空調設備の定期点検と修繕を委託する契約書です。点検項目、フロン排出抑制法に基づく簡易点検の記録、部品交換の費用区分を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
空調設備保守点検契約書
第1部: 書式本文
【建物所有者・管理者商号】(以下「甲」という。)と【保守業者商号】(以下「乙」という。)とは、甲が管理する建物の空調設備の保守点検業務の委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、甲が乙に対し、後記対象設備の定期点検、簡易点検及び修繕業務(以下「本業務」という。)を委託し、乙がこれを受託することについて定めることを目的とする。
第2条(対象設備) 対象は【建物名称・所在地】に設置された【パッケージエアコン〇台、ビル用マルチエアコン〇系統、冷凍機〇基等の型式・台数】とし、詳細は別紙設備一覧に定める。
第3条(点検頻度及び点検項目) 1. 乙は、定期点検を年【2】回実施し、フィルター清掃、熱交換器の汚れ確認、冷媒配管の状態確認、電気系統の絶縁抵抗測定、制御盤の動作確認を行う。 2. 乙は、フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)第16条に基づく簡易点検を【3】か月に1回実施し、空気漏れ、油にじみ、異音、腐食その他の異常の有無を目視及び聴音により確認する。 3. 乙は、圧縮機の定格出力等に応じて義務付けられる定期点検(有資格者による点検)の要否を確認し、該当する設備については所定の頻度で有資格者による点検を実施する。
第4条(フロン類算定漏えい量報告への協力) 乙は、簡易点検及び定期点検の結果、フロン類の漏えいを確認した場合、直ちに甲に報告する。乙は、甲がフロン排出抑制法に基づく算定漏えい量報告を行うために必要な点検記録及び漏えい量の算定資料を提供する。
第5条(点検記録の作成及び保存) 乙は、点検の都度、点検年月日、点検箇所、点検結果、簡易点検にあっては異常の有無を記載した点検記録を作成し、甲に提出する。甲は、フロン排出抑制法上の判断の基準に従い、当該記録を機器の廃棄まで保存する。
第6条(修繕及び部品交換) 1. 点検の結果、消耗部品(フィルター、ベルト、パッキン等)の交換が必要と認められる場合、乙は甲の承諾を得たうえで交換作業を行う。当該消耗部品の費用は本業務の委託料に含まれるものとし、交換基準は別紙のとおりとする。 2. 前項に定める消耗部品以外の主要部品(圧縮機、基盤、熱交換器等)の交換又は修繕が必要な場合、乙は見積書を提示し、甲の承諾を得たうえで実施する。当該費用は本業務の委託料に含まれない。
第7条(緊急対応) 1. 空調設備の故障により室温管理に支障が生じた場合、甲は乙に緊急対応を依頼することができる。乙は、依頼を受けてから【4】時間以内を目標に現地に到着し、応急措置を行う。 2. 緊急対応に要した部品費及び技術料は、前条2項の取扱いに準じ、甲乙協議のうえ精算する。
第8条(委託料及び支払方法) 1. 本業務の委託料は年額【〇〇】円(消費税別途)とし、甲は乙に対し四半期ごとに【〇〇】円を支払う。 2. 部品交換等の追加費用は、作業完了後に乙が発行する請求書に基づき翌月末日までに支払う。
第9条(契約期間) 本契約の有効期間は【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】から1年間とし、期間満了の【1】か月前までに書面による別段の意思表示がないときは、同一条件で1年間自動更新するものとし、以後も同様とする。
第10条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。
第11条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上の合意を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】印 (乙) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 建物所有者・管理者向け書き換え
A-1. 大規模な第一種特定製品(業務用冷凍空調機器)を多数保有する場合
第4条修正例:「乙は、対象設備の全てについて簡易点検の実施記録を機器台帳形式で整理し、甲がフロン排出抑制法上の算定漏えい量を機器ごとに集計できるよう、四半期ごとに集計表を提出する。」 一言解説: 対象台数が多い建物では機器ごとの記録が散逸しやすいため、集計表形式での提出を義務付けることで報告実務の負担を軽減できる。
A-2. 交換基準を明確にして予算管理をしたい場合
第6条1項修正例:「消耗部品の交換基準は、フィルターにあっては【1年】、ベルトにあっては【2年】を目安とし、乙は交換時期の到来前に甲へ見積り不要の定例交換である旨を通知したうえで実施する。」 一言解説: 消耗品交換のたびに個別承諾を要求すると事務負担が増えるため、あらかじめ交換基準を定めて定例化しておくと予算管理がしやすくなる。
B. 保守業者向け書き換え
B-1. 点検の結果、法定点検の対象規模に該当することが判明した場合
第3条3項追加例:「乙は、点検の過程で対象設備が圧縮機の定格出力等により有資格者による定期点検の対象となることが判明した場合、直ちに甲に報告し、有資格者による点検の実施時期について協議する。」 一言解説: 保守業者が現場で規模要件の該当性に気づいた場合の報告義務を明記することで、法令対応の見落としを防ぐことができる。
B-2. 老朽化した設備で頻繁な故障が予想される場合
第7条1項修正例:「乙は、対象設備の製造年から【15】年を経過した機器について、緊急対応の到着目標時間を別途甲乙協議のうえ定めることができる。老朽部品の入手困難により応急措置に留まる場合、乙はその旨を甲に説明する。」 一言解説: 老朽設備では代替部品の入手が困難な場合があり、到着時間の目標のみを一律に約束すると履行不能のリスクがあるため、例外的な取扱いを設けておくことが実務的である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、業務用の空調設備(パッケージエアコン、ビル用マルチエアコン、冷凍機等)について、定期点検、フロン類の簡易点検及び消耗部品交換を包括的に委託する場合に用いる。家庭用エアコンのみを対象とする小規模な保守や、新設工事そのものを委託する場合には、本書式の点検・部品交換の枠組みは適合しないため、別途の請負契約書を検討する必要がある。
根拠法令及び留意点 第一種特定製品(業務用のエアコンディショナー及び冷凍冷蔵機器)の管理者は、フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)第16条に基づき、3か月に1回程度の簡易点検を行う義務を負い、一定規模以上の機器については有資格者による定期点検も義務付けられている。簡易点検で漏えいを確認した場合は、同法上の算定漏えい量報告に関わる資料が必要となるため、点検記録の作成・保存体制を契約に組み込むことが重要である。対象設備の出力や種類によって点検頻度や有資格者要件が異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
実務でよくある失敗と対策 第一に、簡易点検の実施主体が誰であるか(建物管理者自ら行うか保守業者に委託するか)が曖昧になり、法定の点検頻度を満たせていないことが後日判明する例がある。対策として、本契約において簡易点検の実施を乙の業務として明記し、実施頻度を具体的に定める。第二に、消耗部品交換の都度、費用負担をめぐって協議が必要となり事務負担が増大する例がある。対策として、消耗部品の範囲と交換基準をあらかじめ定め、定例交換として扱う。第三に、緊急対応の到着目標時間を約束しながら実際には長時間対応できないケースがあり、老朽設備や部品調達の事情を踏まえた例外規定を設けていないと債務不履行の主張を招きかねないため、到着目標時間はあくまで努力目標である旨や例外事由を明記しておくことが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象設備の型式・台数・設置場所を別紙で特定したか
- [ ] 定期点検の頻度と点検項目を定めたか
- [ ] フロン排出抑制法上の簡易点検の実施頻度(3か月に1回程度)を組み込んだか
- [ ] 有資格者による定期点検が必要な設備の有無を確認したか
- [ ] 漏えい発見時の報告及び算定漏えい量報告への協力方法を定めたか
- [ ] 点検記録の記載項目と保存期間(廃棄まで)を定めたか
- [ ] 消耗部品交換の範囲と交換基準を定めたか
- [ ] 主要部品交換時の見積り・承諾プロセスを定めたか
- [ ] 緊急対応の到着目標時間と例外事由を定めたか
- [ ] 委託料の対象範囲(点検料と部品交換費の区分)を明確にしたか