正当な理由のない婚約破棄について、婚姻予約の債務不履行及び民法第709条を根拠に精神的損害と支出済み実費の賠償を求める書面です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
婚約不当破棄による慰謝料請求書
第1部: 書式本文
【相手方住所】 【相手方氏名】 様
【作成日】
【差出人住所】 【差出人氏名】 印
件名: 婚約破棄に伴う損害賠償請求について
拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げる。突然の書面となり恐縮であるが、下記のとおり申し入れる。
- 差出人と貴殿は、【婚約が成立したと考えられる時期】頃、婚姻の意思をもって将来婚姻することを約した(以下「本件婚約」という。)。
- 本件婚約の成立を裏付ける事実として、【結納・両家顔合わせ・同棲開始・結婚式場の予約・招待状の準備等、婚約の存在を示す事実】が存在する。
- しかしながら、貴殿は、【破棄の時期】、【破棄の経緯・伝達方法】により、一方的に本件婚約を破棄する旨を告げた。
- 貴殿による本件婚約の破棄について、正当な理由は見当たらないものと考える。差出人が把握している経緯は、【破棄に至る具体的な事情】のとおりである。
- 貴殿の行為は、婚姻を目的とする合意に基づく債務の不履行に該当するとともに、民法第709条に定める不法行為を構成し、差出人は多大な精神的苦痛を被った。
- 差出人は、本件婚約の履行を前提として、【結婚式場のキャンセル料・新居の契約費用・引越費用等】として、合計金【実費損害額】円の支出を余儀なくされた。
- 上記精神的損害及び実費損害を合算し、差出人が貴殿に請求する損害賠償額は、金【請求総額】円である。その内訳は、慰謝料相当額【金額】円及び実費相当額【金額】円のとおりである。
- 差出人は、貴殿に対し、本書到達後【回答期限、例:2週間】以内に、上記金員を下記口座へお振込みいただくよう求める。 振込先: 【金融機関名・支店名・預金種別・口座番号・口座名義】
- 貴殿から本件婚約に際して受領した【結納金・婚約指輪等】については、【返還を求める・求めない】ものとし、その取扱いは別途協議する。
- 上記期限までにご対応いただけない場合、差出人は、家庭裁判所への調停申立て、通常訴訟の提起その他の法的手続への移行を検討する。
- 本書に対するご意見・ご反論がある場合は、期限内に、その理由及び資料とともに書面でご回答いただきたい。
- 本件に関するご連絡は、下記宛先までお願い申し上げる。
敬具
回答送付先 【担当窓口・住所・電話番号・メールアドレス】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 請求する側の立場で作成する場合
修正後の文例:
差出人は、【招待状の発送・職場や親族への婚姻の報告等】により、婚姻に向けた準備を対外的にも進めていたものであり、本件婚約の成立及びその履行に対する信頼は客観的にも裏付けられている。
一言解説: 婚約は口頭の合意のみでも成立し得るが、破棄の不当性を基礎づけるためには、婚姻に向けた準備が対外的にどこまで進行していたかを具体的に示すことが有効である。
B. 請求を受けた側が回答書として転用する場合
修正後の文例:
差出人が主張する経緯とは異なり、本件婚約の解消は、【価値観の相違・双方の合意等、正当な理由と考える事情】によるものであり、一方的な破棄には当たらないと考える。
一言解説: 婚約解消に至る事情や責任の所在は双方の言い分が対立しやすいため、回答書では自らの認識する経緯を具体的に示し、正当な理由の有無について反論することが中心となる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、当事者間で将来婚姻する旨の合意が客観的な事情によって裏付けられ、かつ、その合意を正当な理由なく一方的に破棄されたと評価できる場合に使用する。単なる交際関係の解消や、双方の合意による婚約解消の場合には適用場面を異にするため、使用を控えるべきである。
婚約は、判例上、婚姻を目的とする一種の予約であり、正当な理由のない破棄は、婚姻予約の債務不履行として損害賠償責任を生じさせるとともに、民法第709条の不法行為にも該当し得ると解されている。したがって、本書式では、民法第415条(債務不履行による損害賠償)の構成と、不法行為構成の双方を念頭に置いた記載としている。損害の範囲については、精神的損害(慰謝料)に加え、婚姻の準備のために支出した実費(結婚式場のキャンセル料、新居の契約費用等)も、婚約の存在及び履行への信頼を前提に支出されたものである限り、賠償の対象となり得る。また、消滅時効については、債務不履行構成による場合は民法第166条、不法行為構成による場合は民法第724条が問題となり得るため、いずれの構成で請求するかによって起算点や期間の考え方が異なる点にも留意する。
なお、破棄に至る「正当な理由」の有無は、双方の職業・生活状況の変化、健康上の事情、価値観の相違の程度など、個々の事情を総合的に考慮して判断されるものであり、一律の基準があるわけではない。本書式はあくまで一般的な記載例であり、正当な理由の評価は事案ごとに大きく異なる。
実務でよくある失敗として、次の点が挙げられる。第一に、婚約の成立自体を裏付ける事実を示さないまま請求を行い、単なる交際関係の解消にすぎないと反論される例がある。この対策として、第2項に結納や両家の顔合わせ、招待状の準備状況など、婚約の存在を客観的に示す事実を具体的に記載する。第二に、破棄の「正当な理由」の有無について十分な検討をせずに請求し、相手方の事情(健康上の問題、経済状況の急変等)が正当な理由として認められてしまう例がある。この対策として、第4項で破棄に至る経緯を丁寧に記載し、正当な理由がないと考える根拠を明確にする。第三に、精神的損害と実費損害の区別をせずに一括で請求し、後日の交渉で内訳の説明に窮する例がある。この対策として、第7項で内訳を明示する。第四に、結納金や婚約指輪の返還請求と慰謝料請求を一つの書面の中で整理せずに記載し、相手方の対応をかえって複雑にしてしまう例もある。この対策として、第9項で受領物の取扱いを慰謝料請求とは別立てで記載し、協議事項として切り分けておく。婚約の成否や破棄の正当性は、当事者双方の認識が食い違いやすく、事実認定によって結論が左右される分野であるため、個別の状況については専門家に確認しながら進めることが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 婚約(将来婚姻する旨の合意)が成立していたことを示す事実を整理したか
- [ ] 結納、顔合わせ、同居、招待状の準備など客観的な裏付け資料を確保したか
- [ ] 破棄に正当な理由がないと考える根拠を具体的に整理したか
- [ ] 実費損害(式場費用、新居費用等)の領収書・契約書を保存しているか
- [ ] 精神的損害と実費損害の内訳を分けて記載したか
- [ ] 結納金や婚約指輪など受領物の取扱いについて方針を決めたか
- [ ] 振込先口座情報に誤りがないか確認したか
- [ ] 回答期限が相手方に検討の猶予を与える長さになっているか
- [ ] 家庭裁判所の調停手続についても選択肢として検討したか
- [ ] 送付前に弁護士等の専門家に相談し、方針の妥当性を確認したか
- [ ] 請求の法的構成(債務不履行構成・不法行為構成)のいずれに重点を置くか整理したか
- [ ] 消滅時効(民法第166条・第724条)の起算点と期間を確認したか
- [ ] 双方の親族間で既に金銭のやり取りが生じていないか確認し、請求額との重複がないか整理したか