中古マンション等の区分所有建物を売買する場面で用いる契約書。建物の区分所有等に関する法律に基づく管理規約・修繕積立金の承継と、宅地建物取引業法の重要事項説明に対応。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
区分所有建物(マンション)売買契約書
第1部: 書式本文
第1条(売買の合意) 売主は、別紙物件目録記載の区分所有建物(以下「本物件」という。)を買主に売り渡し、買主はこれを買い受ける。
第2条(売買代金) 売買代金は金〇〇円とし、専有部分及び敷地権を含む一体の価格とする。
第3条(手付金) 買主は、本契約締結と同時に、売主に対し手付金として金〇〇円を支払う。手付金は残代金支払時に代金の一部に充当する。
第4条(管理規約等の承継) 買主は、本物件の管理組合が定める管理規約、使用細則及び長期修繕計画を承継し、これを遵守する。売主は、本契約締結前に管理規約及び使用細則の写しを買主に交付する。
第5条(修繕積立金の承継) 買主は、引渡し以降の修繕積立金の負担義務を承継する。ただし、既に発生している滞納がある場合、その清算方法は別紙精算書のとおりとする。
第6条(管理費等の日割精算) 管理費及び修繕積立金は、引渡日を基準として日割りで精算し、引渡日以降の分を買主が負担する。
第7条(重要事項説明) 売主(宅地建物取引業者である場合)又は仲介業者は、宅地建物取引業法第35条に基づき、管理規約の内容、修繕積立金の積立状況、大規模修繕工事の実施状況及び計画等について買主に説明する。
第8条(区分所有者の議決権及び共用部分の持分) 本物件に係る議決権割合及び共用部分の共有持分は、管理規約に定める割合のとおりとし、買主はこれを承継する。
第9条(引渡し及び所有権移転登記) 売主は、残代金の支払と引換えに本物件を引き渡し、所有権移転登記手続に必要な書類を買主に交付する。
第10条(契約不適合責任) 引き渡された本物件が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は売主に対し、民法の定めるところにより履行の追完、代金減額、損害賠償又は契約解除を請求することができる。
第11条(危険負担) 引渡し前に本物件が滅失又は毀損した場合の危険負担は売主が負い、引渡し後は買主が負う。
第12条(解除) 当事者の一方に本契約上の債務不履行があり、相当期間を定めた催告後も是正されないときは、相手方は本契約を解除することができる。
第13条(合意管轄) 本契約に関する紛争は、本物件所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第14条(専用使用権の承継) 本物件に付随する専用使用権(駐車場、専用庭、トランクルーム等)がある場合、買主は引渡し後速やかに管理組合に対し専用使用権者変更の届出を行う。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 売主向けの修正
A-1. 修繕積立金滞納の免責明確化
修正後:「売主は、引渡日の前日までに発生した管理費及び修繕積立金の滞納がある場合、当該滞納分を自己の負担で清算するものとし、引渡日以降に生じた滞納については一切の責任を負わない。」 一言解説: 引渡し前後の滞納の責任分界点を明確にし、後日の管理組合からの請求に備える修正。
B. 買主向けの修正
B-1. 大規模修繕計画・積立金不足の開示請求権の追加
追加条文例:「売主は、本物件の属するマンションの直近の大規模修繕工事の実施状況、次回修繕計画及び修繕積立金会計の借入金の有無を記載した書面を、本契約締結前に買主に交付しなければならない。」 一言解説: 修繕積立金が計画に対し不足しているマンションでは将来の一時金徴収リスクがあるため、買主が事前に情報を得られるようにする修正。
C. 宅建業者(仲介業者)向けの修正
C-1. 重要事項説明義務の履行確認条項の追加
追加条文例:「仲介業者は、宅地建物取引業法第35条第1項第6号に定める区分所有建物特有の説明事項(規約の定め、専用使用権、修繕積立金、管理の委託先等)について、宅地建物取引士をして説明させたことを確認する。」 一言解説: マンション特有の説明事項の説明漏れは仲介業者の説明義務違反として問題となりやすいため、契約書上に履行の確認を残す趣旨である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、中古マンション等の区分所有建物を売買する場面で用いる。専有部分と敷地権が一体として取引される前提の書式であり、敷地権のない古い分譲マンション(いわゆる敷地利用権が別個の賃借権であるケース)や、一棟リノベーション目的で建物全体を買収する場面には適さない。
根拠法令 建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第2条以下は区分所有権、共用部分、敷地利用権の定義を定め、同法第30条は管理規約の設定を、同法第19条は管理費等の負担割合を規約で定められる旨を定める。宅地建物取引業法第35条第1項第6号は、区分所有建物の売買における重要事項説明として、規約の定め、計画修繕積立金、通常の管理費用等の説明を義務付ける。民法第562条以下の契約不適合責任は、区分所有建物の専有部分の瑕疵(雨漏り、給排水管の不具合等)についても適用される。
実務でよくある失敗と対策 第一に、修繕積立金の滞納の有無や金額を確認しないまま契約し、引渡し後に買主が滞納分の請求を受ける失敗がある。第5条・A-1のように精算方法と負担の分界点を明記することで防止する。第二に、大規模修繕工事の実施予定を告げずに契約し、引渡し直後に多額の一時金徴収が決議される失敗がある。B-1のように事前開示を義務付ける条項が有効である。第三に、専有部分に増改築(リフォーム)が行われている場合、管理規約上の制限(フローリング工事の遮音等級規制等)に違反していないかを確認せずに契約し、買主が引渡し後に是正を求められる失敗がある。
第四に、専用使用権(駐車場・専用庭・トランクルーム等)の承継関係を明確にしないまま契約し、引渡し後に管理組合から専用使用権者の変更手続を求められて買主が戸惑う失敗もある。専用使用権の対象及び承継手続を第4条の管理規約承継条項の中で明示しておくことが望ましい。
管理規約の内容や修繕積立金の状況は物件ごとに大きく異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。管理組合への確認もあわせて行うことが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 管理規約及び使用細則の写しを取得し、買主に交付したか
- [ ] 修繕積立金の残高及び滞納の有無を確認したか
- [ ] 直近の大規模修繕工事の実施状況及び次回計画を確認したか
- [ ] 管理費等の滞納がある場合の精算方法を明記したか
- [ ] 議決権割合及び共用部分の共有持分の記載に誤りがないか確認したか
- [ ] 専有部分の増改築の有無及び管理規約上の制限との整合を確認したか
- [ ] 重要事項説明書の内容と契約書の記載が整合しているか確認したか
- [ ] 敷地権の種類(所有権・借地権等)を確認したか
- [ ] ペット飼育制限・専用使用権(駐車場・トランクルーム等)の承継関係を確認したか
- [ ] 管理組合に対する専用使用権者変更届出の要否と提出先を確認したか
- [ ] 管理の委託先(管理会社名)及び管理形態(全部委託・一部委託)を確認したか
- [ ] 耐震診断の実施状況及び診断結果の開示資料の有無を確認したか