複数社が同一顧客層へ共同で商品を売り込む際の協定書。独占禁止法第3条の不当な取引制限に触れない範囲を確認し、費用分担と成果配分を定めます。

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共同販売に関する協定書

第1部: 書式本文

共同販売に関する協定書

【幹事会社商号】(以下「甲」という。)、【参加会社A商号】(以下「乙」という。)及び【参加会社B商号】(以下「丙」という。)(以下、個別に又は総称して「本協定当事者」という。)は、各自の商品又はサービスを共同で顧客に売り込むことに関し、以下のとおり協定(以下「本協定」という。)を締結する。

第1条(目的) 本協定は、本協定当事者が各自の事業の独立性を維持しつつ、別紙記載の対象顧客層(以下「対象顧客」という。)に対し、各自の商品又はサービス(以下「対象商品」という。)を共同で販売促進することにより販売機会の拡大を図ることを目的とする。

第2条(共同販売活動の内容) 本協定に基づく共同販売活動は、次の各号に定めるものに限る。 一 対象顧客に対する合同での商品説明会及び展示会の開催 二 共同での提案資料及びカタログの作成 三 対象顧客からの問い合わせ窓口の一本化 四 その他本協定当事者が別途合意する販売促進活動

第3条(価格決定の独立性) 1. 各本協定当事者は、自己の対象商品の販売価格、値引率その他の取引条件を、他の当事者と協議することなく自己の独立した判断により決定する。 2. 本協定当事者は、対象商品の販売価格、値引率、生産数量、対象顧客の割当てその他の競争上重要な事項について、他の当事者との間で合意し、又は情報交換を行ってはならない。

第4条(幹事会社) 1. 甲を本協定における幹事会社とし、共同販売活動の日程調整、対象顧客との窓口業務その他の事務局機能を担う。 2. 幹事会社の事務局機能は、対象顧客からの問い合わせを各当事者に公平に取り次ぐものとし、特定の当事者を優遇する取扱いをしてはならない。

第5条(費用分担) 1. 共同販売活動に要する費用(会場費、資料作成費、広告費等)は、別紙の分担割合に従い本協定当事者が負担する。 2. 各本協定当事者は、自己の対象商品に固有の費用(自社製品のサンプル製作費等)を各自負担する。 3. 費用の精算は、四半期ごとに幹事会社が精算書を作成し、各当事者に請求する方法で行う。

第6条(成果の配分) 1. 共同販売活動の結果、対象顧客から複数の対象商品を組み合わせた発注を受けた場合、各本協定当事者は、自己が提供する対象商品に係る対価を、対象顧客との間で個別に締結する契約に基づきそれぞれ直接収受する。 2. 幹事会社が窓口業務の対価として手数料を得る場合、その料率及び算定方法は別紙に定める。

第7条(情報共有の範囲及び禁止事項) 1. 本協定当事者は、共同販売活動の実施に真に必要な範囲(対象顧客の希望納期、共同提案の内容等)に限り相互に情報を共有する。 2. 本協定当事者は、自己の原価、仕入先、生産能力その他の競争上機微な情報を、他の当事者に開示してはならない。

第8条(成果物及び知的財産) 1. 共同で作成したカタログ、提案資料等の成果物に係る著作権その他の知的財産権は、別紙に定めがある場合を除き本協定当事者の共有とする。 2. 各本協定当事者は、自己が単独で提供した資料、ロゴ、商標等の知的財産権を保持し、他の当事者による使用は本協定の目的の範囲に限る。

第9条(対象顧客との個別契約) 本協定は、対象顧客との間の個別契約の締結を保証するものではなく、各当事者は自己の対象商品について対象顧客との間で個別に契約を締結する。

第10条(独占禁止法の遵守) 本協定当事者は、共同販売活動が、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第3条の不当な取引制限その他の違反行為に該当することのないよう、価格、数量、顧客割当てその他の重要事項について合意しないものとし、抵触するおそれがあるときは直ちに他の当事者に通知し当該活動を中止する。

第11条(秘密保持) 本協定当事者は、本協定の履行を通じて知り得た他の当事者の営業上・技術上の情報を秘密として保持し、他の当事者の承諾なく第三者に開示してはならない。本義務は本協定終了後も3年間存続する。

第12条(協定期間) 本協定の有効期間は、締結日から【1】年間とする。期間満了の1か月前までにいずれの当事者からも終了の意思表示がないときは、本協定は同一条件でさらに1年間更新される。

第13条(脱退) 本協定当事者は、他の当事者に対する【1】か月前の書面通知により本協定から脱退できる。脱退した当事者は、脱退時点までに発生した費用分担義務を免れない。

第14条(解除) 本協定当事者の一が本協定に違反し催告後相当期間内に是正しない場合、又は第10条に違反するおそれのある行為を行った場合、他の当事者は当該当事者に対する通知により、その当事者との関係でのみ本協定を解除できる。

第15条(準拠法及び管轄) 本協定は日本法に準拠し、本協定に関する紛争は【管轄裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上、本協定締結の証として本書3通を作成し、各当事者記名押印の上各1通を保有する。

【作成日】

甲(幹事会社) 住所: 名称: 代表者: 印 乙(参加会社) 住所: 名称: 代表者: 印 丙(参加会社) 住所: 名称: 代表者: 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節 主導する事業者(幹事会社)向け

幹事会社としては、事務局機能を担う対価を確保しつつ、対象顧客との関係構築における主導権を維持したい。

before:「幹事会社の事務局機能は、対象顧客からの問い合わせを各本協定当事者に公平に取り次ぐものとし、特定の当事者を優遇する取扱いをしてはならない。」 after:「幹事会社は、自ら対象商品を提供する場合、参加会社の事前同意を条件に自社の対象商品について優先的に提案を行うことができる。」 解説: 完全な中立性を条項化すると幹事会社が事務局機能を引き受ける動機が薄れるため、事前同意を条件に自社優先提案の余地を残す。

B節 参加する事業者向け

参加会社としては、幹事会社に情報や顧客接点が偏在することによる競争上の不利益を避けたい。

before:「各本協定当事者は、自己が提供する対象商品に係る対価を、対象顧客との間で個別に締結する売買契約又は業務委託契約に基づき、それぞれ直接収受する。」 after:「各本協定当事者は対象顧客と直接の契約関係に立ち、いずれの当事者も他の当事者の商品の対価を代理受領しない。」 解説: 対価の受領を幹事会社に一本化すると参加会社が幹事会社の信用リスクを負担することになるため、直接契約・直接収受を明記し債権保全を図る。

C節 中立・折衷案

事務局手数料について、幹事会社と参加会社の利害を調整する折衷案を示す。 before:「幹事会社が対象顧客との窓口業務の対価として手数料を得る場合、その料率及び算定方法は別紙に定める。」 after:「手数料率は各対象商品の売上額の【3】パーセントを上限とし、算定根拠を四半期ごとに参加会社へ開示する。参加会社は、料率が見合わないと考えるときは見直しを申し入れることができる。」 解説: 料率を別紙に委ねるだけでは適正性の検証機会がない。上限設定と開示・見直しの仕組みで双方の負担感を調整する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、競合関係にない、又は補完関係にある複数の事業者が、同一顧客層に商品・サービスを共同で提案・販売促進する場面(合同商談会、共同カタログ作成等)で使用する。参加事業者が相互に競合関係にあり、価格、生産数量又は取引先の割当てについて合意する場合には、本書式を使用してはならない。そのような取り決めは独占禁止法上のカルテルに直結するため、共同販売の名目であっても価格や顧客調整を伴う枠組みは避けるべきである。

根拠法令としては、事業者が他の事業者と共同して対価を決定し、又は顧客を制限する等相互にその事業活動を拘束し、競争を実質的に制限することを禁止する独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)が中心となる。不当な取引制限の定義は同法第2条第6項にあり、事業者間の「意思の連絡」があれば足り、明示の合意文書がなくとも成立し得る点に留意を要する。情報交換が価格・数量等の重要事項に及ぶ場合、それ自体が意思の連絡の徴表と評価されるリスクがあり、公正取引委員会のガイドラインも参考になる。

実務でよくある失敗として、第一に、参加会社同士が提示価格や値引き水準を事前にすり合わせ、価格カルテルと評価されるケースがある。対策として第3条及び第10条のように価格決定の独立性を明記し、価格情報の交換自体を禁止する。第二に、共同販売の名目で実際には顧客担当を当事者間で固定的に割り振ってしまい、顧客割当てカルテルに該当するおそれが生じるケースがある。対策として第9条のように各当事者と対象顧客との契約は個別かつ独立したものと明記する。第三に、幹事会社に情報や顧客接点が集中し、参加会社が不利な立場に置かれるケースがある。対策として第2部B節のように情報共有範囲や提案機会の同等性を条項化する。共同販売の枠組みが独占禁止法上問題となるかは個別事情で判断が分かれるため、個別事案は専門家に確認の上で協定内容及び運用方法を確定することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 参加事業者が競合関係にあるか確認し、競合の場合は独占禁止法上のリスクを慎重に検討したか
  • [ ] 対象顧客及び対象商品の範囲を別紙で具体的に特定しているか
  • [ ] 各当事者の価格決定の独立性を明記し、価格・数量・顧客割当ての情報交換を禁止しているか
  • [ ] 幹事会社の役割及び事務局機能の範囲を明確にしているか
  • [ ] 費用分担の割合及び精算方法を明記しているか
  • [ ] 成果(売上)の配分方法及び対象顧客との契約主体を明確にしているか
  • [ ] 情報共有の範囲を「真に必要な範囲」に限定し、競争上機微な情報の除外を明記しているか
  • [ ] 共同で作成した成果物の知的財産権の帰属を定めているか
  • [ ] 独占禁止法遵守条項及び違反のおそれがある場合の中止手続を置いているか
  • [ ] 協定期間、更新及び脱退の手続を定めているか
  • [ ] 一部当事者の違反時に、その当事者との関係でのみ解除できる仕組みか