事実に反するレビューで営業を妨害された事業者が、名誉権や信用毀損を理由に投稿サイトへ該当口コミの削除を求める請求書です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
口コミ削除請求書
第1部: 書式本文
口コミ削除請求書は、飲食店・美容室・クリニック等の事業者が、事実に反する内容や誹謗中傷を含むレビュー投稿によって営業上の信用を毀損されたと判断した場合に、口コミサイト運営者に対して当該口コミの削除を請求する書面である。個人の名誉権侵害を主たる争点とする一般的な削除依頼と異なり、事業者の社会的信用・営業上の利益(いわば法人の名誉・信用)が問題となる点、また業務妨害・信用毀損という競争関係を背景とした側面が絡みやすい点に特徴がある。
- 宛先: 【口コミサイト運営会社名】カスタマーサポート/法務窓口 御中
- 差出人: 事業者の商号、所在地、代表者名、担当者連絡先
- 請求日: 【請求書作成年月日】
- 対象店舗ページ・口コミの特定: 店舗ページURL、口コミ投稿者のハンドルネーム、投稿日時、口コミ本文の引用
- 口コミが事実に反することの説明: 来店記録の不存在、サービス内容の食い違い等、具体的な反証事実
- 法的性質の整理: 当該口コミが事実摘示型か意見・論評型かの区別、事実摘示型であれば真実性・相当性の欠如を主張
- 法的根拠: 民法第709条(不法行為)、第710条(名誉又は信用の毀損に対する財産以外の損害の賠償)
- 信用毀損・業務妨害としての側面: 虚偽の風説の流布や偽計により営業上の信用が毀損された旨(刑法上の信用毀損罪との関係にも触れつつ民事上の請求として構成)
- 削除を求める理由: 当該口コミの閲覧により新規顧客の来店機会が減少している等、営業への具体的影響
- 請求事項: 当該口コミの削除、及び同一投稿者による再投稿の監視強化
- 回答期限: 到達後【10】営業日以内
- 添付資料: 口コミページのスクリーンショット、反証となる資料(予約台帳の写し等)
- 末尾文言: 期限内に削除されない場合、貴社の削除ガイドライン及び利用規約に基づく異議申立て又は法的措置を検討する旨
- 連絡先: 郵送先、メールアドレス、電話番号
- 同種投稿の再発防止に関する要望: 同一投稿者又は関連アカウントによる継続的な投稿への監視強化の要望
- 競合他社関与が疑われる場合の付言: 投稿頻度や文体の類似性等、組織的投稿を疑わせる事情があれば付記
口コミサイトの多くは専用の削除申請フォームを設けているため、書面での送付と並行してフォームからの申請も行うと処理が早まる場合がある。両方を利用する際は、記載内容に齟齬が生じないよう注意する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 事業者側の書き換え
「本件口コミは『スタッフの対応が悪く、料理に異物が混入していた』との具体的事実を摘示するものですが、当該日時に該当する来店記録及び苦情記録は一切存在せず、内容は虚偽です。」
一言解説: 事実摘示型であることを明示し、真実性の欠如を具体的な反証(来店記録の不存在)で裏付ける書き方にする。単なる「不快」という評価では削除審査を通過しにくい。
「本件口コミの公表は公共の利害に関する事実に係るものではなく、専ら貴サイトのランキング操作又は競合による誹謗を目的としたものと考えられます。」
一言解説: 公共性・公益目的の要件が欠けることを主張し、違法性阻却事由が成立しないことを補強する。
B. 口コミサイト運営者側の書き換え
「ご請求内容を精査した結果、本件口コミは投稿者の主観的評価(意見・論評)にとどまり、具体的事実の摘示とは認められないため、削除には応じかねます。」
一言解説: 意見・論評型と判断した場合の回答文例。最高裁平成9年9月9日判決の枠組みに沿い、事実摘示との区別を理由として明示する。
「本件口コミについては、貴社提出の反証資料等を踏まえ、利用規約第【 】条に基づき削除措置を実施いたします。今後同様の投稿がなされないよう監視体制を強化いたします。」
一言解説: 削除に応じる場合も、契約上の根拠(利用規約)を明示し、表現の自由への配慮と手続の透明性を確保する。
「本件口コミについては投稿者への意見照会を行った上で判断いたします。照会の結果、投稿者から反論が寄せられた場合は改めてご連絡いたします。」
一言解説: サイト運営者が投稿者にも意見を求める運用を採る場合の中間報告文例。事業者側に手続の見通しを示し、拙速な削除拒否との誤解を避ける。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、来店実績のない虚偽の口コミや、事実と異なる具体的な非難を含むレビューにより営業上の信用が損なわれている場面で使用する。他方、単に星評価が低い、味の好みに関する主観的な感想にとどまる場合には、意見・論評として削除が認められにくく、本書式の多用は評判管理上かえって逆効果となりうる点に留意する。
根拠法令は、民法第709条(不法行為による損害賠償)及び第710条(名誉又は信用毀損による財産以外の損害の賠償)である。名誉毀損の違法性阻却事由については、事実の公共性・目的の公益性・内容の真実性又は真実と信じるにつき相当な理由があること、という最高裁昭和41年6月23日判決が示した枠組みが基本となる。また、口コミが事実を摘示するものか、単なる意見・論評であるかの区別については最高裁平成9年9月9日判決の判断枠組みが実務上の分岐点となり、意見・論評型は原則として削除請求が認められにくい。
実務でよくある失敗として、第一に、口コミの内容を精査せず「誹謗中傷だから削除してほしい」とのみ記載し、事実摘示か意見論評かの区別を示さないまま送付する例がある。対策として第1部6項の法的性質の整理を必ず行う。第二に、反証資料を添付せず「事実と異なる」とだけ主張し、サイト側で真偽の判定ができず削除が見送られる例がある。対策として来店記録や苦情対応記録など客観的資料を添付する。第三に、低評価そのものを理由に削除を求め、意見・論評として扱われて請求が却下される例がある。この場合はサイトへの反論投稿や、事業者側からの説明投稿等、削除以外の手段も検討する必要がある。第四に、業務妨害・信用毀損の側面を強調するあまり、投稿者を過度に威圧するような表現(刑事告訴を示唆する記載等)を用い、かえって投稿者側からの反発や別紛争を招く例がある。請求書はあくまで民事上の削除請求として、冷静かつ客観的な事実整理にとどめることが望ましい。口コミの法的性質の評価は事案ごとに分かれるため、個別事案については弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 口コミが事実摘示型か意見・論評型かを整理したか
- [ ] 摘示された事実が虚偽であることを裏付ける客観的資料(来店記録等)を準備したか
- [ ] 公共性・公益目的の欠如を主張できるか検討したか
- [ ] 対象口コミのURL、投稿者名、投稿日時を正確に特定したか
- [ ] 口コミページのスクリーンショットを取得したか
- [ ] サイト運営者の削除ガイドライン・利用規約上の削除申請窓口を確認したか
- [ ] 業務妨害・信用毀損としての営業上の具体的損害を説明できるか
- [ ] 回答期限を明記したか
- [ ] 単なる低評価や味の好みへの言及を削除対象に含めていないか
- [ ] 記載内容が誇張や断定的な違法性判断を含んでいないか