脚本の執筆を依頼する契約書です。納品スケジュール、改稿の回数、著作権と利用許諾の範囲、クレジットと二次利用料を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
脚本執筆契約書
第1部: 書式本文
甲(【製作会社名称】。以下「甲」という。)と乙(脚本家【氏名】。以下「乙」という。)は、【対象作品名】(以下「本作品」という。)の脚本執筆に関し、次のとおり脚本執筆契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(業務内容) 乙は甲に対し、本作品(【媒体:映画・連続ドラマ・配信作品等】、全【話数】話)の脚本(以下「本脚本」という。)の執筆業務を行う。
第2条(納品スケジュール) 1 乙は、プロット【納期】、香盤構成案【納期】、決定稿【納期】をそれぞれ甲に納品する。 2 乙の責によらない事由により納期の変更が必要となる場合、甲乙協議のうえ納期を変更することができる。
第3条(改稿) 1 甲は乙に対し、各稿につき【3回】を上限として改稿を依頼することができる。 2 前項の上限を超える改稿を依頼する場合、甲は乙に対し別途協議のうえ追加報酬を支払う。
第4条(検収) 甲は、乙から脚本の納品を受けた日から【10営業日】以内に内容を確認し、修正依頼又は受領の可否を乙に通知する。当該期間内に通知がないときは受領されたものとみなす。
第5条(報酬) 1 本業務の報酬は総額【金額】円(消費税別)とし、甲は乙に対し、【支払スケジュール:着手金・決定稿納品時・オンエア時等】に分割して支払う。 2 甲は、乙の給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払うよう努める。
第6条(著作者人格権の不行使) 乙は、本作品の製作、宣伝及び利用に必要な範囲において、本脚本に係る著作権法第18条、第19条及び第20条に定める著作者人格権を行使しない。ただし、乙の氏名表示及びクレジット表示に関する権利はこの限りでない。
第7条(著作権の帰属) 1 本脚本に関する著作権(著作権法第21条から第28条までに規定する権利を含む。)は、乙から甲に譲渡する。 2 前項の譲渡には、著作権法第27条に定める翻案権等及び同法第28条に定める二次的著作物の利用に関する権利を含むものとし、これらの権利は同法第61条第2項の特掲として本契約により甲に譲渡されたものとする。
第8条(職務著作との関係) 本脚本が乙の雇用契約に基づく職務上の作成物に該当する場合を除き、本契約は業務委託契約として乙を甲の従業員として取り扱うものではない。乙が甲の指揮命令を受けて執筆する常態にある場合、著作権法第15条に定める職務著作の該当性について別途確認するものとする。
第9条(クレジット表示) 甲は、本作品の本編、番組表及び主要な宣伝物において、乙を脚本家として表示する。共同執筆者がいる場合の表示順序は【表示順序】による。
第10条(二次利用料) 1 本作品の再放送、配信、海外展開、書籍化、舞台化等の二次利用が行われる場合、甲は乙に対し、当該二次利用の実施ごとに【金額又は料率】の二次利用料を支払う。 2 二次利用の実施及び対価の算定根拠について、甲は乙からの請求に応じ、利用実績の開示を行う。
第11条(秘密保持) 乙は、本業務を通じて知り得た本作品の企画内容、キャスティング情報その他甲の営業上の秘密を、公表前に第三者に開示又は漏洩してはならない。
第12条(契約解除) 1 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、催告後【14日】以内に是正されないときは、本契約を解除することができる。 2 乙の責によらない事由により本作品の製作が中止された場合、甲は乙に対し、既履行部分に相当する報酬を支払う。
第13条(取引条件の明示) 甲は、乙が特定受託事業者に該当する場合、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)に基づき、業務委託の内容、報酬の額及び支払期日その他の取引条件を書面又は電磁的方法により明示する。
第14条(損害賠償) 甲又は乙が本契約に違反し相手方に損害を与えた場合、違反当事者は相手方に対しその損害を賠償する責任を負う。
第15条(協議・合意管轄) 1 本契約に定めのない事項及び疑義については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。 2 本契約に関する紛争については、【管轄裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
【契約締結日】
甲(製作者) 住所: 名称: 代表者: 印
乙(脚本家) 住所: 氏名: 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節 製作者の立場から有利にする修正
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改稿回数の上限撤廃(第3条の書き換え) 「甲は乙に対し、決定稿に至るまで必要な回数の改稿を依頼することができ、乙はこれに応じるものとする。」 一言解説: 追加報酬の発生を防ぎ、納得のいく脚本になるまで修正を求められるようにする。
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著作権譲渡範囲の明確化と拡大(第7条の書き換え) 「本脚本に関する著作権に加え、乙が本業務に関連して作成した設定資料、没稿及び構想メモに関する権利も甲に譲渡する。」 一言解説: 完成稿以外の派生資料もまとめて権利処理し、後日の権利紛争を防ぐ。
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検収みなし規定の短縮(第4条の書き換え) 「甲は乙から納品を受けた日から【5営業日】以内に通知しないときは受領したものとみなす。」 一言解説: 製作スケジュールを圧迫しないよう検収期間を短縮する。
B節 脚本家の立場から有利にする修正
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改稿回数の上限と追加報酬の明確化(第3条の書き換え) 「甲が第3条第1項の上限を超えて改稿を依頼する場合、乙は1稿あたり【金額】円の追加報酬を請求できるものとし、甲はこれを拒否できない。」 一言解説: 際限のない改稿依頼に歯止めをかけ、労働に見合う対価を確保する。
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著作者人格権不行使特約の限定(第6条の書き換え) 「乙が不行使に同意する範囲は、脚本の題名及び場面順序の変更に限るものとし、脚本の根幹的なテーマ・結末の改変については乙の事前同意を要する。」 一言解説: 人格権不行使の範囲を限定し、作家性の核心部分を保護する。
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クレジット表示の担保強化(第9条の書き換え) 「甲が乙の氏名表示を怠った場合、甲は乙に対し違約金として【金額】円を支払う。」 一言解説: クレジット表示義務の実効性を金銭的に担保する。
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制作中止時の補償拡充(第12条の書き換え) 「乙の責によらない事由により本作品の製作が中止された場合、甲は乙に対し、本契約に定める報酬総額の【50%】に相当する金額を支払う。」 一言解説: 完成前の企画中止リスクを製作者側にも一定程度負担させる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、映画・ドラマ・配信作品の脚本執筆を外部の脚本家に依頼する場面で用いる。社内の従業員に執筆させる場合や、原作者自身が脚本も兼ねる場合には、雇用契約や原作使用許諾契約など別の書式で処理すべきであり、本書式をそのまま流用すると著作権の帰属関係が不明確になるおそれがある。
著作権に関しては、著作権法第18条から第20条までが著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)を定めており、これらは譲渡になじまない一身専属的な権利であるため、契約上は不行使特約という形で処理する。財産権としての著作権を譲渡する場合には、同法第61条第2項により、翻案権等(第27条)及び二次的著作物の利用権(第28条)は契約書上に特掲(明記)しなければ譲渡人に留保されたものと推定される点に注意が必要であり、第7条のように条文を引用して明記することが望ましい。職務著作(同法第15条)については、脚本家が実質的に甲の指揮命令下で作業する常態にあるかどうかにより該当性の判断が分かれ得るため、業務委託の実態が雇用に近い場合は別途確認を要する。さらに、脚本家個人が特定受託事業者に該当する場合、フリーランス新法に基づき、業務委託内容や報酬支払期日の明示義務が甲に課される。
よくある失敗として、第一に、著作権譲渡条項に「著作権を譲渡する」とのみ記載し、翻案権・二次利用権の特掲を欠いた結果、配信化や海外展開の際に別途許諾が必要になる例がある。対策として、第7条のように第27条・第28条を明記し、第61条第2項の特掲要件を満たす条文にする。第二に、改稿回数の上限を定めずに際限なく修正依頼を行い、報酬と労力が見合わなくなる失敗がある。第3条のように上限回数と超過時の追加報酬を明記することで防止できる。第三に、報酬の支払時期を曖昧にし、フリーランス新法上の支払期日ルールに抵触する例もある。第13条のように取引条件明示義務を契約に落とし込み、支払期日を具体的に定めることが望ましい。契約締結にあたっては、脚本家の就業実態や報酬体系によって適用法令の解釈が変わり得るため、専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 脚本執筆の対象作品・話数・媒体を具体的に特定したか
- [ ] プロット・構成案・決定稿など各段階の納期を明記したか
- [ ] 改稿の上限回数と超過時の追加報酬ルールを定めたか
- [ ] 検収期間とみなし受領規定を設けたか
- [ ] 報酬総額・分割支払スケジュール・支払期日を明記したか
- [ ] 著作者人格権の不行使特約の範囲を具体的に限定したか
- [ ] 著作権譲渡条項に翻案権(27条)・二次的著作物の利用権(28条)を特掲したか
- [ ] 職務著作に該当する可能性がある場合、業務実態を確認したか
- [ ] クレジット表示の方法・共同執筆時の表示順序を定めたか
- [ ] 二次利用(再放送・配信・海外展開等)の追加対価ルールを定めたか
- [ ] 脚本家が特定受託事業者に該当する場合の取引条件明示義務を満たしているか
- [ ] 製作中止時の補償・既履行部分の報酬支払について定めたか