複数人で制作した作品の持分と行使方法を確認する書式。著作権法第2条第1項第12号の共同著作物と第65条の共有著作権の規律に対応。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
共同著作物の権利帰属確認書
第1部: 書式本文
共同著作物の権利帰属確認書
【共同制作者1氏名/名称】(以下「甲」という)、【共同制作者2氏名/名称】(以下「乙」という)及び【共同制作者3氏名/名称】(以下「丙」という)(甲、乙及び丙を総称して「共有者」という)は、共同で制作した「【作品名】」(以下「本著作物」という)に関する権利の帰属及び行使方法について、次のとおり確認する。
第1条(本著作物の性質) 共有者は、本著作物が甲、乙及び丙が共同して創作したものであり、各自の寄与を分離して個別に利用することができない著作権法第2条第1項第12号所定の共同著作物に該当することを相互に確認する。
第2条(持分の割合) 本著作物に係る著作権の持分割合は、次のとおりとする。 甲【 】%、乙【 】%、丙【 】% 持分割合は、各共有者の創作への寄与度、費用負担及び協議の結果に基づき定めたものであり、以後の紛争を避けるためここに明記する。
第3条(共有著作権の行使方法) 1. 共有者は、著作権法第65条第2項の定めに従い、本著作物に係る著作権を行使するには共有者全員の合意によらなければならないことを確認する。 2. 前項にかかわらず、次の各号の行為については、共有者の代表者として定める【幹事会社/代表者名】(以下「幹事」という)が、他の共有者から個別の同意を得ることなく単独で行うことができるものとする。 (1) 既存の利用許諾条件の範囲内での通常の頒布・複製業務 (2) 侵害行為に対する警告書の送付(訴訟提起を除く)
第4条(合意形成の手続) 1. 共有者は、著作権法第65条第2項ただし書に基づき、正当な理由がない限り、他の共有者による著作権行使への合意を拒むことができないことを確認する。 2. 新たな第三者への利用許諾、著作権の全部又は一部の譲渡、及び訴訟提起その他の権利行使については、共有者全員の書面(電子メールを含む)による事前の合意を要する。 3. 合意形成にあたり共有者間で意見が分かれた場合、幹事は他の共有者に対し書面で意見照会を行い、【 】日以内に異議がない場合は当該提案に同意したものとみなす。
第5条(著作者人格権の行使) 本著作物に係る著作者人格権は、著作権法第64条第1項に基づき、共有者全員の合意によらなければ行使できないことを確認する。ただし、各共有者は信義に反して合意の成立を妨げてはならない(同条第2項)。
第6条(持分譲渡の制限) 共有者は、著作権法第65条第1項に基づき、自己の持分を他の共有者全員の同意を得なければ第三者に譲渡し又は質権の目的とすることができないことを確認する。
第7条(脱退・持分放棄の場合の帰属) 1. 共有者の一人が本著作物の制作から離脱し、又は自己の持分を放棄する場合、当該共有者は他の共有者に対しその旨を書面で通知する。 2. 持分を放棄した共有者の持分は、著作権法第65条第3項の定めに従い、他の共有者にその持分割合に応じて帰属する。 3. 持分放棄後も、放棄した共有者の氏名を著作者として表示するか否かは、著作者人格権(氏名表示権)の問題として別途協議する。
第8条(利益分配) 本著作物の利用により生じた収益は、第2条に定める持分割合に応じて共有者間で分配する。分配の時期及び方法は別途協議して定める。
第9条(費用負担) 本著作物の維持管理(著作権登録、侵害監視、更新手続等)に要する費用は、持分割合に応じて共有者が負担する。
第10条(存続期間) 本確認書は、本著作物に係る著作権が消滅するまでの間、共有者及びその承継人を拘束する。
第11条(準拠法及び管轄) 本確認書は日本法に準拠し、本確認書に関する紛争は【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 共同制作者間
対等な立場の共同制作者間では、意思決定の停滞(一人でも反対すれば何もできない状態)を避ける工夫が重要である。
書き換え例(第4条第3項の強化): 「共有者のいずれかが正当な理由なく【 】日以内に回答しない場合、当該共有者は当該提案に同意したものとみなす。ただし、著作権の譲渡及び独占的利用許諾については、この限りでなく、明示的な同意を要する。」
一言解説: 著作権法第65条第2項ただし書は「正当な理由」のない合意拒否を禁じているが、何が正当な理由かは解釈の余地があるため、みなし同意のルールを契約上具体化し、重要な処分行為とそれ以外を区別して手続の停滞を防ぐ。
B節: 幹事会社向け
複数の制作会社やクリエイターが関与するプロジェクトで、進行管理を担う幹事会社の立場では、日常的な利用許諾業務を機動的に行える権限の確保が実務上重要となる。
書き換え例(第3条第2項に追加): 「幹事は、単独で行った前項各号の行為について、四半期ごとに他の共有者に実施状況を報告するものとする。」
一言解説: 単独行使権限を幹事に集中させる代わりに、事後報告義務を課すことで、他の共有者の監視権を確保しつつ機動的な運用を両立させる設計とする。
C節: 持分・行使方法明記型
持分割合や行使方法をあらかじめ数値・手続として明記する型では、将来のM&Aや事業承継時の権利移転をスムーズにするための工夫が有効である。
書き換え例(第6条に追加): 「共有者の一人が組織再編(合併、会社分割又は事業譲渡)により地位を承継する場合、当該承継について他の共有者は合理的な理由なく同意を拒まないものとする。」
一言解説: 共有者が法人の場合、組織再編に伴う持分の実質的移転が著作権法第65条第1項の「譲渡」に該当し得るため、平時の事業活動を阻害しないよう組織再編時の同意手続をあらかじめ緩和しておくことが実務上有用である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
この書式を使う場面/使ってはいけない場面
本書式は、複数の個人又は法人が共同で一つの作品(共同で企画・執筆したソフトウェア、楽曲、書籍、映像作品等)を創作し、各自の寄与部分を分離して個別に利用できない場合を想定している。各人の担当箇所が明確に分離可能で個別に利用できる「結合著作物」(例えば共著書籍で各章の執筆者が明確に分かれている場合)については、共同著作物には該当せず、各執筆者が自己の担当部分について単独で著作権を有するため、本書式ではなく執筆者間の役割分担・持分に関する別の合意書式を検討すべきである。
根拠法令の解説
著作権法第2条第1項第12号は、共同著作物を「二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」と定義する。共同著作物に該当すると、著作権は共有となり、著作権法第65条第2項により、共有者全員の合意がなければ著作権を行使できない。この点は単独著作物と大きく異なり、一人の共有者が単独で利用許諾や譲渡を行うことはできない。もっとも同項ただし書は、正当な理由なく合意の成立を妨げることを禁じており、共有者は互いに協力義務を負う。また著作者人格権についても第64条により同様の全員合意原則と信義則上の協力義務が定められている。第65条第1項の持分譲渡制限、第3項の持分放棄時の他の共有者への帰属も、実務上見落とされがちな重要規定である。
実務でよくある失敗と対策
第一に、共同制作段階で持分割合を明確にせず、後日ヒットした際に貢献度をめぐる紛争が生じるケースが多い。対策として第2条のように制作初期段階で持分割合を書面化する。
第二に、共有者の一人が連絡不能・非協力的になった場合に、著作権の行使自体が事実上停止してしまうケースがある。対策として第4条第3項のようにみなし同意ルールを設け、意思決定の停滞を防ぐ。
第三に、共有者の脱退時に持分の帰属先が定められておらず、脱退者の相続人等との間で権利関係が複雑化するケースがある。対策として第7条のように脱退・持分放棄時の帰属ルールをあらかじめ定めておく。
個別事案は専門家に確認してください。特に共同著作物か結合著作物かの区別は作品の性質により判断が分かれるため、制作実態に即した検討が必要である。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本著作物が共同著作物(寄与分離不可能)か結合著作物(寄与分離可能)かを確認したか
- [ ] 各共有者の持分割合を明記したか
- [ ] 著作権行使に共有者全員の合意を要する原則を確認したか
- [ ] 日常的な行為について幹事が単独で行える範囲を定めたか
- [ ] 合意形成の手続(みなし同意ルール等)を定めたか
- [ ] 著作者人格権の行使方法(全員合意・信義則上の協力義務)を確認したか
- [ ] 持分の譲渡・質入れに他の共有者全員の同意を要することを確認したか
- [ ] 共有者の脱退・持分放棄時の帰属ルールを定めたか
- [ ] 収益の分配方法及び費用負担のルールを定めたか
- [ ] 組織再編時の地位承継に関する取扱いを定めたか