工事現場周辺の車両・歩行者誘導を委託する契約書です。検定資格者の配置義務、作業時間、道路使用許可条件との整合を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
交通誘導警備業務委託契約書
第1部: 書式本文
【工事発注者又は元請商号】(以下「甲」という。)と【警備会社商号】(以下「乙」という。)とは、甲が施工する工事に伴う交通誘導警備業務の委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、甲が施工する【工事名称】(以下「本工事」という。)の施工に伴い必要となる車両及び歩行者の誘導業務(以下「本業務」という。)を乙に委託することについて、甲乙間の権利義務を定めることを目的とする。
第2条(工事概要及び施工箇所) 本工事の名称、施工場所、工期は別紙工事概要のとおりとし、甲は工程に変更が生じた場合、遅滞なく乙に通知する。
第3条(道路使用許可との整合) 1. 甲は、本工事の実施にあたり道路交通法第77条に基づく道路使用許可を所轄警察署から取得し、許可条件(作業時間帯、誘導員の配置箇所及び人数、規制方法等)の写しを乙に交付する。 2. 乙は、前項の許可条件に従って本業務を実施するものとし、許可条件と甲の指示内容が矛盾する場合は、乙は許可条件を優先して業務を行い、その旨を甲に報告する。
第4条(検定資格者の配置) 1. 乙は、道路使用許可の条件又は所轄警察署の指導により交通誘導警備業務検定合格者(警備業法第22条)の配置が必要とされる箇所については、有資格者を配置する。 2. 乙は、配置予定の警備員の資格状況を事前に甲に報告し、甲の求めがあるときは検定合格証の写しを提示する。
第5条(作業時間及び配置計画) 1. 本業務の実施時間帯は【〇〇時から〇〇時】とし、夜間・休日の作業を行う場合は別途甲乙協議の上定める。 2. 乙は、施工箇所ごとの誘導員配置人数、規制範囲及び保安施設(バリケード、標識、回転灯等)の設置計画を記載した配置図を作成し、甲の確認を得る。
第6条(指揮命令系統) 1. 乙は、本業務を統括する現場責任者を選任し、甲の現場代理人に通知する。 2. 甲の現場代理人は、施工状況の変化に応じた誘導方法の調整を現場責任者を通じて乙に伝達するものとし、個々の誘導員に直接指示を行わない。
第7条(施工状況の変化への対応) 1. 甲は、施工内容、規制範囲又は作業時間帯に変更が生じるときは、原則として前日までに乙に通知する。 2. 緊急の施工変更等やむを得ない事情により当日通知となる場合、甲は速やかに乙に連絡し、乙は対応可能な範囲で誘導員の追加配置又は配置変更を行う。当日追加費用が生じる場合は甲乙協議の上定める。
第8条(交通事故発生時の対応及び責任分担) 1. 誘導員の誘導に起因して交通事故が発生した場合、乙は直ちに負傷者の救護及び警察への通報を行うとともに、甲に速やかに報告する。 2. 前項の事故が、甲の作成した規制計画又は甲の現場代理人の指示に誘導員が従ったことに起因する場合は甲が、誘導員が規制計画又は許可条件に反する誘導を行ったことに起因する場合は乙が、それぞれ第一次的な責任を負う。いずれの事由にも起因しない場合は、甲乙協議の上、負担割合を定める。
第9条(悪天候時の対応) 乙は、豪雨、強風、積雪等により誘導員の安全確保が困難と現場責任者が判断したときは、甲に速やかに報告の上、誘導員の一時退避又は作業中断を求めることができる。甲は、これにより生じた工程遅延について乙に責任を追及しない。
第10条(保険) 乙は、本業務の実施に伴う第三者への損害賠償に備え、対人・対物賠償責任保険に加入し、保険証券の写しを甲に提示する。
第11条(委託料) 1. 本業務の委託料は【日額・月額】【〇〇】円(消費税別途)とし、支払方法は別紙のとおりとする。 2. 追加誘導員の配置その他計画外の対応が生じた場合の追加費用の算定方法は別紙単価表による。
第12条(教育及び安全衛生) 乙は、警備業法第21条に基づく教育に加え、道路上での作業に伴う労働安全衛生上の注意事項について誘導員に周知し、実施記録を保管する。
第13条(契約期間) 本契約の有効期間は【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】から本工事完了日までとする。工期が延長された場合、甲乙協議の上、本契約の期間も延長する。
第14条(秘密保持及び反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、本業務に関して知り得た相手方の非公開情報を第三者に開示してはならず、自己が反社会的勢力に該当しないことを表明保証する。
第15条(協議及び管轄) 本契約に定めのない事項は甲乙協議の上定めるものとし、本契約に関する紛争は【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲)住所:【 】商号:【 】代表者:【 】印 (乙)住所:【 】商号:【 】代表者:【 】印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 工事発注者・元請向け書き換え
A-1. 複数の下請業者が同時施工する現場の場合
第6条2項修正例:「甲の現場代理人は、複数の下請業者の作業間調整を行う立場から、誘導員の配置変更が必要と判断したときは、現場責任者と協議の上、統一した誘導計画に基づき業務内容を調整する。」 解説: 複数業者が同時に作業する現場では誘導員への指示が輻輳しやすく、調整窓口を明確にしておくことで混乱を防止できる。
A-2. 深夜・早朝の道路規制工事を行う場合
第5条1項修正例:「夜間作業を実施する場合、乙は誘導員に反射材付き服装及び照明器具を携行させ、視認性確保のための措置を講じるものとし、その費用は委託料に含むものとする。」 解説: 夜間工事は視認性低下による事故リスクが高いため、必要な安全対策と費用負担の帰属を明確にしておくことが望ましい。
B. 警備会社向け書き換え
B-1. 道路使用許可条件と甲の指示が異なる場合の対応を明確にしたい場合
第3条2項追加例:「乙は、許可条件と異なる誘導方法を甲から指示された場合、当該指示に従わないことができ、これにより生じた工程遅延について責任を負わない。」 解説: 許可条件を逸脱した誘導は警備業法及び道路交通法上のリスクを伴うため、乙が指示を拒否できる根拠を契約上明記しておくことが重要である。
B-2. 急な工程変更による当日追加要請が多い現場の場合
第7条2項修正例:「当日の急な追加配置要請については、乙の人員確保状況により対応できない場合があることをあらかじめ甲は了承するものとし、対応不可の場合の代替措置(作業時間の調整等)は甲乙協議の上定める。」 解説: 当日要請に無制限に応じる前提の条項は乙の人員繰りを圧迫するため、対応できない場合があることを明記しておくとよい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、道路上又はその周辺での工事に伴い、車両及び歩行者の誘導を警備会社に委託する場合に用いる。イベント会場内の来場者整理が中心となる雑踏警備には適さず、その場合は雑踏警備業務委託契約書を用いるべきである。また、道路使用許可を要しない私有地内のみでの誘導業務については、本書式のうち道路交通法関連条項を適宜削除して使用する必要がある。
根拠法令及び留意点 道路上での工事に伴う誘導は、道路交通法第77条に基づく道路使用許可の対象となることが多く、許可条件(誘導員の配置人数、作業時間帯等)は誘導業務の内容を直接拘束するため、第3条のように契約上その優先関係を明記することが実務上重要である。警備業法第22条は交通誘導警備業務検定の制度を定めており、道路使用許可の条件として検定合格者の配置が求められる現場も多いため、第4条で資格者配置を確認する。同法第21条の教育義務は誘導員にも適用され、第12条はこれを労働安全衛生上の留意事項とあわせて規定したものである。交通事故が発生した場合、規制計画の不備に起因する事故は発注者側の責任、誘導方法の誤りに起因する事故は警備会社側の責任となりうるため、第8条2項のように事故原因ごとの責任分担を整理しておくことが紛争予防に資する。
実務でよくある失敗と対策 第一に、道路使用許可条件を警備会社と共有せず、許可内容と異なる誘導が行われ是正指導を受ける失敗がある。第3条のように許可条件の写しを交付する義務を明記することで対策となる。第二に、当日の急な工程変更に伴う追加費用の算定基準がなく、事後に精算をめぐり紛争となる失敗がある。第7条2項及び別紙単価表により追加費用の算定方法を明確にする。第三に、悪天候時の作業中断の判断権限が誘導員個人に委ねられ、現場責任者との連携が取れないまま無理な誘導が継続される失敗がある。第9条のように中断判断の権限と甲への報告義務を明記する。これらは一般的な留意点であり、現場の道路状況や許可条件によって適切な条項設計は異なるため、専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 道路使用許可の取得責任及び許可条件写しの交付義務を明記したか
- [ ] 検定資格者(警備業法第22条)の配置が必要な箇所を確認したか
- [ ] 誘導員配置図及び保安施設設置計画を作成・確認するプロセスを定めたか
- [ ] 施工状況変化時の通知期限と当日変更時の対応方法を定めたか
- [ ] 交通事故発生時の原因別責任分担を明記したか
- [ ] 悪天候時の作業中断判断権限を現場責任者に付与したか
- [ ] 対人・対物賠償責任保険への加入を確認したか
- [ ] 追加配置・当日要請時の追加費用算定方法(別紙単価表)を整備したか
- [ ] 教育実施記録の保管義務を定めたか
- [ ] 工期延長時の契約期間の取扱いを定めたか