公共工事の下請取引に用いる契約書です。建設業法第19条の記載事項、施工体制台帳への反映、代金の支払期日を明確にします。必要事項を埋めるだけで短時間に整えられる書式です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
公共工事下請契約書
第1部: 書式本文
下請工事契約書
【元請負人名】(以下「甲」という。)と【下請負人名】(以下「乙」という。)は、下記工事(以下「本件下請工事」という。)について、次のとおり下請契約(以下「本契約」という。)を締結する。
【原契約(元請契約)工事名】【発注者名】 【下請工事名】【施工場所】 【下請工期】自 令和【 】年【 】月【 】日 至 令和【 】年【 】月【 】日 【下請代金額】金【 】円(うち取引に係る消費税及び地方消費税の額 金【 】円) 【支払期日】出来形部分の引渡しの日から【 】日以内、かつ引渡しの日から起算して【50】日以内
第1条(総則) 甲及び乙は、信義に従い誠実に本契約を履行するものとし、下請工事の施工については、原契約の設計図書及び甲乙間で別途取り交わす施工条件書に従うものとする。
第2条(工事内容) 本件下請工事の内容は、別紙工事内訳書のとおりとする。乙は、自己の責任と費用負担において、本件下請工事に必要な労働者、資機材及び技術者を確保しなければならない。
第3条(下請代金の額及び支払方法) 甲は、乙が出来形部分の引渡しをした日から起算して【 】日以内であって、かつ、甲が発注者から代金の支払を受けた日から【1】か月以内のできる限り短い期間内に、乙に下請代金を支払わなければならない。 支払方法は、現金払を原則とし、手形による支払をする場合は、割引を受けることができる金融機関による割引可能な手形とし、支払期日は交付日から【120】日以内とする。
第4条(前払金) 甲は、発注者から前払金の支払を受けたときは、下請工事の着手に必要な費用を乙に前払金として支払うよう努めるものとする。前払金の額は、下請代金額に発注者・甲間の前払金の比率を乗じた額を基準として甲乙協議して定める。
第5条(施工体制台帳への記載) 乙は、甲が建設業法第24条の8に基づき作成する施工体制台帳に記載すべき事項(乙の商号、許可番号、健康保険等の加入状況、主任技術者の氏名・資格等)を、甲の求めに応じて速やかに甲に提出しなければならない。
第6条(再下請負の禁止・制限) 乙は、甲の書面による承諾を得た場合を除き、本件下請工事の全部又は主要な部分を第三者に再下請負させてはならない。再下請負をする場合、乙は、当該再下請負契約についても施工体制台帳の記載事項を甲に報告しなければならない。
第7条(技術者の配置) 乙は、建設業法第26条に定める要件を満たす主任技術者(乙が特定建設業者であり、かつ下請代金額が同法施行令に定める金額以上となる場合は監理技術者)を本件下請工事の施工現場に配置し、その氏名、資格及び経験を甲に通知しなければならない。
第8条(安全衛生) 乙は、労働安全衛生法その他関係法令を遵守し、労働災害の防止に必要な措置を講じなければならない。甲は、統括安全衛生管理の観点から、乙に対し必要な指示を行うことができる。
第9条(工期の変更及び追加工事) 甲又は乙は、天災その他やむを得ない事由又は元請契約の変更により工期の変更が必要となったときは、相手方に通知し、協議のうえ工期を変更することができる。追加工事又は変更工事が生じたときは、甲乙協議のうえ、下請代金額を変更する。
第10条(検査及び引渡し) 乙は、本件下請工事を完成したときは、甲に通知し、甲の検査を受けなければならない。甲は、通知を受けた日から【14】日以内に検査を完了し、結果を乙に通知する。
第11条(契約不適合責任) 甲は、引き渡された工事目的物に契約不適合があるときは、乙に対し修補又は損害賠償を請求することができる。この責任の期間は、引渡しの日から【1】年間とする。
第12条(遅延利息) 甲が第3条の支払期日までに下請代金を支払わないときは、乙は、支払期日の翌日から支払をする日までの日数に応じ、下請代金の額に年【14.6】パーセントの割合を乗じて計算した額を遅延利息として甲に請求することができる。
第13条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、催告後相当期間を経過してもなお是正されないときは、本契約を解除することができる。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 元請負人の立場からの修正例
A-1(発注者との連動条項) 「本契約に定める下請工事の内容、工期及び下請代金額は、原契約における発注者の指示又は設計変更により変更されることがあり、その場合、甲は乙に速やかに通知し、必要な範囲で本契約の内容を変更することができる。」 一言解説: 原契約(発注者-元請)の変更が下請契約に波及することを明記し、元請が板挟みになることを防ぐ趣旨。ただし建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)に抵触しないよう、変更に伴う代金調整は必ず協議事項とする。
A-2(施工体制台帳提出の徹底) 「乙は、本契約締結後【7】日以内に、再下請負契約がある場合はその契約書の写しを添えて、施工体制台帳の記載事項を甲に提出しなければならない。乙がこれを怠った場合、甲は下請代金の支払を保留することができる。」 一言解説: 建設業法第24条の8第2項に基づく再下請負通知の徹底のための実務上の担保措置。
B節: 下請負人の立場からの修正例
B-1(支払遅延への対抗) 「甲が第3条に定める支払期日を経過してもなお下請代金を支払わないときは、乙は、本件下請工事の全部又は一部の施工を中止することができる。」 一言解説: 建設業法上、元請の支払遅延に対する明確な制裁規定はないため、契約上で施工中止権を明記することが下請保護の実務的手段となる。
B-2(不当な指値契約の排除) 「下請代金の額は、乙が提示した見積りを基礎として甲乙協議のうえ決定するものとし、甲が乙の見積りを踏まえずに一方的に代金額を指定した場合には、乙は当該金額に拘束されない。」 一言解説: 建設業法第19条の3が禁止する「不当に低い請負代金の禁止」の趣旨を契約書上でも確認的に規定する例。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面 公共工事において元請負人が下請負人に工事の一部を発注する場合に使用する。特に公共工事は施工体制台帳・施工体系図の作成が必須であり(建設業法第24条の8、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第15条)、下請契約書にもこれらの提出義務を反映させる必要がある。
使ってはいけない場面 資材や機器の単純な売買契約(業として継続的な物品供給契約)には適さない。また、下請ではなく元請負人が自ら直接施工体制に組み込む労働者派遣(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の適用対象)との峻別に注意し、実態が労働者供給や偽装請負に該当する場合はこの書式を使用すべきではない。
根拠法令 本書式は建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)に定める必要記載事項に加え、下請契約特有の規定として同法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)、第20条の2(工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の提供)、第24条(下請代金の支払)、第24条の6(特定建設業者の下請代金の支払期日等)を踏まえて構成した。施工体制台帳・施工体系図については同法第24条の8を根拠とし、公共工事については公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第15条によりその作成・提出が義務付けられている。技術者配置については同法第26条及び第26条の3(職務等)を参照した。
よくある失敗と条項上の対策 第一に、下請代金の支払期日を「出来形部分の引渡しの日から相当の期間内」とだけ曖昧に定め、建設業法第24条の6第3項が定める「引渡しの申出の日から起算して50日以内」という上限に抵触する例がある。第3条のように具体的な日数上限を明記することで法令違反を防止する。第二に、再下請負に関する承諾手続を欠いたまま施工が進み、施工体制台帳の記載に漏れが生じる例が多い。第6条・第5条のように再下請負の事前承諾と台帳記載事項の提出を契約上義務化することが対策となる。第三に、追加工事・変更工事が口頭指示で先行し、下請代金額の変更協議が後回しになり紛争化する例がある。第9条のように工期・代金変更の協議義務を明記し、変更指示は書面化する運用と併せて用いることが望ましい。
本書式の適用可否を含め、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- 元請負人が発注者と締結した原契約(元請契約)の内容と整合しているか
- 下請代金額が建設業法第19条の3に照らして不当に低い額となっていないか
- 支払期日が建設業法第24条の6の上限(引渡し申出日から50日以内)を超えていないか
- 手形払を行う場合、割引可能な手形か、支払期日が交付日から120日を超えていないか
- 施工体制台帳への記載事項(商号、許可番号、健康保険等加入状況、技術者情報)の提出時期を定めたか
- 再下請負の可否及び再下請負時の報告義務を規定したか
- 主任技術者又は監理技術者の配置及び通知方法を定めたか(建設業法第26条)
- 前払金を元請から下請へ配分する場合の基準・比率を明記したか
- 工期変更・追加変更工事が生じた場合の協議手続を定めたか
- 契約不適合責任の期間及び範囲が原契約との整合性を保っているか
- 解除事由及び解除時の出来形部分の精算方法を定めたか
- 建設業法第20条の2に基づく工期に影響を及ぼす情報提供義務への対応を確認したか