約の履行に関連して知り得た相手方の営業上の秘密を第三者に開示してはならない。本条の義務は契約終了後【3】年間存続する。

第12条(契約期間及び解約)

  1. 本契約の有効期間は締結日から【1】年間とし、期間満了の【1】か月前までに解約の申出がないときは同一条件でさらに【1】年間更新する。
  2. 甲又は乙は、【2】か月前に書面で通知することにより本契約を解約できる。

第13条(契約解除)

甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、催告後相当期間内に是正されないとき、又は貨物利用運送事業登録の取消し等の事由が生じたときは、書面通知により本契約を解除できる。

第14条(反社会的勢力の排除)

甲及び乙は、自己及び自己の役職員が暴力団等の反社会的勢力に該当せず、将来にわたっても該当しないことを表明し、保証する。

第15条(協議及び管轄)

本契約に定めのない事項については甲乙誠実に協議して解決するものとし、本契約に関する紛争については【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 荷主向け修正パターン

荷主側では、第6条の責任限度額が国際海上物品運送法上の標準的水準に設定されているものの、高付加価値貨物を扱う場合は不十分となりやすい。そのため、第6条第2項の価格申告制度の利用を前提に、契約書上「甲は、貨物の実際価格が【 】円を超える場合、乙への価格申告を行うものとする」との運用ルールを明記し、申告漏れによる補償不足を防ぐ修正が有効である。また第7条第1項の遅延損害の上限を「運賃相当額」から「運賃相当額の【2】倍」に引き上げる交渉も、荷主にとって有利な修正となる。

B. フォワーダー向け修正パターン

フォワーダー側では、第10条の下請運送人の使用について「乙は、実運送人が国際海上物品運送法又は関係国の強行法規に基づき責任制限を主張する場合、当該制限の範囲を超えて甲に責任を負わない」とのヒマラヤ条項(Himalaya Clause)相当の免責を追加し、実運送人の責任制限の利益を乙自身にも及ぼす修正が重要である。また第7条第2項の不可抗力免責事由に「実運送人の経営破綻、スペース逼迫による予約不履行」を明示的に加え、近年の国際輸送市況の変動リスクを免責範囲に含める修正が実務上有用である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、荷主が集荷から仕向地配送までの国際複合一貫輸送を、自ら実運送人ごとに個別契約するのではなく、利用運送事業者(フォワーダー)に一括して委託する場面で使用する。フォワーダーが貨物利用運送事業法上の登録又は許可(第一種・第二種貨物利用運送事業)を有しない場合や、単なる運送仲介(ブローカー)にすぎず自らの名で運送責任を負わない事業者との間で本書式をそのまま用いることは避けるべきである。

根拠法令としては、貨物利用運送事業法(利用運送事業の登録・許可制度、運送約款の届出義務)、国際海上物品運送法(運送人の責任限度額、堪航能力担保義務に関する規定)、及びFIATA複合運送証券約款(FBL約款、国際運送業界の標準約款として責任限度額・免責事由を定めるもの)が中心となる。複合運送では区間ごとに適用法規が異なり得るため(いわゆるネットワークライアビリティ方式)、責任限度額の定め方(第6条)は特に慎重な検討が必要である。

実務でよくある失敗として、第一に、責任限度額(第6条)を確認しないまま契約し、高額貨物の滅失時に想定より大幅に低い賠償しか受けられないケースが多い。対策としては、価格申告制度の利用条件を社内マニュアル化し、一定額を超える貨物は必ず申告する運用を徹底することが有効である。第二に、遅延損害(第7条)について、乙の不可抗力免責の範囲を曖昧にしたまま契約し、スペース逼迫等の市況変動時に責任の所在をめぐり紛争化する例が見られる。第三に、下請運送人(実運送人)の行為に関する乙の責任(第10条)を明確にしないまま契約し、事故発生時に乙が「実運送人の責任であり自己は関与しない」と主張して紛争が長期化するケースがある。

複合運送における責任制限の準拠法及び適用約款の解釈は貨物の輸送区間や積替地によって異なるため、条項の当てはめについては契約締結前に国際物流・海事法務に詳しい弁護士に個別事案として確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト(国際フォワーダー業務委託契約用)

  • [ ] 委託先が貨物利用運送事業法上の登録又は許可を保有していることを確認したか
  • [ ] 委託する業務範囲(集荷・実運送人手配・複合運送証券発行・配送)を具体的に特定したか
  • [ ] 適用される運送約款(FIATA FBL約款等)を明記したか
  • [ ] 貨物の滅失・毀損・延着に関する責任限度額を確認したか
  • [ ] 高価品について価格申告制度の利用条件を定めたか
  • [ ] 危険物・生鮮品等特殊貨物の事前通知義務を定めたか
  • [ ] 貨物海上保険の付保推奨及び未付保時の責任範囲を確認したか
  • [ ] 遅延損害の賠償上限と不可抗力免責事由の範囲を定めたか
  • [ ] 下請運送人(実運送人)の使用に関する乙の責任を確認したか
  • [ ] 運賃改定の手続(為替・燃料費変動時)を定めたか
  • [ ] 契約解除事由に貨物利用運送事業登録の取消し等を含めたか
  • [ ] 紛争解決のための管轄裁判所及び準拠法を明記したか