有期契約を更新する際に更新回数の上限や通算期間の取扱いを確認する場面の書式。労働契約法第19条の雇止め法理を踏まえて更新の判断基準を明確に合意する。

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有期雇用契約の更新に関する合意書

第1部: 書式本文

有期雇用契約の更新に関する合意書

【会社名】(以下「甲」という)と【従業員氏名】(以下「乙」という)は、甲乙間の有期雇用契約の更新に関し、次のとおり合意する。

第1条(従前の契約) 甲乙間の雇用契約は、【当初契約締結日】を始期とし、これまで【更新回数】回にわたり更新され、現契約期間は【現契約期間の始期・終期】である。

第2条(更新の合意) 甲及び乙は、上記契約を次のとおり更新することに合意する。 新契約期間: 【 年 月 日】から【 年 月 日】まで 業務内容: 【従事する業務】 就業場所: 【就業場所及び変更の範囲】 賃金その他の労働条件: 【賃金額、賞与、手当等】

第3条(通算契約期間) 本契約を含む甲乙間の有期労働契約の通算契約期間は、【 年 月 日】を起算日として【 】年【 】か月となる。労働契約法第18条に基づく無期転換申込権は、通算契約期間が5年を超える契約期間の初日から発生し、乙は当該権利発生後、次回以降の契約期間中いつでも無期転換の申込みをすることができる。

第4条(更新上限の有無) 【選択A: 本契約について、通算契約期間が【 】年に達する契約期間の満了をもって、それ以降の契約の更新は行わない。】 【選択B: 本契約の更新回数又は通算契約期間について特段の上限は設けない。ただし、次条の更新判断基準に基づき、更新の都度その可否を判断する。】

第5条(更新の判断基準) 次回以降の契約更新の要否は、次の各号を総合的に考慮して判断する。 一 契約期間満了時における業務量 二 乙の勤務成績及び態度 三 乙の業務遂行能力 四 甲の経営状況 五 従事している業務の進捗状況

第6条(雇止めに関する説明) 甲は、本契約を更新しないこととする場合には、労働基準法第22条に基づき、乙から請求があったときは遅滞なく雇止めの理由を記載した証明書を交付する。

第7条(更新上限を新設する場合の経過措置) 本契約において更新上限を新設する場合、甲は乙に対し、当該上限の内容及びその理由について、更新上限を設ける最初の契約締結時までに書面で説明したことを確認する。

第8条(合意の効力) 本合意書は、甲乙間の従前の雇用契約書の内容を更新する部分について優先して適用され、本合意書に定めのない事項は従前の雇用契約書及び甲の就業規則の定めるところによる。

【署名欄】 年 月 日 甲: 会社名 代表者印 乙: 従業員氏名 印

以上

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A: 更新上限を新設する場合

第4条は選択Aを用い、上限とする通算契約期間又は更新回数を具体的に明記する。既に反復更新が繰り返され、乙において雇用継続への合理的期待(労働契約法第19条第2号)が生じていると評価され得る状況で新たに上限を設ける場合は、第7条の説明義務を厳格に履行し、上限設定の理由(組織再編、業務の終期が明確になったこと等)を書面に残す。上限設定が乙にとって不利益変更に当たると評価されるリスクがあるため、上限到達までに一定の移行期間を設ける、正社員登用試験の受験機会を提供するなど、緩和措置を第7条に追記することも検討する。

B: 従前どおり更新する場合

第4条は選択Bを用い、第5条の更新判断基準を可能な限り具体的に記載する。「業務量」「勤務成績」といった抽象的な基準のみでは、雇止めの際にその該当性をめぐって争いになりやすいため、可能であれば人事評価制度上の具体的な評価区分や、業務量を示す客観的指標(受注件数、稼働率等)と紐付けて記載する。過去の更新において「よほどのことがない限り更新する」といった説明を口頭で行っていた事実がある場合、それが乙の更新への合理的期待の根拠となり得ることを踏まえ、本合意書の記載と実際の運用・過去の説明内容との整合性を確認する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、有期労働契約を更新する場面において、更新後の労働条件に加え、更新回数の上限の有無、通算契約期間の取扱い、更新判断基準を書面で確認するために使用する。初めて有期契約を締結する場面(新規採用)や、無期転換申込権が行使され無期労働契約へ転換する場面では、それぞれ別の書式(新規雇用契約書、無期転換後労働条件通知書等)を用いるべきであり、本書式は更新の場面に限定して使用する。

根拠法令として、労働契約法第19条は、有期労働契約が過去に反復更新され雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められる場合(同条第1号)、又は労働者において契約が更新されるものと期待することに合理的な理由があると認められる場合(同条第2号)には、使用者が当該申込みを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときは、使用者は従前の労働条件と同一の条件で申込みを承諾したものとみなす旨を定める(雇止め法理)。また労働契約法第18条は、同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込みにより無期労働契約に転換する権利(無期転換申込権)を定めており、第3条の通算契約期間の記載はこの無期転換ルールとの関係を明確にするために重要である。

実務でよくある失敗として、第一に、通算契約期間の起算日や算定方法があいまいなまま契約を重ね、無期転換申込権が発生しているにもかかわらずその事実に気付かず雇止めをしてしまう失敗がある。第3条で通算契約期間を都度明記する運用により防止する。第二に、これまで実質的に自動更新に近い運用をしてきたにもかかわらず、ある回から突然更新上限を設定し、その理由を説明しないまま契約を締結してしまう失敗があり、雇止め法理における合理的期待の否定要素として不利に働き得るため、第7条の説明義務を徹底することが対策となる。第三に、第5条の更新判断基準が漠然としているため、雇止めの際に判断基準への該当性を客観的に説明できず、雇止めの合理性が争われる失敗があり、判断基準をできる限り具体的・客観的な指標で記載しておくことが望ましい。第四に、無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングで、意図的に通算契約期間が5年を超えないよう契約更新を停止する、いわゆる「雇止めによる無期転換回避」を行う事例があるが、これも労働契約法第19条の雇止め法理による規制の対象となり得るため、無期転換回避のみを目的とした更新拒絶は慎重に検討する必要がある。個別の事案における雇止めの適法性については、専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 従前の契約締結日・更新回数・現契約期間を正確に記載したか
  • [ ] 更新後の契約期間・業務内容・就業場所・賃金を具体的に記載したか
  • [ ] 通算契約期間の起算日と現時点の通算期間を正確に算定したか
  • [ ] 無期転換申込権発生の有無・時期を確認したか
  • [ ] 更新上限を新設する場合、その理由を説明する記録を残したか
  • [ ] 更新判断基準をできる限り具体的な指標で記載したか
  • [ ] 過去の更新時の説明内容と本合意書の記載に矛盾がないか確認したか
  • [ ] 雇止めの理由証明書交付義務(労働基準法第22条)への対応を確認したか
  • [ ] 就業規則の更新条項との整合性を確認したか
  • [ ] 署名・押印を甲乙双方から取得する運用になっているか